Society 5.0実現に向けて東京大学が設置したスパコンと共創プラットフォーム 地震の先読みも可能に?

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エヌビディア合同会社が主催する「NVIDIA 秋のHPC Weeks」が開催された。HPC Weeksは、3週にわたり、HPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)の各分野や、機械学習の第一人者たちが登壇し、研究成果やGPUの活用どころ、今後の展望についての話を聞けるイベントだ。

本稿ではHPC Weeksで実施されたさまざまな講演のなかから、Ledge.ai読者にイチオシの講演をレポートする。

本稿ではWeek1「GPU Computing & Network Deep Dive」のなかで、東京大学 情報基盤センター 教授 塙 敏博氏による「Society 5.0実現を目指すシミュレーション・データ利活用のための計算プラットフォーム」を取り上げる。Society 5.0の実現に向けて、東京大学が設置したスパコンと産学官を結ぶ共創プラットフォームとはいったい何なのだろか。

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富岳と同じ計算ノードを持つWisteria/BDEC-01

近年、Society 5.0が日本政府からも言われており、未来社会のコンセプトになっている。ポイントは、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させた社会ということ。しかし、Society 5.0を実現するためには、たくさんの計算資源が必要になる。

東京大学情報基盤センターでは、さまざまなスパコンを持っており、利用者は2600名を超えるそうだ。ちなみに、利用者のうち55%は学外とのこと。

HPC Weeksでは、東京大学柏IIキャンパスに設置された、スーパーコンピュータシステムWisteria/BDEC-01、およびデータ活用社会に向けた産学官連携のための共創プラットフォームmdxを紹介された。

まず、Wisteria/BDEC-01。2021年5月14日から東京大学柏IIキャンパスにて運用が開始。BDEC(ビーデック)は、Big Data&Extreme Computingの略称。愛称としてWisteria(ウィステリア)と名付けられた。

システムは富士通製。大きく分けてふたつのノード群から構成されている。ひとつは、シミュレーションノード群(通称:Odyssey、オデッセイ)。神戸にある理研の「富岳」と同じ計算ノードを採用しており、およそ26PF(ペタ・フロップス)の計算性能を持つ。

もうひとつのノード群は、データ・学習ノード群(通称:Aquarius、アクエリアス)。こちらはGPUクラスターの形になっていて、IntelのXeonを2ソケットと、NVIDIA A100GPUを8基搭載したノードが合計45ノードある構成。特長は、データ・学習ノード群は外部のストレージやサーバー、センサーネットワークなどに接続されている点だ。

使い方は、大きな計算はOdysseyが対応する。計算のために必要なデータは、外部のセンサーなどを 取りこみ、解析したり、データ同化のような処理をしたりするところを、Aquariusが担当する。



Wisteriaの想定利用アプリケーションのひとつに、地震の観測値を リアルタイムにデータ同化をし、先読みをする取り組みがあるという。建物への影響を地震が来る前に警報を出せるような仕組みにも使えるのではないかと考えているそうだ。

地域資源を活用した物質・エネルギー生産システム設計のためのシミュレーション基盤


Wisteriaに続いて、データ活用社会に向けた産学官連携のための共創プラットフォーム「mdx」について紹介された。

mdxは、用途に応じてオンデマンドで短時間に構築・拡張・融合できるデータ収集・集積・解析機能を提供するプラットフォーム。データ利活用・セキュリティを重視した高性能仮想化環境だ。

9つの大学と2つの研究所が共同運営している。ちなみに、設置場所はWisteriaと同じ部屋にあるという。

そんなmdxは、高付加価値 気象データプラットフォームとしてのアプリケーション利用を想定されている。

情報基盤センターの教員と共同で研究しているもので、東大先端研が進めている「ClimCORE」というプロジェクトがある。気象庁と共同で、気象データを再解析し、新しい気象モデルを使い、古い観測データを再解析することで、中間のデータを予測したり、今後どのような予報に活かせるかを再計算したりして、データベース化して提供しようと検討している。

大きな計算は先述のWisteriaを使っており、これをmdxを使って提供することを考えているそうだ。

また、地域資源を活用した物質・エネルギー生産システム設計のためのシミュレーション基盤としてもmdxの活用を検討している。地方のさまざまな林業などの産業を、地産地消できるものはその地域で活用していくためのシミュレーションだ。主に地方公共団体の計画立案する人に向けて提示するシステムとのこと。

データのなかにはセキュリティを高めなければいけないものがあり、また、さまざまなパラメータを使った計算も必要になるため、mdxと部分的にWisteriaを組み合わせて提供していく。

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