既に当たり前になりつつある『対ユーザーコミュニケーションのチャット移行』の流れ。
ゆーてまだまだ元々が非ITな業界大手への導入は先の話だろう…と、甘く見ていた矢先にシレッと流れたニュースリリースには驚かされました。
ハウスコム(JASDAQ3275)が、ユーザー向けチャット機能「マイボックス」と、まさかの「AI物件検索」をリリース。既に稼働していて成果もかなり出ている。
とかなんとか…。
もともとWebのグロース施策で関わらせていただいたクライアントさんでもあったので、ちょっとおじゃましてお話きかせていただいてきました。

Ledgeのプロデューサー。KaizenPlatformのグロースコンサルとしても活動中。フォームのCVR上げなきゃ!みたいな事を頑張ってる裏側でものすごい面白いことをやってたっぽい事を後出しで聞いていてもたってもいられなくなった。
ケタ外れの効果を生んだ新しいコミュニケーションツール『マイボックス』の革命
今回唐突な取材のお願いに対応していただけたのは、なんとまさかの田村社長ご本人。
さらには最近新設されたというサービス・イノベーション室室長の安達さんも同席…という、なんとも異様な豪華ペアの登場に若干ビックリしましたが、さっそく気になる部分を聞いてみました。
―いきなりですが、はじめてのチャット機能「マイボックス」の導入。実際どの程度効果が出てるものなんでしょう?

本当にいきなりですね(笑)ハウスコムとしてもなかなか挑戦的な施策になりましたが、実際の数字、社内外の反応含め悪くないですよ。
実際のマイボックスの画像。不動産屋さんと直接チャットできるような感覚で
これまでのメール応対とはユーザーの体験が大きく変わったそう。

実際、昨年同月比対比で見てもかなり数字は良くなってます。
長年、Webサイトからの問い合わせ~実際の契約…というクロージングまでの部分でかかる手間と確度が課題だったんですが、これが大きく改善した形になりました。
そういって教えていただいた数値は(若干盛ってるかもしれないけど)かなり驚かされるものでした。
以下、箇条書きにしてみましたが…これはすごい。
- 問い合わせたユーザーの約半数のユーザーが利用している
- 最終コンバージョン増加率が約115%~120%くらい
- やりとり自体の数は増え、クロージングまでの日数は約半分に
実際、もともと「問い合わせ」⇒「メールやりとり(営業フェーズ)」⇒「クロージング」までにかかっていた日数が平均約2週間程度だったのに対し
マイボックスを使いチャットでコミュニケーションできたユーザーとのやりとりは1周間程度と激減。
流れでいうと『営業フェーズ』の部分が『会話の中で自然に決定』というフワッとした形に置換され、内部的にも負荷と必要になるスキル(知識や営業的なメール話術スキルなど)の必要性が低減。
スタッフのモチベーション向上をも叶えつつ、人的リソース換算で20%もの負荷軽減と最終決定数の増加を実現した…とのこと。すご・・・。
CV伸び率160%|AI検索の導入が目指す『本来のユーザー体験』とは
―さてもう一つ。まさかのAI物件検索「人工知能でコムる」ですね。これ…ぶっちゃけどうなんでしょう?

まぁ、見ての通りです(笑)。『人工知能でコムる』はまだまだこれからなんですよね。まだまだ狙っている水準には及ばないので、AIに学習させ続けている状態です。
確かに、現段階ではいくつかの質問に答えていくと3件のおススメ物件情報を教えてくれる…という、なんというか、ちょっと物足りない感じ。
確かにコンセプトは面白いですが、なるほど。まだまだ学習中ってことなんですね。

ですね。あくまでこれはAIを育てているフェーズ。と理解していただければ。
実際にサービス側で活用されているのは、「ディープラーニング」×「クラスター分析」+「実際の自社&提携先の人気物件情報」を掛けあわせて出している『物件レコメンドエンジン』の方なんです。
と、安達さんの教えてくれた数字は、これまた僕らをビックリさせてくれるものでした。
なんと、実験的な「人工知能でコムる」と同様のAI技術を用いた物件レコメンドエンジンは約半年間の運用で昨対160%ものCV(この場合問い合わせ数)増加を生み出しているんだとか。

現状AIはレコメンドで活用中。
また、実験的と言いながら「人工知能でコムる」にも1日1万人強のユーザーアクセスがあり、こちらからも順調にAIの精度を高める(こういう人はこういうのが好き…といった)教師データが揃ってきているとのこと。すごい。

実際、導入までは大変でしたけどね。社内にクリエイターやイノベーターと言える人は少ない業界です。
僕と安達君の2人でAIの開発元に直接行って話を伺い、社内の会議にも開発元の方に来ていただき、説明を受けるなどして、理解・共有するのにものすごく大変でしたけど、正直「やってよかった」と思ってますよ。
確かに。元々がIT系だったりベンチャー企業だったりすれば『やろうやろう!』となりそうな施策も、大手、しかも元々がIT系ではない業界であれば難色も出てくるはず。
それを押し通すってのは並大抵の苦労じゃなかったんでしょうね。。。
しかし、一体なぜハウスコムはそんな「やたら大変で効果が出るか誰も分からない」プランに挑戦したんでしょう?
気になるその辺りのお話も、直接聞いてみました。
まだまだ始まったばかり。大手 “らしからぬ戦略” に賭けた思い

もちろん、いきなり「さぁAIだ!チャットだ!」という話になったわけではありません。僕らの抱える業界全体の課題感と危機感と、なかなか上手く行かない規制緩和の流れ。そのへんでもみくちゃにされながら
「頭固くなってきちゃったし一回広げよう!」と、安達君とTech系のベンチャーを渡り歩いたのが最初のキッカケでした。
確かに、あまり業界事情を知らない僕にとってすら、なんとなく「不動産業界ってしがらみ多くて頭固そう」みたいなイメージです。
田村さんいわく「実際そう」だそうで、今回の挑戦的な取り組みはかなりの困難を伴った…というか途中何度かポシャりそうにすらなったんだとか。

まだまだようやく始まったばかりの施策ですが、悪くない数字は出ています。もっともっとやらかさないと。と思って「サービス・イノベーション室」を立ち上げたんです。
不動産仲介という業種の括りすら超えて、ユーザーとのコミュニケーションをもっともっと考えていきたいですね。

正式に「サービス・イノベーション室」として予算がついて、大きな動きができるようになってきた感じです。
やりたいことは山のようにありますが、立ち止まらず試行していくつもりです。
と、そう言ってなんとも楽しそうに笑う田村さんと安達さん。
参入障壁が低く、結局SEOと接客クオリティの勝負となってきている不動産業界において、「これまでの当たり前」を壊しユーザーとの接し方を考え、変えていく。
言うは易し行うは難し…であるはずのそのアクションを、まるで子どものように笑いながら推し進める2人を見ながら、「多分、こういう人達が上にいる組織が今後は勝つんだろうな…」なんてことを感じてしまった取材でした。
今ハウスコムでは、こういう新しすぎる取り組みに一緒に挑戦したい!という社員を募集しているらしいです。
もし気になったら一度2人に会ってみるってのも、アリかもしれませんね。
田村さん、安達さん、お忙しい中ありがとうございました!