いまの世界を“本当に最適化”するには人間の思考では追いつかない

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「いまの社会は、長年にわたって人間がさまざまな知恵を絞った結果、非常に暮らしやすくなっていますが、しかし、まだまだ非効率な事はたくさんあり、本当に最適化するには人間の思考では追いつかない」。

こう語るのは、株式会社GRID(グリッド)の代表取締役・曽我部 完氏。GRIDは、電力ネットワークや工場をはじめ、さまざまな分野での最適化問題のソリューションを提供する会社だ。

>>株式会社GRID

最適化問題は常に我々に付きまとう問題である。そこで、曽我部氏に最適化とは何か、どのようなソリューションを提供しているのかなど、GRIDの取り組みを交えつつさまざまな問題に対する解決方法を聞いた。

最適化問題とは何か? なぜ必要とされるのか

曽我部氏は最適化問題について次のように言う。

「最適化されてないと損をします。

いま、“スマート社会”などが提唱されているのは、人間が非効率を嫌うから。つまり、無駄のない社会を築こうとしている。最適化に取り組み続けることで、多くのことに好影響を与えられます」

最適化問題とは、特定の制約条件のもと、ある目的の最大もしくは最小となる状態を求める問題のことだ。実は、最適化問題はかなり身近な問題(課題)のひとつ。

身近な例を挙げよう。現在地から特定の駅まで、JRや地下鉄などを乗り換えていくとき、「乗換案内アプリ」などを使うと最短時間で行けるルート、最安値で行けるルートなどを選択できる。それぞれ最適なルートを即座に表示してくれるのにも最適化が実行されている。

要するに、目的に対し、無駄のない方法や手段を模索するのが最適化問題なのだ。

当然、この最適化は、さまざまな分野で活用されている。たとえば、電力供給などが最たる例だ。家庭や施設などで使用する電力を最適(効率的)に制御すれば、電力発電時に発生する二酸化炭素などの排出を最小にでき、結果として環境問題への解決の一手になる。

そのほかで言えば、コンビニエンスストアなどでの廃棄ロス削減も最適化問題として解決できる。時間帯、天候、来店客数予測などの組み合わせを加味して最適化することで売れるぶんだけのおにぎりを入荷し、売れ残って廃棄することはなくなる。

GRIDは最適化問題を最適な手法で解決する

GRIDでは最適化問題の解決にあたって、現実を模擬するシミュレーター(デジタルツイン)に対し、複数の最適化手法でモデル構築を実施する。手法は、MILPやヒューリスティックといった手法に加え、遺伝的アルゴリズム、深層強化学習を使う。

複数の手法でアプローチするのには理由がある。

「最適化問題を解くうえで、問題や課題に適した手法を選ぶのが効率いいからです。特定の手法だけで解こうとすると、どうしても限界や妥協があります。これでは良い答えにたどり着きません。そのため、企業様が抱えるそれぞれの課題を解決するために、さまざまなアプローチで最適化を図ります」(曽我部氏)。

加えて、曽我部氏は深層強化学習を使った最適化手法のメリットも教えてくれた。

「旧来の手法だと、状況が変わるごとに最適化計算を再度実行していました。しかし、強化学習なら状況が変化した際でも即座に対応できるのが特長です。

たとえば、旧来手法では最適化問題を解くのに3分必要とするとします。3分前の問題に対しては解決策を打てますが、旧来手法で解き切ったタイミングで発生してしまった状況に適合しない可能性もあるわけです。その反面、強化学習なら即座に答えを導けるため、リアルタイムで最適化させることができます」

GRIDが主に取り組んでいる最適化事例のなかに「電力システム」がある。電力システムの状況はリアルタイムで変化する。そのため、瞬時に答えを出すことが求められるそうだ。中長期的で激しい変化がない事例であれば旧来手法でも解決できるが、動的に状況が変わることに対しては強化学習が有効だと言う。

強化学習と最適化問題の相性の良さ

そもそも、GRIDはなぜ、最適化問題を強化学習で解決しようとしたのだろうか。

曽我部氏は多くの人がAIについて期待している事は、「『未来がどうなるのかを予測してくれて、その時にどうすれば一番良いのかを教えてくれること』ではないか」と言う。

あわせて、次のように述べた。

「強化学習のいいところは、AIが“望ましい”とされる回答や行動をしたときに『報酬』を与えられる点です。つまり、100%のベストな回答ではなくても、一定基準を超す“良い結果”を出したときにも報酬を与えられるのです。この“曖昧さ”は最適化問題を解く時に非常に有効です。

最適化問題とは、現状よりも良い状況を目指しますが、予測については予測数値が当たるか否かで判断されます。イベント会場を運営する人になったつもりで考えてみてください。1万人が来場すると予想を立てたものの、結果的には9900人しか来場しなかった。これは“ハズレ”になりますが、過去1万人を集客するのに必要な広告費用を最適化して削減できる、と最適化の世界では“よし”とされます。人によって基準は異なると思うものの、状況に応じて効率的なアクションを出せるのが強化学習なのです」

もちろん、GRIDは100%ベストな最適化解決をしているわけではない。いま、最適化問題では量子コンピュータの活用が始まっている。すでに一部製品化したモデルもあるなど、実用化を進めている。

今後は、実際の問題を量子コンピュータも活用して解くそうだ。従来の最適化計算では、組み合わせが膨大になると厳密計算が困難になるので、探索的に良い解を求める方法を取る、“良さそうな解を出す”ことが目的だった。だが、量子コンピュータを使えば“厳密計算”も可能になり、ベストな回答を提供できるようになるそうだ。

ちなみに、量子コンピュータに関してGRIDは、昨年7月にはIBMの「IBM Q Network」にも参加したり、論文を発表したりしている。

いまの世界は人間が「最適化した」と思っている

曽我部氏が取材時に繰り返したのは「人間では最適化問題を解決しきれない」ということだった。

ひとつの課題を解決するぶんには全く問題ないものの、最適化をするにあたって5個、10個と考慮しないといけない制約や条件があると、通常人間は思考を放棄・妥協してしまう。その点、機械学習などの技術を使えば、考慮すべき条件が多くても最適化を果たしてくれる、と曽我部氏は言う。

曽我部氏は続けて次のように話してくれた。

「いま、私たちが暮らしているこの社会は、人間が何年にも渡って努力して『最適化した』結果だと思っているんです。もちろん、100年前の東京と、いまの東京とでは、いまのほうが生活しやすいことのほうが多いはずです。ただ、これは人間が手動で導き出した結果。裏を返せば、これからの時代では機械の力で最適化が可能になります。

GRIDでは電力やサプライチェーンなど、社会インフラの最適化問題を解決しています。徐々に最適化することで、社会が抱える課題を解決し、より生活しやすい環境に変えていけるはずです。最適化は簡単なことではないですが、社会的意義のあることだと思います」。

複数手法を用いて最適化問題に立ち向かうGRIDが心がけているのは、“アルゴリズムありき”で課題を解決しないということだ。アルゴリズムありきだと、どうしても解決できない壁にぶつかることがあるそう。反面、GRIDは顧客ニーズに応えることで、ひとつずつ社会課題を解消していく。その先にあるのは、最適化された世界だ。

>>株式会社GRID