「AI画像認識の開発ハードルが下がった」その理由は? 活用事例が急速に増えた背景にあるもの

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工場などでの不良品検知やスマートフォンなどでの顔認証をはじめ、AIによる画像認識技術が急速に広まっている。

製造業では検査工程や従業員管理にAI画像認識を活用している事例が多く、また昨今では大型商業施設でコロナ対策のために混雑検知システムの導入が広がり、利用されている例も増えてきた。

なぜ急速にAI画像認識が広まったのか。その理由と、これからAI画像認識の導入・活用を検討している企業はどのように進めればよいかについて、株式会社マクニカ クラビス カンパニー ビジネスソリューション第2統括部営業第1部第2課 課長 山田 智教氏、同課 田中 翔志也氏、技術統括部技術第2部第5課 課長 野本 裕輔氏、同課 主席 古瀬 勉氏の4名に話を聞いた。

業種業界問わず活用の幅が広いAI画像認識

古くから画像認識技術は存在しており、開発に必要なアルゴリズムもたくさんあった。しかし、AI画像認識の開発は予測AIなどに比べて難しいという声もある。その理由が「たくさんあるアルゴリズムから、結局どれを使えばいいのかわかりづらかったでは?」と野本氏は話す。

「最近ではアプリケーションに近い学習済みモデルが用意されているので、どういうアルゴリズムを使うと良いのか、選択しやすくなったんですね。端的に言えば、開発までの道筋が以前よりもはるかに立てやすくなった、という点がAI画像認識を身近にした理由のひとつだと思います」(野本氏)

実際、多くの企業で急速に画像認識技術を取り込む動きが進んでおり、その中でもよくある活用事例について田中氏は次のように紹介してくれた。

外観検査装置や製造業における異常検知は、画像認識技術の導入が積極的に進んでいる領域です。

最近では、自動搬送機や倉庫などでのピッキングロボットも挙げられます。また、業種は変わりますが、商業施設内では人物の体温検知や混雑検知、小売り業界では無人店舗に向けた来客や商品の検知などでも使われています。さらには、医療分野においてもX線検査装置などの診断結果の判定で使われたり、医療用カメラで採用されたりするケースも増えています」(田中氏)

たとえば「特定の場所に人が何人いるのか把握する」など画像認識技術を活用した事例は近年増えている

費用対効果を実感してAIの導入へ進む

画像認識だけでなく、AIを使った活用事例は年々増えている。しかし、多くのAIは導入はもちろん、活用・運用である程度まとまった金額は必要になるため、なかなかAI導入に踏み切れていない企業も少なくない。

だが、マクニカの田中氏は「費用対効果を見ていただいた結果、導入に至った例も少なくありません」と話す。

「AI画像認識の導入を検討される際、省人化を目的に手段のひとつとしてAI画像認識を選んでいただくケースがございます。

たとえば、工場での目視検査にパートタイマーさんをふたり雇うよりも、AI画像認識技術を導入したほうが安価になるとして、導入いただいたケースがありました。AI画像認識を使うほうが、パートタイマーさんをふたり雇うよりも安価になったことが決め手のひとつだったそうです」(同氏)

日本国内全体で、少子高齢化の影響もあって労働人口が減っている。また、昨今の新型コロナウイルスなどの影響から省人化を進める企業も増えた。こういった課題や現状から、AIの活用に乗り出す例は増加している。

田中氏は続けて次のように話す。

「事前に学習さえ進めておけば、人に比べて正確に判定・判断できるのもAIのメリットです。AIに任せられる部分はAIに任せ、人は人にしかできない仕事に注力してもらう。これがAI活用の根底にある考え方となっています」(田中氏)

イチから組み込むか、完成品の“箱物”を使うか

AI画像認識の導入にはいくつかパターンがある。マクニカで営業を務めている田中氏は「お客様がどの開発フェーズを加速させたいか、どの部分を自社でオリジナルに開発したいか、ご要望をお伺いしてご提案しております」という。

たとえば、「顔認証システムなどを“手早く”導入したい」といった企業には、すでに完成されているソリューションを提案し、「イチから組み込んで自社オリジナルのAIを使いたい」という場合には、「Jetson」などのモジュールを提案するそうだ(これら提案内容は一例)。

Jetsonとは、NVIDIA社が提供しているモジュールのことで、ひとつの小さな基盤のうえにCPUやGPU、メモリや電源などが搭載されている製品だ。

現場のエンジニアを支えるマクニカは、Jetsonを活用したAI画像認識の開発が非常に手軽になってきたと感じているそうだ。

「Jetsonは、比較的簡単にさまざまなアプリケーションを試せる製品です。先に話したとおり、使うアプリケーションやアルゴリズムを明確にしてくれるため、“使い勝手が良い”製品です」(野本氏)



