コメ兵、ニセ物を見破れるAI鑑定「新人より間違いなく速い」

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株式会社コメ兵 執行役員 経営企画本部副本部長 兼 海外事業担当 兼 株式会社K‐ブランドオフ 代表取締役社長 兼 BRAND OFF LIMITED Director 兼 名流國際名品股九份有限公司 董事長の山内祐也氏(※10月1日からはコメ兵ホールディングス)

新連載「AI活用事例を聞く」では、製造や建設、金融、不動産、エンタメなど、さまざまな業界における人工知能(AI)活用について、各企業の担当者に聞いていく。

製造や建設、金融、不動産、エンタメなど、さまざまな業界・業種でAIが活用され始めている。今回、取材したのは小売/サービス業界のなかでも、日本最大級のリユースショップを運営する株式会社コメ兵(KOMEHYO)だ。

AIを活用した査定のイメージ

コメ兵は8月25日から、KOMEHYO名古屋本店に、本物かニセ物を見極める「真贋(しんがん)判定」に加え、「型番判定(モデル名・型式などの判定)」も可能なAIを導入している。

現在、同AIに対応しているブランドはルイ・ヴィトンのみ。最初にルイ・ヴィトンを選んだのは、同社で取り扱うメインのブランドであることや、定番で良いモデルが何年も続けて製造されることなどが理由という。

ただし、ほかのブランドも機械学習を正常に機能させるためにAIに与える「教師データ」を集めており、すでにAIの開発も開始しているとのこと。

今回は同AIについて、コメ兵の担当者に「なぜ導入したのか?」「人間とAIどちらが優秀なのか?」といった疑問はもちろん、ビジネス視点から「AIは高額なことが少なくないが、社内で開発・導入にどのように納得してもらったのか?」など、質問をぶつけてみた。

AIを使ったサービスを届けることがもっとも重要だった

まず、「なぜAIを導入したのか?」と聞くと、株式会社コメ兵 執行役員 経営企画本部副本部長 兼 海外事業担当 兼 株式会社K‐ブランドオフ 代表取締役社長 兼 BRAND OFF LIMITED Director 兼 名流國際名品股九份有限公司 董事長の山内祐也氏は「開発においてもっとも重要なのは精度ではなく、AIを使ったサービスをお客様に届けることだった」と話している。

※10月1日からはコメ兵ホールディングス

──山内祐也氏

「目的のひとつは『ニセ物の排除』です。海外で多く作られている偽物の制度やスピードは年々上がっていきます。 より多くの方に安心して使っていただけるリユース市場の形成のため、『ニセ物の排除』は我々の使命であると考えています。

次に、お客様とのコミュニケーションの充実です。型番判定、真贋判定、状態チェック、買取金額の算出、金額の説明といった査定の流れのうち、型番判定と真贋判定という2つの作業をAIに任せることで、買取担当者はお客様とのコミュニケーション(査定以外の会話やより満足いただけるサービス)に気を配ることができると考えています。つまり、開発においてもっとも重要なのは精度ではなく、AIを使ったサービスをお客様に届けることだったんです」

「教師データの作成はしっかりできる」強みがある

「導入するにあたって苦労はあったか?」と聞くと、山内祐也氏は「『越えられない苦労はない』と思っています」と力強く断言した。

──山内祐也氏

「まだ導入したばかりで、これからバージョンをどんどん上げる必要があります。そのなかで、これから苦労はあると思います。ですが、幸い今までの段階では、さほど大きな苦労はありません。『越えられない苦労はない』と思っています。

AIを開発する際には『教師データが集まらない』という苦労をされる方もいらっしゃいますが、弊社は年間160万点の商品を流通させています。愛知県内に160万点の商品が通っていく商品センターがあります。ここを介せば、教師データが少ないといった課題は解決できます。

また、正確な教師データを作成するためには、その製品が『本物なのか』『ニセ物なのか』を見分ける力が必要です。弊社は社内に鑑定ができる人材を多数抱えています。このように『教師データの作成は間違いなくしっかりできる』という強みがあります。このような弊社の強みを使ってうまくスタートできました」

現状では精度に差はない、時間は新人よりAIのほうが速い

AIを活用した査定のイメージ

「人間とAIどちらが優秀なのか?」と聞くと、山内祐也氏は「現状では、査定については(人間とAIを比べて)決して人間が劣るわけではありませんし、精度にも差が出ません」とし、一方で「査定時間は、新人であればAIを使ったほうが速くなる」と語る。

──山内祐也氏

「現在、すでにAIで開発しているのは、ルイ・ヴィトンのモデル名や型式を判定する『型番判定』と、ルイ・ヴィトンの真贋を判定する『真贋判定』だけです。真贋の精度はかなり優位性があると思っています。モデルによっては、99%以上で真贋を判定できます。真贋を見分ける性能としては、圧倒的に強いと思います。

ですが、人間は新人とベテランでぜんぜんレベルが違います。弊社は教育カリキュラムがしっかりしており、eラーニングなども完備しています。現状では、査定については(人間とAIを比べて)決して人間が劣るわけではありませんし、精度にも差が出ません。

