飲食店の棚卸しから呼び鈴、空席情報発信までGravioで効率化してみた

原価BAR三田本店
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今回は筆者が共同経営している「原価BAR三田本店」で検証を行いました

IT・ビジネス領域を専門とするライターの柳谷智宣(やなぎや とものり)です。ライターに加え、複業として東京都内で飲食店「原価BAR」や、海底熟成ウィスキー販売会社「トゥールビヨン」を経営しています。

ただでさえ薄利の飲食業界ですが、コロナ禍でさらに状況は厳しくなっています。アナログがまかり通る業界でもありますが、デジタル化による情報の見える化や定型業務の自動化にチャレンジし、業務効率を上げていかなければ生き残れなくなります。

アステリア株式会社が提供しているエッジプラットフォーム「Gravio(グラヴィオ)」なら、さまざまなセンサーにより情報を可視化できます。

飲食店にGravioを導入してみた 現場のデータ化はIoT×エッジで簡単に実現できる!」では、CO2濃度や冷蔵庫の温度を計測し、ExcelやLINE WORKSに出力する方法を紹介しました。

今回はさらにハイレベルなGravioの活用にチャレンジ。呼び鈴を押したらキッチンのワイヤレススピーカーからテーブル番号を流したり、ネットワークカメラの映像を分析して人数をカウントし、その情報をTwitterに自動投稿したり、在庫管理のためにバーコードリーダーでkintoneへデータを自動入力する方法を紹介します。

スイッチを押したらテーブル番号が音声で流れるようにする

Gravioのスイッチを押しているところGravioのシングルスイッチを、飲食店の呼び鈴として設定してみました

前出の記事では、Gravioの「ワイヤレススイッチ」を使い、飲食店の呼び鈴として活用する方法を紹介しました。テーブルに置いたスイッチをお客様が押すと、連携しているLINE WORKSに「●卓のお客様がお呼びです」のように表示させるのです。

実際にスタッフに動作する様子を見せて意見を聞いてみると、「作業に忙しくて画面表示だけだと見逃す可能性がある」とのことでした。そこで今回は、メッセージを読み上げて音声で聞こえるようにしてみました。

「Gravio Hub」にはスピーカーが搭載されていませんが、Bluetoothスピーカーから音声を再生することができます。あらかじめGravio Hubの設定画面で、ペアリングしておきましょう。

Gravioの設定画面「Gravio Studio 4」の「アクション」で、利用するデータフォルダーを開き、音声ファイルをアップロードします

続けて、「Gravio Studio 4」の「アクション」画面から「データフォルダー」を開き、再生する音声ファイルをアップロードします。音声ファイルはMP3形式で、テーブルの数だけ用意します。自分で録音してもいいですし、音声合成ソフトを利用してもいいでしょう。後は、「アクション」の設定で、スイッチが押されたら音声ファイルを再生するように設定すれば完了です。

Gravioの設定画面「SoundPlay」でアップロードしたファイルを再生するステップを追加します

Gravioの設定画面X1のスイッチが押されたらX1のファイルを再生するトリガーを作成します

キッチンに置いたスピーカースイッチが押されると、キッチンのワイヤレススピーカーから音声が再生されるようになりました

スイッチを押せば、スピーカーからテーブル番号が流れるので、手が空いている人がすぐに対応できます。これがあれば、お客様が「すいませーん」と大声を出す必要がなくなります。もちろん、ステップを追加すれば、音声を再生しつつ、Slackの指定チャンネルにメッセージを同時送信することも可能です。

キッチンだけでなく、ホールで動いているスタッフに伝えることも工夫次第で可能です。LINE WORKSに送信しつつ、LINE WORKSと連携させたトランシーバー「BONX」に通知の内容を読み上げさせればいいのです。スタッフは顧客対応などの他の作業をしつつも、呼び鈴が押されたことを把握できます。

