AI(人工知能)の歴史|時系列で簡単解説

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今では誰でも一度は耳にしたことあるAI(人工知能)も、ここまで認知されるまでに、姿形を変えながら壮大な歴史を歩んできました。1950年代にはじめて人工知能が出現して以来、60年以上にわたって続く歴史は、一言二言では表せないほど深く、今も私たちの生活に大きな影響を与え続けています。本稿ではAIの誕生から現在に至るまでの歴史、そしてその未来の姿を実例を交えながら解説していきます。

AI(人工知能)とは?

人工知能、またの名はAI (Artificial Inteligence)とは「学習・推論・判断といった人間の知能のもつ機能を備えたコンピューターシステム」と辞書には記されています。(大辞林 第三版より抜粋)

しかし、実際にはその定義は専門家の間でも明確に定まっておらず、「人工知能」という言葉はかなり多義的に使われています。

AI(人工知能)の基礎知識を身に付けたい方は以下の記事を参照してください。

今皆さんが思い浮かべる代表的なAIとはこのようなものかもしれません。


photo by unsplash

こちらはソフトバンクが2016年に販売を始めた感情を認識するAI搭載人型ロボット、Pepper(ペッパー)です。ペッパー本体は「ロボティクス(ロボット工学)」からなるサービス向けのロボットであり、実際の「AI」はペッパーの「頭脳」の部分を指します。ペッパーには、まるで感情を持っているかのように自ら行動し、利用者の行動や感情を学習する「感情マップ」が実装されています。

しかし、初めて出現したと言われている60年以上前のAIロボットは、このような姿とは程遠い存在でした。


出典: Shakey the Robot: The First Robot to Embody Artificial Intelligence

こちらは1960年代後半から70年前半にかけてスタンフォード大学のAIラボが開発に成功した、初の自動移動能力があるロボット、Shakey(シェイキー)です。自分自身の意思で障害物を避け、移動できる能力を持つシェイキーの発明が当時のAI技術開発を促進したと言われています。

AIの歴史はこれまで、60年前の自動移動能力を持つシェイキーから、今の感情をも認識し再現する能力を持つペッパーに至るまでに「ブーム」「冬の時代」を繰り返してきました。


出典:松尾 豊『人工知能は人間を超えるか』P61より

上のグラフからいうと、現在私たちは第3次AIブームの真っ只中に生きているわけです。紆余曲折を経ているAIの歴史ですが、その存在が初めて定義されたのは今から70年近く前の話です。

1950~1960:AIの出現


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人工知能の概念の起源は、イギリスの数学者アラン・チューリングが1950年に出した著書、『計算する機械と人間』にみられます。彼は著書の中で、もし「機械」や「考える」という言葉の意味が、それらの一般的な使用法を検証することによって見出されるなら、「機械は考えることができるか?」という問いを唱えました。当時チューリング氏は、「機械が思考したかどうかは、人との会話が成立したかどうかで判断する」とし、これを「チューリングテスト」と呼びました。

アラン・チューリングはこの他にも、コンピューターの概念を初めて理論化し、ドイツの暗号機「エニグマ」の解読により第二次世界大戦の対独戦争を勝利に導いた立役者として大変有名です。ご興味がある方は、彼の半生を描いた映画、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』を鑑賞してみてはいかがでしょうか。
出典:<公式>映画『イミテーション・ゲーム / エニグマと天才数学者の秘密』オフィシャルサイト|大ヒット上映中

「人工知能」という言葉が誕生したのは、1956年に科学者たちにより開催されたダートマス会議にさかのぼります。当時、アメリカのニューハンプシャー州にあるダートマス大学で数学の教授であったジョン・マッカーシー「人間のように考える機械」を「人工知能」と名付けました。

チューニングによる人工知能の概念の確立、そしてダートマス会議でマッカーシーが人工知能という言葉を定義したのを機に、AIは一気に世の科学者たちに認知されるようになり、AIに関する研究も活発化していくこととなります。

1960~1974:第1次AIブーム


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最初のブーム(第1次AIブーム)は、1960年代に勃興しました。この時代は「推論」「探索」と呼ばれる技術により、パズルや簡単なゲームなど、明確なルールが存在する問題に対して高い性能を発揮し、人工知能に大きな期待がかけられました。

推論とは
人間の思考過程を、記号で表現し実行しようとすること
探究とは
目的となる条件(答え)を、解き方のパターンを場合分けして探し出すこと

第1次AIブーム当時に行われた数ある研究の中でも、1966年にマサチューセッツ工科大学のジョセフ・ワイゼンバウムにより開発された初の自然言語処理プログラム、イライザ(ELIZA)は特に有名です。イライザはAIアシスタントSiriの起源にもなったと言われています。


出典:世界で開発が加速化するチャットボットの進化の軌跡 ~元祖ELIZAの誕生から、ディープラーニングの可能性まで~ | モビルス サポートイノベーションラボ

1974~1980:冬の時代


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しかし、当時の人工知能(AI)では、迷路の解き方や定理の証明のような単純な仮説の問題を扱うことはできても、様々な要因が絡み合っているような現実社会の課題を解くことはできないことが明らかになります。科学者たちの間でも「AIは本当に人間のようにインテリジェントなのか?」などといった問いが広がります。

現実の複雑な問題は解けないという性能的な限界が見えると、ブームは下火となり、研究支援が滞り、AIの開発は失速します。これが1974年から1980年代初頭まで続いた冬の時代です。

