「ついていけるか不安しかなかった」知識ゼロ・文系未経験者が受けるAI研修の実情レポ

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AI導入やDXを推進させる人材(AI人材、DX人材)に注目が集まっている。

経済産業省が発表した「AI人材育成の取組」では、「AI等を使いこなして第4次産業革命に対応した新しいビジネスの担い手となる高度IT人材の育成が急務」と言われているほどだ。

「それなら、自分自身がAI人材になればいいんじゃない?」

こう話したのは、株式会社レッジに2021年7月に入社した中途社員・稲橋 亮佑だ。お世辞にも彼は入社当時、AIへの知識どころかITに明るい、ともいえなかった。

本稿はそんな彼がAI人材と呼ばれるまでのサクセスストーリー……というよりも、どのようにAIへの知識を学び、長期コースを経て、何を得られたのかをお届けする。

「AI研修を受けてみたいけど、中身はどうなっているんだろう」「私でもついていけるのか不安」「研修を受ける人って、どんな人がいるんだろう」など、研修に興味はあるものの、手を出せずにいる多くの方の参考になれば幸いだ。

「熊本県人吉市での官民DXを推進させる人材になりたい」

ご存知のとおり、レッジはAI関連メディア「Ledge.ai」を運営している。また、AI開発・データ活用支援などのコンサルティング事業も手掛け、さまざまな企業のDX推進を支援するような取り組みも実施中だ。

まず、稲橋のプロフィールを紹介したい。


稲橋 亮佑
1991年。30歳。明治学院大学経済学部卒業後、外資系アパレルブランドにて販売職を経験。その後、国内大手人材・広告企業にて求人広告の営業に従事。

と、見ていただければわかるように、生粋の文系人材だ。そんな彼が、なぜAI人材を目指すことになったのか。

「現地の方にわかりやすく伝えるための、AI周りの知識が欲しい」

レッジは2021年8月に熊本県人吉市にサテライトオフィスをオープンした。稲橋はレッジに入社してから現在、このサテライトオフィスにて、人吉の官民DX実装の支援活動に励んでいる。

業務の中では当然、AIやDXに関する知識を求められることがある。そこで「AIなどのIT技術に関する知識が不可欠」と自身で考え、勉強するに至ったのだ。

稲橋が選んだのは株式会社キカガクが提供する「AI人材育成長期コース」だ。

キカガクの同研修を受ける理由はいくつかあったそうだが、稲橋は主に3つのポイントがあったと話した。

「せっかく受けるなら、業務で活躍できる人材になりたいんだよね。求めるスキルを習得できることが示されているところで受けたかった。キカガクの研修は、経済産業省の『第四次産業革命スキル習得講座(Reスキル講座)』に認定されているそうなので、まずここが決め手のひとつに。

あと、人吉市で活動している都合上、特定の場所に集まる対面受講はできないから、オンラインで研修を受けられるのも条件のひとつだった。時勢的にも、対面はまだ控えたほうがいいからね。

それと、キカガクの受講生が作成したプロダクトの幅が広かったことにも興味をひかれた。AIでよく耳にする『異常検知』とか『チャットボット』『予測やレコメンド』に関するプロダクトを作ったと公式サイトにも記載があって、AIのプロダクトをつくる考え方を身に付けたいなと思ったのも理由の一つなんだ」

6ヵ月の長期研修 何をどのように学べるのか

稲橋が受講する「AI人材育成長期コース(以下、長期コース)」は、6ヵ月に及ぶ文字通り“長期”の研修だ。ここからは、長期コースの中身を紹介したい。

同コースが目指すのは自走できるAI人材の育成だ。技術力、問題解決能力、自走力の3ステップ構成で、受講後に活躍できるAI人材育成を目指している。そのため、AI研修でよくある、座学による知識インプットがメインの講座ではないことを覚えておいて欲しい。

