AI特化型インキュベーション施設『KARNEL HONGO』事業戦略発表会&施設内探検レポート

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先日発表があった、DEEPCOREが運営するAI特化インキュベーション施設『KARNEL HONGO』の事業戦略発表会及びプレス向けの内覧会が、8月8日開催されました。

発表会に登壇したのは以下の3名。AI研究で著名な東大の松尾先生もいらっしゃっていました。

仁木 勝雅氏
DEEPCORE 代表取締役社長

松尾 豊氏
技術顧問 東京大学特任准教授

雨宮 かすみ氏
DEEPCORE CFO

DEEPCOREは技術者×起業家精神を追求する

最初に登壇したのは、DEEPCOREの代表 仁木さん。ディープラーニングで産業構造が変化するなか、DEEPCOREでは技術者の起業家精神に火を付けたいと語ります。

――仁木
「ディープラーニングで産業構造が相当変化しているなか、我々は起業家精神を持った技術者を育成したいと考えています。」

ディープラーニングが産業を再定義する、と言われていますが、日本にはまだまだインキュベーター自体も数は多くありません。海外にはAI特化型や、技術全般に強いインキュベーターが数多くあり、それと同じことを日本でもやる。そのためにKERNEL HONGOでは、

  • コミュニティ形成
  • 人事交流
  • 産業界との課題解決による交流

の3点を進めていくとのこと。

――仁木
「日本には技術者を産業界をつなぐプラットフォームは多くありません。技術者と産業界をつなぐことで、新しい産業を生み出したいと考えています。」

先日ソフトバンクワールドに登壇した孫さんも語っていましたが、ディープラーニングはすべての産業を再定義し、根本から塗り替える力があるといいます。その第一歩として、今盛り上がっている本郷という地に、インキュベーション施設を立ち上げるのは理にかなっている気がします。

10年後にはGAFAの壁をディープラーニング企業が塗り替える

DEEPCOREに技術顧問として参画している東大の松尾さんも登壇。今のディープラーニングから、将来の展望、なぜDEEPCOREをサポートするのかといったことを語りました。

――松尾
「ディープラーニングは一言で言うと『最小二乗法』という説明の仕方を最近しています。これは関数の一種で、“深い関数”なんですが、この深い関数は表現力がめちゃくちゃ高い。これによって、今まで学習ができなかった分野の学習が可能になったという点が、ディープラーニングのすごいところです。」

この深い関数は人間の脳も基礎として使っているはずで、知能として相当根源的なものだといいます。要はディープラーニングは非常に単純な構造ゆえに汎用性が極めて高く、これがネットやトランジスタと並ぶイノベーションだということでした。

――松尾
「なぜDEEPCOREをサポートするのかと言うと、孫さんもおっしゃっていたようにビジョンが壮大で、目先で儲けるよりも長期で考えて結果を出していく、という思想が松尾研のビジョンと一致したからです。」
――松尾
「今はネットで言えば1998年で、そのころは今のGAFAと呼ばれる企業はまだまだ知名度がなかった。10年後20年後には、それらの企業のなかにディープラーニングをベースとした企業が食い込むでしょう。当然そのような企業を日本から出したいと思っています。」

かつて検索エンジン、Eコマース、SNSといった技術が一般的ではなかったように、ディープラーニングもあと10年もすれば当たり前になる。GAFAなどのジャイアント企業群にAI企業が食い込む、というのは遠くないかも知れません。

物理的な場所を持つことでイノベーションが生まれる

続いてDEEPCORE CFOの雨宮さんより、DEEPCOREの事業戦略と、KERNEL HONGOの位置づけが発表されました。

――雨宮
「DEEPCOREがなにをやりたいかというと、テックバックグランドの起業家を増やしたいというのがあります。そのために、ここKERNEL HONGOでコミュニテイの形成から、運営までトータルでサポートする体制があります。」

DEEPCOREのスタートアップサポート体制の柱となるのは、

  • KERNEL HONGOによるコミュニティの形成
  • 産業界と連携した実証実験による起業の促進
  • それらのVC投資、ハンズオン支援

の3つ。これにより、「技術者を起業家として卒業させる」ことを目標として運営していくといいます。在籍メンバーはAI技術者・研究者が100名おり、そのうち学生が半分ほど、20代前半が7割近くいるんだそう。

――雨宮
「AI技術者以外にも、何らかのドメインでスペシャリティを持った方々や、経営者などが在籍しており、それらのスキルを併せ持つ人材が多数います。KERNEL HONGOで交流を深めてもらい、いずれは技術者も起業家として卒業してもらうことが目標ですね。

“物理的な場所を持つこと”がイノベーションにつながると考えています。」

雨宮さんもおっしゃっていて、かつ話を聞いて思うのが、やはり「物理的な場所を持つこと」は本当に重要だということです。どんなにオンラインで交流を深めようが、リアルで一回会って話すのにはかないません。そんな濃密な時間をKERNEL HONGOのような場所で仲間と切磋琢磨しながら過ごすことでイノベーションが生まれるのは、ガレージから始まったシリコンバレーの発祥にも似ています。

KERNEL HONGO施設内を探検

発表会後に、KERNEL HONGOの施設内を見学する時間も設けられていたので、写真でお伝えします。

実証実験用の部屋。セキュリティのために曇りガラスに切り替えられる。

会議室。会議室の名前は恒星から取っているそう。

KERNEL HONGOは今後も拡大・連携を強めていく

KERNEL HONGOの今後の展開としては、ほかの施設との連携を強め、KERNEL HONGOのような物理的な場所の拡大、海外のインキュベーション施設との連携といったことを進めていくそう。今後の展開もとても楽しみです。“本郷バレー”を盛り上げていってほしいですね。