このように「センサーが押された」という情報がスムーズに流れ、必要なアクションを起こせるというのがGravioの便利なところと言えるでしょう。

原価BAR三田本店の外観

カメラ映像を分析して空席情報をTwitterに自動投稿する

原価BARのカウンター席

バーには「カウンターに座って1人で飲みたい」というお客様が多くいらっしゃいます。お客様が来店されたとき、店内を見て、テーブル席に空きがあってもカウンター席が埋まっていれば、帰ってしまうことがよくあります。

以前から、カウンター席の空き情報をSNSで告知し、「空いているなら行こうか」という集客に使えるのではないか、と考えていました。しかし、さまざまな業務を行っているスタッフに対し、営業中に「SNSを投稿して」とお願いするのも難しいところです。

そこでGravioの画像推論機能を利用し、カウンターの利用人数をTwitterに自動投稿するシステムを作ってみました。カメラの映像を公開するのはプライバシーの関係で無理ですが、カウンターに座っている人数だけであれば問題ありません。

IFTTTの設定画面「IFTTT」でGravioとTwitterをつなぐ設定を行います

Gravioの設定画面Gravioの「アクション」でHTTPリクエストをPOSTする設定を行います

Gravio HubにはTwitterに投稿する機能はありませんが、HTTPリクエストを送信することができます。そこで、さまざまなサービスやアプリを仲介する「IFTTT」というツールを使います。IFTTTにHTTPリクエストを送ると、IFTTTから指定のTwitterアカウントに投稿できます。

アイ・オー・データ機器の「TS-NA220W」今回利用するのはアイ・オー・データ機器の「TS-NA220W」

Gravioは、ONVIF(Open Network Video Interface Forum)規格カメラに対応していて、今回はアイ・オー・データ機器の「TS-NA220W」を利用しました。屋外で使える防塵防水タイプのネットワークカメラで、200万画素のCMOSセンサーを搭載しています。

ネットワークカメラのプレビュー設定アプリのプレビューを見ながら、カウンターが見える場所にカメラを設置します

Gravio設定画面アクションで「IFTTT」に送るデータの設定を行います

まずは初期設定を行い、Wi-Fiに接続します。続いて、「QwatchView」アプリでプレビューを確認しながら、カウンターを一望できる場所にカメラを設置します。

カメラをセットアップする際、利用する画像推論モデルを選びます。Gravioのプランによって選べる推論モデルが異なるのですが、月額500円(税込)のGravio Basicでも人数カウント機能が利用できます。設定の「画像推論モデル」で「CongestionRecognition」を選びます。被写体までの距離に応じて、16フィート用、32フィート用、48フィート用があるので、うまく検出できない場合は切り替えてみましょう。

「アクション」で送信先のURLを入力し、HTTPメソッドは「POST」を選択します。そして、右側の「Pre Mappings」でツイートする内容を設定します。これで、人数に変化があったうえ、5人以下の場合にツイートすることができました。6人以上の場合は混雑しているということでツイートしません。

Gravioを使ってカウンターの人数をTwitterに投稿するカメラが検知した人数が自動的にツイートされるようになりました。画面はデモ用のアカウントです

AIはしっかりと学習しているようで、人数をリアルタイムで検出してくれました。ツイートも問題ありません。こんな複雑なことが、プログラミングなしに構築できるのは凄いことです。

ただし、実際に動かしてみると、30分に一度の投稿でもTwitterのタイムラインがうるさくなってしまい、本格稼働は見送ることにしました。1時間間隔だといいのかもしれませんが、1時間あると、そのあいだにお客様が増減する可能性が高くなります。

そこでバーカウンターの裏にスイッチを用意し、バーテンダーが集客したいと思ったタイミングで1日に1~2回押してもらう、という仕組みを構築しようと考えています。高度なシステムに見えますが、これもトリガーとアクションを修正するだけで対応できます。

