ディープラーニングはコスパが悪い?AI開発企業が語る、導入プロジェクト成功のノウハウ

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11月27日、日本ディープラーニング協会(以下JDLA)会員企業向けの内部勉強会が催された。「AI導入を阻害する要因」と題したパネルディスカッションでは、数多くのAI開発プロジェクトを進めている2社の担当者が、各々の立場から複数のテーマについて語った。

AI開発者のウラ話のほか、自社へのAI導入を考えている非技術者の学びになるであろうパートもあった。本稿では、「ディープラーニングの弱点」「AI導入を成功させる秘訣」の2つのパートの様子をお届けする。





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パネラー
花田賢人氏(画面中央)
株式会社Liaro 代表取締役CEO 

南野充則氏(画面左)
株式会社FiNC Technologies 代表取締役CTO/JDLA理事 


ファシリテーター
井﨑武士氏(画像右)
NVIDIA合同会社 エンタープライズ事業部長/JDLA理事

ディープラーニングの弱みとは?

ファシリテーターの井﨑氏は、クライアントに「ディープラーニングができないことは何か」と尋ねられることが多いそう。そこで「ディープラーニングの弱点は何か?」という問いかけがなされた。

パネラーの2名が語ったディープラーニングの弱みは、メンテナンスコストの高さと、大量のデータが必要になる点だ。

――花田
「ディープラーニングや機械学習を使うと、従来の手法に比べてメンテナンスコストが倍以上になってしまいます。たとえば『分析精度を10%高めるのに、メンテナンスコストが10倍以上に増える』ということもある。

古典的な統計手法で事足りる場合も数多くあります。たとえば弊社の需要予測でも、業態によってはディープラーニングを使っていません」

ディープラーニングの分析精度を高めるには、学習と評価が欠かせない。しかし特徴量が増え、複雑なモデルになっていくほど、値(パラメータ)の設定などチューニングに必要な時間が増えていきがちだ。

一部の手法を除いて、ディープラーニングは判断の根拠が見えない。ゆえに、どうすれば分析性能が上がるのか、が見えづらい。

分析精度を上げるには大量のデータが欠かせない

そのため花田氏は、「ディープラーニングを使うかどうかの見極めが重要」と主張する。

――花田
「コンピュータサイエンスを学び始めた頃に、すでにディープラーニングが登場していたという若いエンジニア(20代前半)は、まずはディープラーニングを使おう、と思いがちなので注意が必要です。

弊社の文章生成でもディープラーニングを使おうと考えていましたが、データ不足と、モデルが複雑すぎるといった理由から違う手法をとっています」

南野氏は、ディープラーニング導入が生み出すROI(費用対効果)に注目すべきだと述べた。

――南野 「ディープラーニングを使ったときと、そうでないときのギャップが大きければ大きいほど、ビジネスチャンスはあるでしょう。
しかし、そうでなければ無理にAI導入を進めなくても良いとも思います。

花田さんが言うように、データ量が少ない場合は分析精度が上がらないので、ディープラーニングを使うのは避けたいところ。そもそもディープラーニングを使わなくても、ある程度解決できている問題は数多くあります」

ディープラーニングは銀の弾丸ではなく、あくまで目標達成のひとつの手段にすぎない。「ディープラーニング(AI)を使う」というように固執しすぎず、課題に対して最適な解決手段を取るべきということか。

AI導入プロジェクト成功の秘訣

「AI導入プロジェクトを成功させる上で気をつけるべきこととは?」というパートでは、自社でAI開発を進める南野氏と、他社AIの開発協力を受け持つこともある花田氏と、両者異なる視点から意見が交わされた。

ディープラーニングを使うことが目的化してしまいがち

井﨑氏いわく、「ディープラーニングは判断の過程がブラックボックスだから、成果が出るかどうか分からない」という。ベストは尽くすものの、顧客が欲しいものを提供できずに失敗する可能性もある中、AI開発者が気をつけていることとは何か。

花田氏は、プロジェクト初期に起きる問題として、ディープラーニングを使うこと自体が目的化しがちだと語る。

――花田
「ディープラーニングより精度が高いほかの手法を使ったとき、クライアントから『え、ディープラニングを使っていないの?』という反応を受けたことがありました」

あわせて、プロジェクトをスムーズに進める秘訣として、

  • 社外秘の情報がないか等を事前に確認し、開発側に分析用データをスムーズに受け渡す
  • 勉強会や説明会などを実施し、プロジェクト関係者に「AIとはどんなものか」を周知する
  • (開発側が)失敗した場合にも、分析の知見をフィードバックするなどして、成果を残す

の3点を挙げた。

いきなり完成形を目指すのではなく、マイルストーンを置くべし

花田氏は、「データを分析して可視化していくうちに、機械学習で期待通りの成果が出るかどうか分かってくる」としたうえで、開発プロジェクトをスモールスタートする大切さを説いた。

――花田
「たとえば、予測を出す自動システムをゴールに据えたとしても、『最初はデータの分析で止める』という風に段階を踏んで進めていくのが良いと思います。

結果、初期で止まったプロジェクトもありますが、そのまま開発を進めていたら、成果が出せず後戻りができなくなってしまっていたかもしれません」

南野氏も、評価手法を決めるための情報収集をしたうえで、プロジェクトの「撤退ライン」を決めることが肝要だと述べる。

第1部、Finc Technologiesの登壇資料

――南野
「改善の見込みがないからプロジェクトを終わりにする、というように、適切なタイミングで指示を出すことが大切です」

実際に、南野氏率いるFinc Technologiesは、CTO直下でAI開発プロジェクトを進めている。AI技術とサービス、ひいてはビジネスインパクトが分かる(経営視点を持っている)人間が決裁権限を持つことで、プロジェクトが円滑に進みやすくなるという。

導入プロジェクト成功のカギを握るのはAI担当者自身

Legde.aiでも、多くの企業のAI導入を取り上げてきたが、一筋縄でいかなかった事例を耳にするケースも少なくない。今回改めて、導入プロジェクトの成否は、AI導入担当者の技術理解度や社内調整力にかかっているのではと感じた。

理想と実用のギャップを埋めるのに、先人の例を知ることは有効だ。レッジが先日リリースしたe.g.(イージー)では、400ものAI導入事例を紹介している。業界や利用用途別にも探せるので、成功したプロジェクトの実例を知るガイドとしても活用してほしい。

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