マクニカではさまざまなJetson製品を取り扱っている

さらに続けて野本氏は「Jetsonにおいて最近話題になったのは、転移学習に関するSDKの新バージョンがリリースされたことです。転移学習のメリットは、特定のドメインで学習されたモデルがあるとき、このモデルを異なるドメインにも応用させられることです。これにより、AI画像認識の開発をより加速しやすくなったといえるでしょう」という。

とはいえ、(Ledge.ai読者にとっては釈迦に説法かもしれないが)Jetsonを使うには、ある程度の“電気”的な知識が求められることも忘れてはいけない。Jetsonはあくまでもモジュールであり、一般的なパソコンなどとは異なるため、ソフトウェアの下回りの知識なども必要だ。つまりは、パソコンの延長線としてJetsonを使おうとするとつまずいてしまう場合もある。

Jetsonなどを使うのではなく、いわゆるすでにパッケージングされたAI BOX(=すでに出来上がっているモノ)を使う場合であれば、Jetsonとは異なり、“パソコンの延長線上として”考えられるメリットがある。また、AIにおいては導入から運用までのスピード感も重要なため、“手軽に”“手早く”を求めているケースでは、既製品のAI BOXを推奨することが多いそうだ。

マクニカとしての立ち位置 “自社開発”も“既製品導入”もサポート

本取材では、書籍「Jetson Nano 超入門」の著者の一人であるマクニカの古瀬氏に参加いただいていることもあり、これからAI画像認識の開発に挑戦する人に向けて何を気を付ければいいのかを聞いてみた。

Jetson Nano 超入門

発売日:2021年4月21日
出版社:ソーテック社
ISBN-10:4800712831
ISBN-13:978-4800712837
Amazon販売ページ:https://www.amazon.co.jp/dp/4800712831
価格:3058円(2021/5/31時点)

「Jetsonを使った話で進めますが、我々のお客様のなかでも『Jetsonを立ち上げることはできました。サンプルプログラムもいくつか動作させました。さて、この先どうすれば私のやりたいことに近づけるかわからず困っております。』とつまずく方がいらっしゃいます。Jetsonユーザーだけでなく意外と同じようなケースは多いと思います。

私がオススメするのは、サンプルプログラムを少しずつ改造してみることです。実際に私がソフトウェアライブラリの使い方を学ぶ際も同様に行っています。小さな一歩でも、自分なりにプログラムに触れることで、“使い方”を習得できるんです」 (古瀬氏)

ちなみに、古瀬氏が執筆した技術記事ではNVIDIA製品でAI画像認識を開発する方に向けた解説がマクニカのサイト上で公開されている。サンプルコードがわかりやすくならべられており、そのコードがどういった意味をもつのかなども解説してある。そのため、多くのユーザーがAI画像認識を開発する際の“おとも”に使っているそうだ。

マクニカの公式サイトで掲載されている技術記事。第2話以降は必要事項をフォームに記載さえすれば、無料で読める。

古瀬氏の解説記事をはじめ、マクニカでは包括的にAI開発をサポートしている。田中氏は「さまざまなフェーズにおけるAI活用をフォローできるのがマクニカです」と話す。

「弊社の問い合わせ窓口では、さまざまなご相談を受け付けています。

それこそ、『外観検査を自動化するためにAIの開発をはじめたけど、なかなか精度が上がらず困っています』といった相談をいただくことも少なくありません。こうしたとき、我々は、お客様が最終的に実現したいことのために、総合的にサポートできる体制を作っています。

お客様が目指していることが、たとえばNVIDIAのJetsonで実現できそうであればJetsonについてご案内しますし、そのほかのソリューションを使ったほうが良いのであれば、マクニカ社内の半導体チームや、AIソリューションを専門とするチームとも連携しています」(田中氏)

マクニカが他社と異なるのは開発ベンダーという立ち位置をも持ちつつも、ソリューションごとの提案や開発サポートまで対応できる点だ。

田中氏は「『AIの開発を丸っとお願いしたい』と問い合わせいただくことも多いですが、『社内で開発したAIを、最終的には外販していきたい』といった企業様にも対応できます」と続け、“商社”であるマクニカならではの特徴も話してくれた。

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初めてAI画像認識の開発をする際、どうしてもハードルは高く感じてしまう。ただ、豊富なサンプルをもとに少しずつ自社流にアレンジしていくことが“つまずきづらくする”最も有効な手法だ。

ただ、それでもつまずいてしまった場合は相談を気軽に持ち掛けられ、「そもそも開発できる人員や工数が確保できない」という企業は実現したいことを問い合わせられる。

AIを活用して自社をよりよくしたい企業に対して“都合の良い相談先”がマクニカなのだ。

画像認識の活用が急速に広まった背景には、こうしたマクニカの「しっかりと企業を支える力」があるのだろう。