数十枚の“正常時データ”で異常検知を。AIツールが製造業のボトルネックを解決する

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製造業におけるAI活用といえば、異常検知。中でも、製品の傷や欠陥を調べる外観検査の自動化は今、需要が大きいと言えるでしょう。

株式会社三菱ケミカルリサーチの調査によると、製造業において20年以上経過した生産設備が約3割、30年を超えたものが約1割と工場のリプレイス需要も高まる中、リプレイスのタイミングで外観検査の自動化を取り入れようとしている工場も多いと思います。

今回は、AIに少量の正常データのみを学習させるだけで異常検知を実現できる外観検査ソフト「gLupe」を開発提供する、システム計画研究所(ISP)の井上さんにお話を伺いました。

製造業に共通する「異常データが足りない」問題

――異常検知では「異常データ」を収集するのが難しいとはよく聞きますが、実際そうなのでしょうか?

――井上
「異常検知は、異常データと正常データをAIに学習させる必要があります。しかし、おっしゃる通りでとにかく異常データが足りません」

外観検査の場合、少なくとも異常画像は数千枚〜数万枚ほど必要になってくるそう。そもそも異常が発生しないのが普通だからこそ、稀に発生する異常を検知して弾く需要があることを考えると、異常データの大量収集が難しいのはどの現場でも共通した課題といえそうです。

数十枚の画像で異常検知を実現する「gLupe」

――ISPの外観検査ソフト「gLupe」は、「異常データが足りない」問題に対処できるのでしょうか?

――井上
「『gLupe』は、数十枚の正常画像を学習させるだけで異常を検知できます。異常検知の中でも外観検査に特化したソフトウェアです」

gLupeは、学習した画像と異なる特徴を持つ画像を異常として分類します。この学習が、数十枚の正常画像で可能だといいます。

ディープラーニングでは、

  • 正常画像
  • 異常画像
  • テスト用画像

それぞれが少なくとも数千〜数万は必要になります。数十枚の画像で足りるのであればスモールスタートもしやすそうですが、どのようにして数十枚でそれらをカバーできるのでしょうか?

――井上
「これまでAIの研究を続けてきた結果、製造業における異常検知のノウハウが貯まってきたためです。詳しくは企業秘密とさせてください(笑)」

企業秘密……。悔しいですが仕方ありません。gLupeはどのような形で提供しているのでしょうか?

――井上
学習・評価用のアプリケーションと、推論ソフト開発用のSDKに分かれていて、これらを開発キットとして提供しています」

基本的にはユーザー側でSDKを使い開発をおこないますが、受託開発も請負可能とのこと。製造業での適用範囲としては、下記の領域を想定しているそうです。

  • 基板のハンダ付け不良検出
  • 樹脂製品の外観検査
  • 食品の外観検査
  • 溶接の外観検査
  • 時系列データからの異常検知

時系列データの異常検知についても、波形などに変換し「画像」として認識させることで対応できるそう。幅広い異常検知に活用できます。

製造業の異常検知では「むやみに追加学習しない」

――製造業での異常検知にAIを導入する際、何か注意すべきことはありますか?

――井上
「外観検査の場合だと、地味に思えますが撮影機材が重要です。カメラの精度や照明などで、常に同じ条件で画像データを取得できるようにすることが必要です」

――井上
「また、検知した異常をすぐに学習させてモデルに反映するニーズもありますが、おすすめしません。

開発フェーズで検査精度を調整している段階では、異常判定を追加学習することはあります。ですが影響が大きいので、工場などの精度の厳密性を求められる環境ではあまり動かすべきではありません

検知した異常のフィードバックは重要ですが、追加学習することで、これまで検知できていた異常を検知できなくなることもあるといいます。新しい異常が見つかった場合でも、慎重にテストすべきです。

――gLupeの今後の展開についてはどうでしょうか?

――井上
「今は1クラス分類(正常orそれ以外を検知)の機能のみですが、今後は2クラス以上(異常のタイプ別に検知)の分類も検知可能にしていきます。

また、領域分割の技術も別途研究しているので、その技術を異常検知にも活かしていく予定です」

膨大なデータ量を用意しなくとも、正常画像数十枚で学習が完了するgLupeであれば、スモールスタートもしやすそうです。

今後は複数の異常を検知できるように開発中とのこと。興味を持たれた方は、ぜひ使ってみてはいかがでしょうか。