おはようございます。アズマです。
ZenefitsやGreenhouseなどの台頭によって、にわかに熱くなってきている『HR Tech(Human Resource Technology)』領域。これまでブラックボックスとされてきたこのへんでも、ビッグデータ解析やAIによって多くのイノベーションが起こってきています。
以前にGoogleもプロジェクトアリストテレスで『社員の生産性を上げるのはチームワークより心理的安定性である』なんてレポートを上げてましたが、今回ご紹介するのは、まさに “IBMが出した社員の生産性向上のための答え” とも言うべきソリューション。
まだまだ日本で知名度イマイチなプロダクトですが、内容けっこうとんでもないので、頑張ってまとめてみます。
フォーチュン・グローバル TOP10の内8社が導入するIBM Kenexa(ケネクサ)
2012年にIBMが買収した人材管理ソリューション『kenexa』。当時の買収額は13億ドルと言われ、既に世界の優良企業をランキングするフォーチュン・グローバルのTOP10企業の内8社までもが導入する超有名ツール。
日本国内ではあまり認知も進んでいませんが、現時点で世界最強と言われるAI、IBM Watsonを搭載した『社員のエンゲージメント(≒愛社心)を数値化し評価可能とするHRツール』として、相当高い評価を得ているソリューションなんです。
Kenexaが実際に可能とすること
- 設問ライブラリから5問程度を選択。オンラインでパルスサーベイ(意識調査)実施
- 得られた回答を解析。WatsonAnalyticsの持つビックデータを活かし仮説を構築
- 数値をグラフィカルに明示しつつ、具体的な改善方法や対応策を提案してくれる
「なんだつまり社員向けのアンケート作成と回収・分析ツールか」とがっかりすることなかれ。
キモとなるのは「どんな特徴が社員の生産性にどう影響を与えるのか?」という曖昧なテーマに対し “既に学習済みのデータベース” があるということ。さらにそこから導き出された仮説に対し、即時「こうしたらいいのでは?」という提案をくれるHR(人事)ソリューションだということです。
もう人間によるファジーな人材管理は、不要になるのかもしれないですね。
Johnson Controls の事例に見るさらなる可能性
自動車産業やビルテクノロジーなどの領域で世界中にマーケットを持つ世界的巨大企業『Johnson Controls』で、実際にKenaxaを導入した際には、以下のような転換が起こったそう。
- 社員のエンゲージメント(≒愛社心を持つ割合)は56%⇒72%に
- 売上額は346億ドルから408億ドルへ18%上昇(4年間推移)
もちろん巨大企業だからこそ…という観点はあるものの、それにしたって無視できる数値ではないかなと。社員にとっての居心地の良さ、それに紐づくエンゲージメントと売上の向上。AIによる人事(HR)改善は、どうやらすでに始まっているみたいです。
目には見えない『リーダー資質』を探しだし、社員の潜在能力をAIが数値化
すでに章題だけでトンデモですが、kenexaはリーダーの発掘と育成にも使えるツール。
これまで当たり前となってしまっていた「皆で相談して決めよう」とか「成果で決めよう」、あるいは「俺が決める」といった慣習から離れ、より本質的の貢献度とエンゲージメントの数値化からリーダーとしての資質を測ってくれるんだとか。
実際にはまず、実績が少ない人から将来発揮されるであろう潜在能力を測る為に
- 求められるリーダー像に照らし合わせる
- その結果によって一人ひとりの育成計画が作られる
- 育成計画にそってフォローアップしていく
というフローで育成プログラムを策定。
仕事ができる能力=組織を束ねる能力ではないと捉え、Watsonによるリーダー資質の判断がなされていくわけです。
当然この判断の決め手となった基準は様々なビッグデータ解析に基づく裏付けが存在するため、社員の抱く『なぜあの人がリーダーなの?』という疑問への解答としても機能。もしかしたら『定性的評価指標』って言葉は、いずれ消えてしまうのかもしれないですね。
採用コスト25%減!AIフィルターで人事労務を大きく削減したマクドナルドの事例
最後は英マクドナルドでの事例を紹介。
ある程度大きな企業であれば当たり前の話ですが、英マクドナルドでもHR領域のコストと人的負担には相当悩まされていたそう。
- 毎日2,000名を超えるスタッフ応募がくる
- 合格率は4%。つまり25人面接して1人受かる計算
- マネージャー候補ととなると150人面接して1人受かれば良いほう
- 面接の人事負担は半端じゃなく、しかも悪い印象を持たれてはNG
詳細なデータは公表されていませんが、面接できる人を育てるコストに、面接にかかる募集・面談・評価・通達・アフターフォローのコスト…。
ちょっと計算するのが嫌になる規模と負荷ですよね。
「このままじゃどうにもならん!」と、そこで英マクドナルドとIBMは全国150人以上の成績優秀な社員からフィードバックデータを収集。
- 就職してからの理想と現実の認知
- 状況判断適正
- 信頼性適正
上記の3軸における判断基準を策定、実際の応募者を対象にテストとして受講させを受けてもらい「面接前の絞り込み」を実行したそう。
すると…
約4カ月後には応募者数は35%減
マネージャー職への応募は50%減
その結果応募者の質が高まり、採用チームの時間的負担は約25%節約。
最終的に採用担当者1人あたりに対する応募者数の比率は約66%も低減できたんだとか。
いやはや、凄まじいですね。。。
まとめ
さて、今回はHR Tech領域での先端な話題をIBMのソリューション実績を通じて書いてみましたが、いかがでしたでしょう?
これまで完全に暗黙のルールと人対人の定性的?判断によってなされていたHRな領域にAIやテクノロジーの力が入るとどうなっていくのか?
という、一瞬分かりにくいネタでしたが、企業の業績を直接左右する巨大コスト部分に起こったイノベーションの流れとして興味を持っていただけたなら嬉しいかなと。
きっとその先にあるのは、機械に支配されたディストピアなどではなく『より公正に無駄なく評価されるCoolな世界』だと、僕自身は思っているので。
ではではー。