同じくGravioの人数カウント機能を利用し、待合室の人数をホームページで公開しているクリニックがあります。こんなふうに、お客様が必要なときにリアルタイムの人数を確認できるのがベストなのかもしれません。今後、原価BARでもいろいろな方法を検討したいと思います。

誰でも手軽にバーコードで在庫管理できるシステムを構築する

酒瓶のバーコードを読み取っているところPCにつないだバーコードリーダーでお酒のバーコードを読み取ります

原価BARでは数百種類ものお酒を仕入れているので、管理が大変です。とくに在庫管理は手間がかかりますし、抜けも出てしまいます。そこで、「kintone」を利用した在庫管理システムを試作しました。

kintoneはサイボウズが開発・提供しているアプリ開発プラットフォームです。Gravioと同じノーコードソリューションで、現場の人たちがマウス操作だけで自社に必要なシステムを構築できるのが特徴です。

今回、原価BARの在庫管理アプリを作るにあたって、必須の条件が2つありました。1つ目が「(kintoneのアカウントは社員のみに渡していますが)在庫管理業務はアルバイトにも手伝ってもらう」ということ。2つ目が「商品の入力は手作業ではなくバーコード読み取りで行いたい」ということです。

「(kintoneアカウントを持っていない)アルバイトでも、酒瓶のバーコードを読み取るだけで、kintoneアプリで在庫数を登録・管理するシステムを構築する」というと、なかなか高度なスキルが必要になると思われるかもしれません。しかし、Gravioならバーコードリーダーを用意するだけで構築できるのです。

kintoneの設定画面kintoneアプリのAPIを取得します

まずは「商品マスタ」アプリにバーコードの数字と商品名を登録しておきます。続けて「商品マスタ」アプリと「在庫管理」アプリの設定画面でAPIトークンを発行し、コピーしておきます。これでkintoneの準備は完了です。

Gravioの設定画面読み取った商品を追加するアクションを作成します

Gravioの「アクション」設定画面では、「HTTPリクエスト」のステップを追加し、POST先に「https://kintoneのサブドメイン名.cybozu.com/k/v1/record.json」と入力します。右側の「Pre Mappings」には、Kintone側がほしい情報に合わせるため、少し手を動かす必要があります。以下の文字列を設定しました。

cv.ProductCode=tv.Data
cv.Amount=1
cp.Headers={“X-Cybozu-API-Token”: “在庫管理アプリのAPIトークン,商品マスターアプリのAPIトークン”}
cv.Payload={“app”:在庫管理アプリの番号 , “record”: {“Timestamp”: {“value”: tv.Timestamp}, “ID”: {“value”: cv.ProductCode}, “Amount”: {“value”: cv.Amount}}}

これで準備は完了。

酒瓶のバーコードを読み取っているところ

kintoneの設定画面自動的に、瞬時にレコードが追加されました

バーコードを読み込むと商品マスターから情報をルックアップし、在庫管理の数値が増えました。今回使ったバーコードリーダーは、BUSICOMの「BC-NL2200UⅢ」です。

今回は、仕入れた商品が到着したら、バーコードを読み取るだけで在庫を増やすという仕組みを作りましたが、もう1台別のバーコードリーダーを利用し、パラメーターの「cv.Amount」の数字を「-1」に設定すれば出庫数も管理できます。PCとGravio、バーコードリーダーさえあれば動作するので、この作業をする人は、kintoneアカウントを持っている必要がありません。あとは集計機能を使って、商品ごとの合計数を表示できるようになります。

以上、飲食店でGravioを活用してみた事例を紹介しました。どれも本格稼働するには細部をブラッシュアップする必要があるのですが、自分たちでPDCAを回せるのがGravioのハードルの低さであり大きな魅力です。しかも安価とくれば、様子見する必要もありません。店舗の見える化や業務効率化にチャレンジするなら、Gravioを使ってみることをおすすめします。



Gravio画像認識サービスについての調査資料