予測は「当たらない前提」で計画を立てるべし──脱炭素時代のAIへの向き合い方

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脱炭素社会の実現に向け、世界各国で行政、企業をまたいだ取組みが本格化するなか、AI技術は合理的なエネルギー利用を推進し、脱炭素に大きく貢献できる技術として注目を集めている。

そんななか、7月1日株式会社グリッドによるセミナー「インフラの脱炭素化に挑むAI -AIは環境をどう守る?」がオンラインで開催された。本稿ではそのパネルディスカッションで語られた内容を抜粋してお届けする。

登壇者
榎本 智之氏
三菱重工業株式会社 エナジードメイン 新エナジー企画室 主幹プロジェクト統括
曽我部 完氏
株式会社グリッド 代表取締役社長

脱炭素時代のAIへの向き合い方

登壇したのは株式会社グリッド 代表の曽我部完氏のほか、三菱重工業株式会社で「エナジートランスフォーメーション」を推進する榎本智之氏。

三菱重工は「エナジートランスフォーメーション」と銘打ち、2050年までにCO2排出と回収を組み合わせ、カーボンニュートラルを達成しようとする目標を掲げている。主に電力自体を水素や地熱、風力と行ったCO2フリーにしていくクリーン電源の安定供給と、AIなどのテクノロジーを活用し電力受給の最適化を行う2軸の取り組みであり、本セミナーで語られたのは主に後者だ。

そんな三菱重工は、AIをビジネスへ活用する企業として、AIへの向き合い方をどう見ているのだろうか。

――榎本
「AIを活用する一番の便益が何かというと、過去から未来が予測ができることだと思っていて。温故知新といいますが、過去に起きたことにすべて答えはあって、その過去のデータから一番良い答えを探し出すのにAIが有効なんです。AIイコール新しいものというわけではなく、過去に起きたことはまた起こるだろう、過去から答えを探すためのツールがAIなのだという意識を持つと、AIとうまく付き合っていけるのではと感じます」

一方で、社会インフラを中心としてこれまで数多くのAI開発を手掛けてきたグリッド代表の曽我部氏は、AIとうまく向き合うには「予測は当たらないもの」と“悟り”を開くことだという。

――曽我部
「ビッグデータを取って予測モデルをつくる、ということを死ぬほどやってきましたが、身もふたもないですがどんな分野でも予測は当たらないというのが弊社での最近の悟りです(笑)AIの予測精度を上げたいとご依頼をよくいただきますが、どんなにチューニングを重ねても結局は外れることもある。なので当たらないことを前提に、確率を踏まえたうえで計画を作らないとおかしなことになります。予測が当たらないときのリスクも今は計算可能なので、予測の上振れ、下振れを考慮した計画を作成し、実行していくことが重要です」

SDGsへの取り組み、腰が重い企業へのメッセージ

パネルディスカッション後半では、AIなどのテクノロジーを活用したSDGsへの取り組みに腰が重い、取り組めていない企業へのメッセージが語られた。

――榎本
「AIなどのテクノロジーは特別なものではなく、単なる道具です。たとえばみんな数年前はガラケー持っていて、ボタンを早打ちしてメールを送っていましたよね。今はスマホですけど、文字を見る、画面遷移のスピードが早くなるくらいで、道具が少し進化しただけです。道具のなかでもAIが特別視されていますが、スマホと同じように構えるほどのことではないですし、私たちももちろんプロジェクトで毎回AI技術だけを使っているわけではありません。道具はすべて使いようなので、肩の力を抜いてお付き合いすればいいと思います」

――曽我部
「近年SDGsを重視する姿勢は、機関投資家も含め動きが活発です。特に脱炭素は市場からの要求が激しくなってきており、多くの企業が対外的に(株主などに)いつまでにこれくらい削減します、と約束するようになりつつある。昔は経営指標だけ上げることだけを考えればよかったシンプルな時代でしたが、今は収益を落とさない限りにおいてCO2排出量もなるべく落とせないか、という依頼が経営側から落ちてくる時代なのだ、という流れを体感しています。経済指標に加えて、CO2排出量でも経営を判断する時代が来ています」