このとき人工知能が解くことのできた実用的でない問題は、「おもちゃの問題(トイ・プロブレム)」と呼ばれました。

1980~1987:第2次AIブーム

次のブーム(第2次AIブーム)が起こったのは1980年代です。この時代のブームを起こす引き金となったのが、多数のエキスパートシステムの実現です。

エキスパートシステムとは
人工知能に専門家のように「知識」をルールとして教え込み、問題解決させようとする技術のこと

エキスパートシステムの開発は1960年代から行われており、第1次AIブーム最中の1972年には、実用には至らなかったものの、細菌感染診断をするエキスパートシステムが開発されていました。第2次AIブームの頃には多くの大企業がエキスパートシステムを業務に導入するなど、エキスパートシステムは実用的なツールとして広く商用利用されるようになりました。


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エキスパートシステムの仕組みは現在も企業の間で導入されています。Amazon楽天などのECサイトの評価システムは、情報を推測して提示するエキスパートシステムといえます。サイトを訪問した人に、その人の見た商品情報からの類似商品をお勧めしたり、その人が日頃見るニュースから、次にその人が読みたいであろう関連ニュース一覧を表示したりするレコメンドシステムも、エキスパートシステムです。

1987~1993:冬の時代2


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しかし、研究を重ねる科学者の間で、エキスパートシステムにも限界があることが次第に明らかになっていきます。大きな欠点は2つありました。

欠点1
当時のコンピューターには必要な情報を自ら収集して蓄積する能力はなかったため、人が手動で「一般常識」レベルの膨大な知識をコンピュータに記述する必要があった。
欠点2
当時のコンピューターは例外処理や矛盾したルールに対応できなかったため、実際に活用可能な知識量は特定の領域の情報などに限定する必要があった。

これらを理由に第2AIブームは終息に向かい、1987年から1993年までの期間、AIの研究は再び冬の時代に突入しました。

2006~2020:第3次AIブーム


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前夜

冬の時代が明けた1993年から、ディープラーニング登場の2006年までは、第3次AIブームへの土台が着々と出来始めた時期です。ブーム前夜の中でも、1997年にチェス専用のコンピューター、ディープブルーがチェス世界王者に勝利した瞬間は有名です。これはAIが人間に初めて勝利した瞬間として、今でも鮮明に人々の間で記憶に残ってる出来事です。

そして私たちは今まさに第3次AIブームの真っ只中を生きています。第3次AIブームの原動力になっている技術革新は2つあります。

技術革新1:機械学習の実用化


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「ビッグデータ」と呼ばれているような大量のデータを用いることで人工知能(AI)自身が知識を獲得する「機械学習」が実用化された。

ビックデータとは
従来のデータベース管理システムなどでは記録や保管、解析が難しいような膨大なデータ群のこと
機械学習とは
コンピューターが大量のデータを学習し、分類や予測などのタスクを遂行するアルゴリズムやモデルを自動的に構築する技術のこと

技術革新2:ディープラーニングの登場


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従来の機械学習では人間が特徴量を定義し、予測や推論の精度を上げていました。「ディープラーニング(深層学習)」を活用することで、学習データから自動で特徴量を抽出し、精度を向上させることが可能になりました。

ディープラーニングとは
機械学習の実装手法の一つで、人間が行うタスクをコンピュータに覚えさせ、複雑な問題を解決するための技術
特徴量とは
機械学習における特徴量とは、学習の入力に使う測定可能な特性のこと。たとえば、赤いリンゴと青いリンゴを識別する際には、「色」が特徴量となる。人はものを識別する際に、無意識に適切な特徴量を利用するが、ディープラーニングを除く従来の機械学習では、識別に利用すべき特徴量を人間が入力していた。これまで「人の顔の識別」などの複雑な問題において、人工知能に適切な特徴量を教えることが困難だった

「AI自身が知識を獲得する」「AIが自ら特徴量を獲得する」ことは、人工知能の研究分野においてブレークスルーとなり、現在の人工知能研究のブームの起爆剤となりました。

第3次AIブームでの主な出来事
2006年:ディープラーニングの実用方法が登場
2011年:IBMワトソンがクイズ番組で人間に勝利する
2012年:画像認識の向上で画像データから「猫」を特定できるようになる
2015年:イーロン・マスクらが1000億円以上をオープンAIに寄付
2016年:「アルファ碁」(コンピュータ囲碁プログラム)がプロに初勝利

新AI時代


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では、これからのAIはどのような技術発展を遂げていくのでしょうか。第3次AIブームでの技術革新に伴い、シンギュラリティという言葉が近年注目を集めています。

シンギュラリティ(技術的特異点)とは
AIなどの技術が、自ら人間より賢い知能を生み出す事が可能になる時点を指す。米国の数学者ヴァーナー・ヴィンジにより最初に広められ、人工知能研究の権威であるレイ・カーツワイル博士も提唱する概念である

レイ・カーツワイル博士は、「2029年にAIが人間並みの知能を備え、2045年に技術的特異点が来る」と提唱しています。この問題は2045年問題とよばれます。

シンギュラリティは私たちの雇用に大きく変化を及ぼすと考えられています。AIが人間以上の知能を持てば、今人間が担当している業務をAIが代わりにこなす可能性は当然拭えません。私たちの働き方は今から10年後、20年後には著しく変化している可能性があります。

人工知能が誕生してから今日までの60年間以上の歴史の中で、私たちの暮らしは人工知能と共に変化を遂げてきました。そしてこれから訪れるであろうシンギュラリティも、今の私たちの暮らしを大きく変化させる可能性を持っています。この記事で人工知能の歴史を振り返り、その未来についても考察することで、これからの人工知能について理解が深まればと思います。