導入実績500社以上 「現場で動ける」DX人材が育つ研修とは?

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各社が本格的にDXを進めていくうえで、いくつもの問題点が浮かび上がってきた。なかでも人材育成は企業が抱える「デジタル産業を目指す企業3つのジレンマ※」のひとつだ。

※出典:「デジタル産業を目指す企業3つのジレンマ」DXレポート2.1 デジタル産業の創出に向けた研究会(経済産業省) 2021年8月

企業が必死になって人材獲得や育成に取り組み、企業向けのAI研修を提供するサービスも増え続けている中、2017年から500社以上の企業にAI研修を実施しているのが株式会社キカガクだ。

キカガクの研修が業界問わず多くの企業に選ばれる鍵は、各企業の課題から逆算して設計されるカリキュラムと、実データを使った「現場での自走力」を高める研修にあった。これまで数多くのAI研修をデザインしてきた、同社のセールス&マーケティング部 営業部長 山下 公志郎さんの話から紐解いていく。

現場の実データを使った学びで実践力を養う 

山下さんいわく、近年は特定の業界・職種にとどまらず、さまざまな企業から引き合いを受けているという。同社の研修は、「研修を受けただけの人」でなく、「自ら問題を解決して、PoCや本番実装を成功に導ける人材」を育てると評判だ。

キカガクのAI研修は、研修内容をすぐに実務で活かせるよう、実際にデータを使っている現場担当者から徹底してヒアリングした内容をカリキュラムに反映させている。

――山下「各企業でのドメイン知識に加えて、データの特性をよく知る社員の方に話を聞きながら研修を設計しています。

そのため、専門性が高い業務のAI研修も実施できます。過去には、不動産のアセットマネジメント(投資用不動産の取得から管理運用、売却までの戦略を実行する業務)の研修を実施した経験もあります。

ヒアリングを重ねて検証し、研修を設計していくことで、どんな業種・業界でも対応できるというのはキカガクの強みです」

こうしたヒアリングに加え、研修では現場で実際に使われているデータ(実データ)を使ってデータの前処理や分析などを体験する。研修で実データを使うメリットは多い。実際の業務に近い演習ができ、研修後も学んだ内容がすぐに業務に活かせるので、受講者のモチベーションアップにもつながる。

だが、実データを借りるだけではないのがキカガクの研修のユニークなところ。現場でつまづきやすいポイントをあえて講義内で採用し、研修でありながら問題解決能力と自走力を養っていく。

たとえば、そのままコピー&ペーストして実行したらエラーが出る講義資料(サンプルコード)を通じてトラブルの解決方法を学んだり、データ整形やアノテーション(教師データの画像などに情報を入れる作業)といった、地道な作業も体験する。

研修イメージ(実際の研修画像とは異なります)

――山下「こうした“泥臭い”部分が、AI開発の業務の7割とも言われている中、綺麗なデータを使って教科書どおりにプログラムを書くだけでは実践力がつくとは言えません。

データの扱いや実務で問題に遭遇したときに解決できる能力、自走力を高められる設計にしています」

「経験と勘の現場で、一握りの人材しかデータ分析ができなかった」小売業A社

キカガクは「データ分析部署があってもうまく機能しない」「リテラシー教育は終えたものの現場でPoCを回せない」といった課題をどのように解決へ導いたのか?実際に「実データ研修」と「PoC研修」を受けた企業の例を紹介したい。

まず紹介するのは業界最大手の小売業A社だ。

課題:大量のPOSデータが十分に活用できていない

A社は国内外で数百店舗を運営していて、1日の販売(POS)データは数万件にものぼるが、現場担当者の「経験と勘」を中心に意思決定をしていた。

データ分析部署もあるものの、全社から見たらわずかな人数しかいない。そのため、現場からの「このデータを分析して欲しい」という要望に応えきれず、依頼から問題解決までに時間がかかってしまい、分析結果を現場に活かせずにいたという。

多くの社員が受講して、ボトムアップでのDX推進が急加速

キカガクのヒアリングの結果、「商品の棚卸しや棚割りの最適化」を研修の課題に設定して実データ研修を実施した。

この研修は実際の同社のPOSデータを使い、受講者が自らが考えていくワークショップ形式で行われた。受講者はデータベースから必要なデータを取得して、抽出したデータの分析を通じて「どういうふうに棚割りをすると売上を最大化できるか?」「いままで慣例的に考えていた事象は、本当にデータの裏付けがあるのか?」といった現場に活かす示唆を得た。

研修には全国の社員が参加。データに基づいた意思決定をしていく大切さ、デジタルツールを利活用していく文化が社内で醸成されていった。

「実現場でPoCを主導できる人材の育成が急務」製造業B社

初級者向けの基礎研修の導入は進んでいるが、現場での応用に課題があったのは、製造業B社だ。

課題:リテラシーは身についたが、現場でプロジェクトを回せない

B社は社員のDXリテラシー教育や、機械学習の理論を学ぶ基礎研修は終えたものの、実現場への応用が進んでおらず、プロジェクトを主導できる人材の育成に課題を抱えていたという。

そこで、キカガクに「自分たちでPoCを企画して、開発サイクルを回せる人材を育成してほしい」と相談を持ちかけた。

研修から実現場に導入できるプロダクトが生まれた

ヒアリングの結果、受講者ひとりひとりが企画の立案からデータの収集、モデルの検証までのすべてを6ヶ月間で学ぶ「PoC研修」を実施することになった。

データの特性をよく知る、B社内のデータサイエンティストにヒアリングを繰り返して研修カリキュラムを設計。受講者全員がeラーニングで基本知識をおさえたあと、PBL(Project Based Learing、問題解決型研修)形式で、データの前処理(構造化、アノテーション)からモデル構築、評価指標の剪定、プロトタイプの作成まで挑戦した。

研修を通して、現場への導入可能性の高いプロトタイプの開発に成功した。また、これまでパートナー企業に委託していたデータ分析も、ドメイン知識を生かし、自社内で分析や課題設定をすすめられるようになったという。

ゴール逆算型で「学んだだけ」にならない研修

2社の事例から見えるように、キカガクは徹底的な現場のヒアリングを重ねて顧客自身が気づいていない潜在的な課題を掘り起こし、1社ごとに研修内容をカスタマイズして提供している。「依頼者の本質的な課題は何で、どのように解決に導くか」「研修後は実業務へ応用できるか?」などを考え抜いて設計するので、企業ごとに完全オリジナルの教材を準備しているという。

課題から逆算して作られた研修なので、業務で使える知識やスキルを効率的に得られるのだ。

――山下「研修のニーズはさまざまです。自社でデータサイエンティストを育成して完全内製化を目指す企業様もあれば、今あるデータの活用方法を知りたいという企業様もいらっしゃいます。

たとえば『外部のベンダーなどに力を借りつつ、自社内でスキルアップを図りたい』という企業様には要件定義であったり、納品されたプロダクトの保守運用ができる仕組みを設計し、内製化に向けての人材育成を進めていきます。

自社内でできる範囲が広がっていくので、外注し続ける企業様とは今後大きな違いが出てくると思います」

A社のように実データはあるがアプローチがわからない企業や、B社のように社内でAIを開発したい企業のほかにも、「AI事業のマネタイズモデルを探りたい」「まずはExcelによるデータ分析からはじめたい」といった、さまざまな要望に応えている。

―― 山下「『DXをどう進めればいいかわからない』『誰がスキルを身につければ良いのだろう』『それっぽいデータはあるけれど、活用方法がわからない』などと悩まれる方も、ご相談いただければ解決方法などをご提案させていただきます」