以前はMAをうまく使いきれていなかった?ランサーズがシナリオ設計から立て直した、MA再稼働の裏側

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クラウドソーシングのプラットフォームであるランサーズ、ご存知ですよね。

実はMAを活用した課題の可視化、分析、解決と、MAツールをかなり効果的に使いこなしているんだそう。

今回お話を伺うのは、ランサーズを運営する、ランサーズ株式会社の大島 彰紘さん、板倉 美奈さん。

ランサーズでは以前からMA自体は導入していたそうですが、正直活用しきれていなかったんだとか。

一体どのようにしてMAツール再活用まで至ったのか、導入した満足だけで終わってしまいがちなツールだからこそ、気になるところです。

では、さっそくインタビューさせていただきます。

MA導入の経緯と導入してから見えてきたこと

―元々MAを導入しようと思った理由はなんでしょうか?

―大島
そもそもMAを導入したのは、異なる目的を持ったユーザーごとに適切なコミュニケーションを取れていなかったからです。

クラウドソーシングというサービスの特性上、総合デパートのようにライティングや開発など実にさまざまな案件があって、ユーザーごとのコミュニケーションも分ける必要があるんですけど、それができていなかったんです。

ランサーズはMA導入以前から会員登録、依頼、受注という3つのKPIを設定していて、それぞれを分析、それに対する施策もしっかりと打っていたということ。

ただ総花的になっていた結果、KPIも必然的に全体を指標にしている状況で、1つ1つの施策とKGIが結びついていなかったんだそう。

なので、それぞれの行動軸でKPIを設定する、というのがMAを導入したもう1つの理由なんだとか。

―大島
ランサーズのサービスラインはプラットホームと受託の二本柱になっているのですが、ユーザー側からするとわかりづらいということが課題でした。

それぞれのサービス担当者が片手間でやるという状態、さらに運用も属人化していたので専任の人がいなくて施策の振り返りもなく、放置されていることもありました。

もちろん効果をだしていた施策もあったそうですが、MAの最終的な出口が架電というのもあって、コスト的にも続かなかったそう。

MAのシナリオ設計って一番重要だと思うんですけど、そもそもシナリオとサービスのスタイルが合っていなかったというのもあって、MAを活用しきれていなかったんですね。

―大島
ただサービスのラインナップも増え、それにともないクライアント数も増えてきたので、このままじゃだめだな、と。

それで改めて今年の2月にシナリオを再設計して、MAツールの再活用に至ったんです。

マーケティング組織全体の課題を再定義、ソリューションとしてのMAツール

―実際にMAを再活用するにあたって、どのような取り組みを行ったのでしょうか?

―板倉
まず、MAをどのように使うかというよりも、ランサーズに訪れたユーザーはそもそも何がしたいんだっけ? というのをもう一度マーケティング組織全体の課題として捉え直そう、というWhatの再定義からリスタートしました。

というのも、プラットフォーム側のオンラインマーケティングと受託側のオフラインマーケティングは別軸で考えていて、リードの獲得も別々、結果的にかなり非効率なマーケティング施策を打っていたんですね。

―大島
それと役員陣から会員登録前の上流ファネルの離脱ユーザー数へのアプローチができていない、と指摘されたんです。

今までは新規ユーザーの獲得のための施策に力をいれていたんですけど、会員登録、依頼、受注という各ステップにポイントがあって、その3つのポイントの手前が一番のドロップポイントだった、というのが課題だったんです。

最終的なランサーの人たちへの価値提供を考えても、ランサーが案件獲得するには上流ファネルの離脱を防ぐことが重要と再定義しました

まとめてみると、

  • プラットフォーム側と受託側のマーケティングチーム、考え方、施策がすべて別軸で非効率。
  • 上流ファネルの離脱ユーザーへのアプローチが出来ていない。

この浮き彫りになった課題を、どのように普段の業務プロセスに落とし込んで解決したのでしょうか。

―板倉
まずプラットフォームとしての地の利を活かして、すでに会員登録済ランサー、訪問履歴のあるユーザーにユーザーインタビューを重ねて、具体的な課題を抽出するところから始めましたね。

会員登録ポイントの手前が一番のドロップポイントだったので、サービス未登録のユーザーにもインタビューを実施しました。

アンケートはもともとある仮説を基にした設計でしたが、実際に実施してみると自由回答がかなり多かったり、仮説以外の課題も見つかったんです。

アンケートの結果、webサイトやアプリが作りたいという多種多様なニーズはあって、コストメリットを感じてクラウドサービスにくるユーザーは多かったんだそう。

やっぱり仮説というのはあくまで仮説で、本当はどういうニーズがあるのか。調べるような作業とかって本当に大事ですね……。

―板倉
なのでカテゴリの中でニーズがある優先順位が高いものを選択して、個々のペルソナ、ニーズに合わせて設計したカスタマージャーニーを設計し、資料ダウンロードやユーザーの課題解決に適したソリューション、サービスを提供するようにしました。