一方で、新人は鑑定に時間がかかります。新人がひとつの中古品を真贋判定するのに4分〜5分ぐらいかかりますが、AIを活用すると、平均して1分〜1分半ぐらいまで縮まります。真贋を判断する時間は新人より間違いなく速くなると思います。

また、現在はアプリの開発などを手がけておらず、『型番判定』と『真贋判定』を同時にしています。今後、このような状況を変えれば、査定時間は間違いなく短くなります」

社内を説得するには「動くものがあること」が重要

次は、ビジネス視点から、「AIの開発は高額なことが少なくないが、社内で同AIの開発・導入にどのように納得してもらったのか?」と聞くと、山内祐也氏は「われわれは(後で改良を見込んで、仕事をする大筋として作る最初の模型である)プロトタイプから始めました」と説明している。

──山内祐也氏

「いきなり社内で大きなポジションを取ろうとしても、なかなか通りません。われわれは(後で改良を見込んで、仕事をする大筋として作る最初の模型である)プロトタイプから始めました。『動くものがあること』が重要だからです。

私は経営企画本部に所属しており、経営に関わる管理もしています。『お金を使う側の気持ち』もわかるし、『お金を出す側の気持ち』もわかります。お金を出す側の心理を考えると、『技術として大丈夫なのか』『金額は妥当なのか』『事業として成り立つのか』といったポイントをクリアしなければいけません。

そのような前提のなかで、最初は『やる範囲』をぎゅっと絞りました。ブランドもアイテムも絞って、アプリの開発やUIは後回しにして、とにかく動くものを少しでも作り、デモを実施しました。

基本的には、開発も(短い開発期間単位を採用し、実装とテストを繰り返して開発を進める)アジャイル開発です。プロトタイプで作ったものをちょっとずつちょっとずつ改善し、レベルを上げていきました。その都度、『これだったら、こういう事業できますね?』『ここまで投資しても良いんじゃないですか?』と、言葉のキャッチボールをしながら進めました」

名古屋本店では「AIを使ってほしい」という声も

AIを活用した査定のイメージ

「実際に、KOMEHYO名古屋本店で導入して、店舗から何か声はあったか? また、どのようなメリットを得られそうか?」と聞くと、山内祐也氏は「(同AIに関する)報道を見て、『AIを使ってほしい』というお客さまがいらっしゃいました」と話した。

──山内祐也氏

「(同AIに関する)報道を見て、『AIを使ってほしい』というお客さまがいらっしゃいました。一般の方からすれば話題性もありますし、興味本位もあるかもしれませんが、『より自分のお品物をよりしっかり査定してほしい』という想いがあってのご要望だと思います。実際、AIによる真贋判定は正確です。スタッフの査定とズレません。『お客さまに少しでも安心していただく』ということにつながっていると思います。

また、製品を査定に来るお客さまは『5万円で買ったものが、売るときはいくらになるのだろう?』『そもそも、これは本物なのだろうか?』など、不安を抱えています。とくに、初めてご利用になる方はそのような方が多いです。(AIを導入することで)AIに作業をしてもらって、スタッフはお客さまとの会話に時間を割き、その不安を取り除くことができます。

もともとの開発コンセプトにありますが、今ある人間の仕事をすべて置き換えるのではなく、『AIにできることはAIにやってもらう』と考えています。時間が短くなることによるメリットは、(人間は)人間が得意とする、会話をしてお客さまに安心してもらったり、違う知識をお話してお客さまに喜んでもらったり、といった形で現れてくると思います」

AIの精度やスピードだけで戦おうとは思っていない

最後に、「今後の展開はどのようなものを想定しているのか?」と聞くと、山内祐也氏は「われわれはシステムの会社ではないので、AIの精度やスピードだけで戦おうとは思っていません」と語った。

──山内祐也氏

「われわれはブランド品のリユースを通じて、『ニセ物をなくしていこう』や『安心して中古品を扱える状況を作っていこう』といった事業を手がけています。われわれはシステムの会社ではないので、AIの精度やスピードだけで戦おうとは思っていません。

コメ兵グループ(※)は日本で1番中古(リユース品)のブランド品を流通させている企業です。世界でも最大級であるのは間違いありません。また、弊社で取り扱う総流通はどんどん増えています。そのようななかで、AIが事業にどのように貢献できるのか、集中して考えていきたいと思っています。

社内では、さまざまなプランを考えています。まだ詳しく言えないことが多いですが、ひとつだけ言えることは現在の日本でのビジネスはもちろん、中国や北米などの海外に広がっていくなかでも、とくに教育や時間短縮については事業にとってプラスになるということです。

さらに、これからコメ兵グループ(※)が戦う場所は『リアル』から『ウェブ』にちょっとずつ変わっていきます。主戦場がオンラインになっているのは間違いありません。リアル店舗をどう使っていくのかというなかで、間違いなくAIを活用できる場所はあると思います。しかるべきタイミングで発表しようと思っています」

※10月1日からはコメ兵ホールディングス