全体のスケジュールは、下記となっている(キカガクによる提供、2022年3月31日開講分まで)。

最初の1カ月目はPythonや、AI/機械学習の基礎について理解を深めたり、その周辺知識を学んだりすることが主だ。全体像を掴んだら、2カ月目にはディープラーニングの実践に移っていく。3カ月目はデータ収集の方法を学び、アプリケーション作成の準備を進める。

そして4カ月目以降は自走期間となり、講師との1on1を通じて個別のアプリケーションの作成に挑戦する、という流れだ。

大きく分ければ、1〜3カ月目はAIに関する知識を養いつつ、手を動かして“AIに慣れる”ことがメイン。4〜6カ月目はこれまでの学習内容をもとに実践に移っていく。この「自走期間」ではアプリケーション/プロダクトを作成するため、学んで終わりではないことが最大の特徴だ。

学習は受講生が各自のペースで進められるe-ラーニング。リアルタイムオンラインの講義も週1回実施していて、時間は長期コースに参加するタイミングによって異なるが、平日は18:30~21:30、休日に受講するケースでは13:00~16:00の3時間だ。

実際に受講し、修了した方からは「成長を実感できる」「覚えた内容を業務で活用している」などの声が挙がっている。キカガクの動画は受講修了後も見続けられるだけでなく、他コースの動画も無料、さらには今後追加されていくコンテンツも一生無料で見られるのだ。

ちなみに、稲橋は業務で活躍する人材になるために長期コースを受講しているが、キャリアチェンジを目的に本コースを受講される方も多いという。提供するキカガクでは、転職支援サポートも担っており、未経験からのAI人材としての就職を支援してくれるそうだ。

3カ月、ついていけるか不安だったが乗り切れた

3カ月目を終えた稲橋は次のように話した。

「最初は辛かった……。

正直、辛いと感じた点は何個かある。まず、コードを書くときやエラーを探すのに英語を使うところ。これは個人個人で、異なる部分だと思うけど、俺って英語が苦手なんだよね。なのに、コーディングで使うのは英語ばかり。今は『ここはこのワードを入力する場所』とかわかってきたけど、やっぱり最初はきつかった。

あとは当然、数学も勉強する必要があるので、数学が苦手だと一層ハードルは高く感じるかもしれない。とくに微分は難しかった(笑)。

『Python&機械学習入門』の動画を見てからはだいぶ抵抗がなくなったけれどね。機械学習で使う数学がコンパクトにまとまっていて、高校数学の内容が怪しくても、概要が復習できた。

こんな感じで、最初の1~2カ月目の知識を学ぶ回は、正直大変だった。本当にAI人材になれるのか、ということではなく、『研修そのものについていけるのか』って不安しかなかったよ」

伴走してくれる講師に支えられた

そんな稲橋を支えたのは、1on1の担当講師である藏野さんの存在だ。

「6カ月もの長期間、研修を受け続けるモチベーションの維持って、普通に考えるとかなりハードだと思っている。自分の場合は『人吉の官民DX実装を支援するうえで、現地の方にわかりやすく伝えるためのAI知識を養いたい』っていう目的がとてつもなくあったし、なによりもキカガクの講師の藏野さんがモチベーターになってくれたのが本当に大きいと今でも思っているんだよね。

長期コースでは週1回のメンタリング日に個別カウンセリングが受けられるんだけど、講師の先生には『何がわからないのかが、もうわからないです』とか話したりして(笑)。本当になんでも相談できたのが、キカガクの研修を受け続けるモチベーションのひとつになっていると思う。

藏野さんは自分と年齢も近かったから、雑談も含めてコミュニケーションを取りやすかったし、受講していてわからないことがあったら的確なアドバイスもくれたりしたんだよね。

研修自体はキカガク以外にもたくさんあるけど、気軽にコミュニケーションがとれる講師がいて、なおかつ自走をめざして一緒に走ってくれるっていうのは、キカガクの研修を選んで良かったなと思っている」

稲橋自身は「恥ずかしいから記事に書かないで」と言っていたが、稲橋は「せっかく親身になって教えてくれている藏野さんのためにも、長期コースをしっかり受けてAI人材になりたい」と話している。


