月6万円を5000人に支給するベーシックインカム導入決定 財源は2兆円超、米シカゴ

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画像のイメージです。カリフォルニア州オークランド市の実験によると、ベーシックインカムは精神面にも良い影響を与えるという(Unsplashより)

アメリカのイリノイ州シカゴ市議会は10月末、低所得者5000人を対象に1年間にわたり、月500ドル(約5万7000円)を支給するベーシックインカム(最低所得保障)の試験導入を可決した。対象者は年収が3万5000ドル(約400万円)以下の人で、無作為に選ぶ。

近年、世界各国でベーシックインカムに熱いまなざしが向けられている。AI(人工知能)の進歩はもちろん、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大にともなう不景気や失業率の悪化、少子高齢化や格差拡大などの社会的背景による影響も大きい。

今回のベーシックインカムの財源は、バイデン政権が新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)の感染拡大を受け、成立させた総額約1.9兆ドル(約200兆円)の「アメリカン・レスキュー・プラン」でシカゴが受け取った約20億ドル(約2兆3000万円)をもとにしている。

米ワシントン・ポストらの報道によると、本ベーシックインカムはシカゴの市会議員50人のほとんどが支持している。一方で、シカゴ市議会黒人議員連盟の議員ら20人は、これらの資金を暴力防止プログラムや賠償プログラムに使うように求めたという。また、批評家たちの中からはベーシックインカムが人々の参加意欲を低下させるといった批判もあるとのこと。

>>米ワシントン・ポストによる報道

>>米Business Insiderによる報道

月5万4000円のベーシックインカム実験「働かない人が増える」「タバコや酒に使われる」は誤り、米カリフォルニア州

近年、アメリカでは国内において市レベルで初の「ユニバーサル・ベーシックインカム(UBI)」の導入実験を実施したことで知られる、カリフォルニア州ストックトンのマイケル・タブス元市長が立ち上げた「SEED(Stockton Economic Empowerment Demonstration、ストックトン・エコノミック・エンパワーメント・デモンストレーション」を中心に、ベーシックインカム実現に向けた動きが活性化している。

カリフォルニア州のストックトン市では2021年3月、毎月500ドル(約5万4000円)のベーシックインカム実験において、「ベーシックインカムを導入したら、働かない人が増えるだけだ!」「支給額はタバコや酒に使われるだけだ!」といった批判を覆す結果が明らかになった。

同実験では、実験を始めた2019年2月と、実験を終えた2020年2月を比較し、支給を受けていないグループはフルタイム雇用が5%しか変化しなかったが、支給を受けたグループは12%も増加した。受給者たちによる毎月の支出は「食品」が最多で、タバコや酒類に使われる割合は1%未満だったこともわかった。

カリフォルニア州ではオークランド市も2021年3月24日、人種による貧富の差を減らすため、有色人種の低所得世帯を対象に毎月500ドル(約5万4000円)を支給するベーシックインカムの実験を開始すると発表した。2021年夏までに開始し、支給は1年半継続する予定という。

また、アメリカのカリフォルニア州サンフランシスコ市では5月21日から、130人のアーティスト(芸術家)を対象にベーシックインカム(最低所得保障)のパイロットプログラムにおいて、ついに月1000ドル(約10万5000円)の支給を開始したと見られる。

アフリカ系(黒人)女性で、同性愛者を公表しているシカゴ初の市長であるローリ・ライトフット氏の発言によると、今回のベーシックインカムは「国内最大規模」のプログラムという。今後の動向に注目したい。

>>米WTTWによる報道