クラウドソーシングでは業務プロセスが煩雑になったりと、そもそも発注内容としてクラウドソーシングが向かないようなクライアントさんもいたりする、だからこそカスタマージャーニーを設計することが重要になるそう。

むー、ここまで生々しい話を聞けると非常に勉強になります。

MAツールでサービス横断の課題を解決。スピード感を保つ組織設計

―課題を可視化し、カスタマージャーニーを設計した後に、どのように運用プロセスまで落とし込んだんでしょうか?

―大島
まずマーケティングチームがプラットフォーム側と受託側で分断されていたので、そこを全社横断的な横串の組織にしたんです。

全社横断的な組織に改変することで、今まで起きていた障壁(例えば権限や承認フローなど)を仕組みとしてクリアにできるので、スピード感を保った組織になるんですね。

サイト改善や施策改善する際にはそういった障壁は避けられませんよね。

分断されていたときには、新しいページや機能を作ろうとすると1ヶ月、またはそれ以上の工数がかかっていたそう。

ただランサーズは開発サイクルにMAを導入することでそういった課題も解決できたそうです。

―板倉
MAを導入してからはABテストができるので、1週間でスプリントをきって、継続的なインテグレーションで開発サイクルを回すことができています。

これができるのはMAだからこそですね。

今までは開発をエンジニアに依頼して、ディレクターはワークフローを作成という役割分担で、コミュニケーションロスが発生しがちだったんだとか。

それがMAによってすべてディレクターマターで実装までカバーできるようになったのはすごいです。

―板倉
マルケトならページの基本のフォームテンプレが十何種類もあるので、文字の入れ替えなど簡単な修正だけで本番に反映できるんです。

運用者側に権限と開発知識が不要で、リリースまでディレクターマターで運用できるんですね。

MAを活用することで、実際に受託サービス事業部のリードナーチャリングからセールスチームへの見込み確度の高い案件の受け渡しができるようにして、クロージングの受注率、商談率も上がった、とのこと。

―大島
成果をだせたのは、サービス上でリードの予算と行動履歴を可視化できてた、というのがあります。

あとはMAを導入した、というよりは、MAを使ったPDCAを回す業務フローに変えたからこそのインパクトだと思っています。

プラットフォーム側ではユーザーインタビューの結果をもとにシナリオを作り、クライアントに送信するメール内容を再設計、その結果なんとKGIである依頼率が15ポイントも差があったんだそう。

導入した直後はMAを活用しきれていなかったランサーズさん、MAを中心に添えて組織も再設計、シナリオも再設計、簡単なことではないですがやはりMAを使いこなすと結果がついてくるんですね。

マーケターとしてあるべき姿は「ユーザーの代弁者」であること

―今ではかなり効果的にMAを使いこなしているということですが、MAを再活用したことから得た学び、今後想定しているアクションなどお聞きしたいです。

―板倉
数字として結果はでていますが、本来はユーザーが何も考えなくても欲しい情報が手に入る、というのがあるべき姿だと思っています。

なのでMAを使いカスタマージャーニーを設計して、メールを送信したりして人工的にユーザーをCVまで誘導しているのは、あるべき姿からはまだ遠いです。

本来あるべきユーザー体験を考えるランサーズさん、次のステップとしてサービス全体の情報設計の見直し、ユーザー体験フローの再構築に今まさに取り組んでいるということです。

―大島
我々は、マーケターとしてあるべき姿は「ユーザーの代弁者」であると考えています。

自分自身がサービスのペルソナたれと。

マーケットインとかマーケティング4PはユーザーのためのHowの1つでしかないので、最終的にユーザに対して本質的な価値を届けることを目指しています。

なるほど、ユーザーの代弁者、すごく良い言葉です。

MAツールは導入自体も設計もかなり大変で、実行はそれよりさらに大変だ、と言う大島さん。

施策の結果が悪いときももちろんあるけれど、その数字が見えることがまず素晴らしくて、それが次のアクションに繋がる材料になる、ということです。

短期的な結果で一喜一憂するのではなく、MAを使うことで悪い結果がでればむしろそこからさらに改善できるので、結果が悪かったのはむしろ悪いことではなく、良いことであるという考え方ですね。

MAに限らず、マーケターとして参考にできることが多いインタビューになりました。

大島さん、板倉さん、お忙しい中ありがとうございました!