技術的な質問だけでなく、学習の進め方や最新の知見なども聞ける。雑談もできる

働きながらもコース修了率9割超え。忙しくても“やりきれる”仕組み

また、稲橋が苦労したのは、時間の捻出だ。

「研修を受ける講座は週1回。自分の場合は毎週火曜日の18時30分から21時30分まで。この受講時間を半年間も確保しないといけないのは、正直、結構厳しい。

それと、研修を受ける当日だけではなく、予習や復習をする自己学習の時間も別途必要になるから、スケジュールの確保は相当考えないといけない。自己学習の時間は、キカガクのさまざまなコースの動画を視聴したり、習ったことを思い出したりしているよ」

稲橋がこう話すように、時間の確保には多くの受講生が知恵を絞っているようだ。

期が始まる前から講座の動画は開放されるので、長期コース開講前に予習の時間を確保する受講生もいるという。また開講後も「1日1時間は学習する」と決め、席に座って手を動かし始める、受講生同士でグループ学習タイムを設けて一緒に勉強をする……など、各々工夫している。

こうした習慣づけやモチベーションを維持するメンタリングなどもあり、キカガクの長期コースの修了率は9割を越える。受講生の多くが働きながら学んでいるのに関わらず、だ。

「とはいえ、独学でAIについて身につけられるほど自分は器用じゃないし、必ずどこかで勉強する時間を作るという習慣づけも自分だけではできないと思うから、結果としては自分にとってこの長期コースの座組は助かっているんだけどね(笑)」

自走期間を終えて感じた「自分なりの物差しを作れそうな未来」

長期コースを経て、稲橋はどう感じているのだろうか。

「研修を受け始めたときは、AIに関する単語ひとつとっても、『どういうこと?』ってなっていたけど、やっぱり勉強を続ければ理解も深まっていくのが身に染みている。長期コース受講前は『Classって何?』っていう状態だったんだよね。

インプット期間が辛かったと話したけど、しばらく受けていくうちに、内容がすっと頭に入ってくるようになった瞬間があって、自分自身が理解しつつある、とわかるようになっていったのは楽しい経験だった。

自走期間では自分で挑戦したいことに対して走っているから、モチベーションの向き方も大きく変わったんだ。レッジでの業務に関連する内容だから、これまで以上のやる気を発揮して頑張れたと自分でも思う。

座学で覚えた知識は本当に役に立っているし、学生向け某ゼミのマンガみたいに『この内容、キカガクの研修で習ったところだ!』ってなる部分ばっかりだよ(笑)」

また、長期コースで身についたのはAIに関する知識やプログラミングだけでないという。

「実際に自分が勉強してゼロからプロダクトを作れるというのは、替えの利かないスキルなのではないかと改めて感じているんだよね。自分がわからないことを言語化し、情報を分解して、調べて、実装する。開発だけでなく、やったことのない分野の仕事にチャレンジする自信も身につけられたと思ってる。

長期コースを受講し終えて、AIに関する知識や実装力だけでなく、AIを使う側の人間としての『物差し』ができたと思っているんだよね。プロダクトひとつ取っても、どの機能が必要で何が足りていない、とか、この課題に対してはどういうプロダクトが必要なのか、とか。

AIやDXはこれからも多くのシーンで議題に挙がる言葉だし、それらに関して自分なりの物差しを作っておくことはたぶん重要だと思っている。そんな物差しを作れるのがキカガクの長期コースなのではないかな?」

AIへの知識どころかITに明るい、ともいえなかった彼は、大変ながらやりきった長期コースを通して、AIの知識やスキルだけでなく、自走する力、そしてDXやAIに対する「物差し」が得られたようだ。

「せっかくやるのであれば、ただの知識やスキルの習得で終わらせたくない」という方は、一歩前に踏み出してもらえれば嬉しい。

キカガクの公式ブログでは、受講生の声が多数紹介されている。こちらも覗いてみてほしい。