画像は学会誌のHPより
糸魚川総合病院 脳神経外科、ベルシステム24、獨協医科大学、埼玉精神神経センター、国立病院機構七尾病院の共同研究チームは2023年3月3日、ベルシステム24提供の気圧予報に基づく体調管理アプリ「頭痛ーる」のビッグデータを人工知能により解析し、天気(気圧の変化、降雨や湿度)が頭痛発生に関与する可能性を報告した研究が、同年2月28日アメリカ頭痛学会の公式医学雑誌「Headache」に掲載されたことを発表した。
背景
日本における片頭痛の年間有病率は8.4%で、20-40歳代の若年女性に多いと言われ、致命的ではないものがおおいため軽視されがちではあるものの、片頭痛による欠勤や休業、学業や労働のパフォーマンス低下などによる間接的経済損失は1人あたり176万円/年と言われているという。
ストレス、月経、空腹に次いで、天気は片頭痛を引き起こす原因として4番目に多いと言われ、どのような天気で頭痛が起きるのか明らかになれば、自身の体調管理やセルフケアに役立つほか、頭痛の発生メカニズムの解明に繋がる可能性があるとのこと。しかし、これまでの天気と頭痛発生に関する研究は小規模なものが多く、一貫性の有る結果が得られていなかったと同研究チームは述べる。
論文概要
同論文は、スマホアプリ「頭痛ーる」のビッグデータを、ソニーネットワークコミュニケーションズ社の Predictione One 時系列解析モードを用いて解析し、気象と頭痛発生の関係性を検討するというもの。統計学的モデル作成や時系列クラスタリングに加え、Prediction Oneの時系列解析を用いて解析を行ったという。頭痛発生と強く関連する天気の要素として「低気圧」「高湿度」「降雨」「6時間前と比較して大きな気圧低下」「朝6時の高気圧」「翌日朝6時の低気圧」「1週間かけて気圧が低いままであること」「1週間かけて気圧が大きく低下していること」が頭痛発生と関与することが判明したとのこと。これらの結果を総合すると、頭痛の発生には「気圧の変化」「降雨」「湿度」が関与することが示唆されるという。
論文名: Investigating the Effects of Weather on Headache Occurrence Using a Smartphone Application and Artificial Intelligence: A Retrospective Observational Cross-Sectional Study
著者: Masahito Katsuki, Muneto Tatsumoto, Kazuhito Kimoto, Takashige Iiyama, Masato Tajima, Tsuyoshi Munakata, Taihei Miyamoto, Tomokazu Shimazu.
掲載誌: 2023 – Volume 63, Headache: The Journal of Head and Face Pain https://headachejournal.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/head.14482
DOI 10.1111/head.14482
スマホアプリ「頭痛ーる」
「頭痛ーる」は、気象を起因とする疾患を持つ人の「気象や心身の変化による体調不良に備え、その不調を軽減したい」というニーズに応えるべく、ベルシステム24の提供している気圧予報に基づく体調管理アプリとのこと。
気象庁から提供された気圧予報に加え、月に120万件収集されるアプリユーザーの体調に関する情報を組み合わせ、導き出された精度の高い気象病予報が提供される。月間アクティブユーザー数は100万人、2022年11月には累計1,000万ダウンロードを達成したという。