東京大学と大阪大学が共同でAIの即戦力人材を育成する講座「LEARN.AI 実データで学ぶ人工知能講座」。その2019年度前期の募集締切が1月31日(木)に迫っています。
AIの即戦力人材を育成する「LEARN.AI」とは
この講座では、ディープラーニングや機械学習といった技術も盛り込みつつ、AI全般を理解し、データの利活用を推進する人材を育成します。共同開講の大阪大学では大学院レベルの講座が提供されますが、東京大学の講座では、
- 人工知能の基礎
- 知能表現と
- 知能表現と論理
- 探索と推論
- 学習と認知
といった学部レベルの学習を通じ、コンピューターが人間と近い振る舞いをするにはどのようなメカニズムが必要かを理解していきます。
また、個人情報保護や権利保護の問題をクリアした、実社会で収集されたリアルなデータを使用でき、受講者はより実践を想定して学ぶことができます。
講義の概要は以下の通り。およそ半年かけて基礎から学んでいきます。
- 人工知能基礎
知能の原理と認知科学、 論理とAI、記号主義と幾何学的推論、ゲームとパズルの探索、学習と推論、ニューラルネットワーク、最適化とメタヒューリスティックス - 統計的機械学習
線形回帰、分類アルゴリズム、k最近傍法、ロジスティック回帰、モデル選択、正則化、非線形モデル、サポートベクターマシン、決定木、教師なし学習
- 自然言語処理(NLP)
単語の分散表現、リカレントニューラルネットワーク、言語モデル、品詞タグ付け、構文解析、畳み込みニューラルネットワーク、文書分類、機械翻訳、質問応答 - コンピュータビジョン(CV)
特徴抽出、畳み込みニューラルネットワーク、物体認識、物体検出、画像検索、領域分割、画像生成、行動認識、顔画像認識、画像・映像記述(言語融合)
広く提供されている人工知能処理用APIについての活用の紹介
抽象的な理論や概念だけでなく、すぐに使えるAPIについての講義もあり、AI導入現場での即戦力を育てるカリキュラムであることが伺えます。
受講には自己推薦書による選考、プレイスメントテストが必要
講義の流れ
出典:LEARN.AI
講座を受講するには、自己推薦書による選考後、コンピューターサイエンス分野のプレイスメントテストが行われます(要自分のPC)。これによって受講者の知識とスキルを測り、結果に応じて補講を実施します。
AIを使った問題解決の技術を身に着けることを希望することと、Python/C++/Javaまたはこれに類する言語の経験者であることが応募資格として必要になります。
試験に含まれる内容は以下の通り。
- アルゴリズム
・1時間程度
・アルゴリズムとデータ構造の基礎に関して出題 - コンピュータシステム
・30分程度
・CPU アーキテクチャ、メモリ階層、インターネットなど、コンピュータシステムの概要について質問 - プログラミング
・1時間30分程度
・Pythonを想定しています
・簡単なファイルおよび文字列の処理のプログラムを書く
受講料は無料。定員は40名と少数なので、応募が殺到することが予想されます。募集期間は1月7日〜1月31日。興味のある方はこちらから申し込めます。
AI分野の修士修了者は年間わずか900人。社会人教育の必要性
LEARN.AI ホームページで、東京大学 情報理工学系研究科 教授 萩谷昌己氏は、以下のように指摘しています。
社会の各所において人工知能人材が求められています。経産省の調査によれば、現状の約10万人に対して、新たに2万人程度の人材が必要とされています。一方、RU11(日本の11の研究大学からなるコンソーシアム)に限定した調査ですが、人工知能分野の修士課程修了者は年間900人弱にとどまっています。
したがって、大学教育の拡充とともに、社会人教育の必要性が強く認識されています。さらに、人工知能技術には特に他分野との融合が期待されており、情報学を専門としない人材への教育の重要性も認識されています。
出典:http://learn-ai.org/message
先日、金沢工業大学がAIの基礎科目を全学部全学科の必修科目にするニュースがありましたが、依然として大学で機械学習やデータサイエンスを学ぶ人は、萩原教授が指摘するようにまだ少数派と言えます。
AIのビジネス実装が進んでいる現在、AIにおける基礎知識のニーズが高いのはもっぱら社会人。多くの企業が右も左も分からないまま「とりあえずAI」で導入を検討している今、コンピューターサイエンスの基礎から学ぶ講座はビジネスサイドからも大きなニーズがあるでしょう。
特筆すべきは、東大は松尾研を筆頭に、AI・データサイエンスの講座を無償公開を連発していること。2018年にはLedge.aiで取り上げただけでも4つのコンテンツが無償公開されています。「社会人向け」と打ち出している講座もあり、ビジネスサイドのニーズに大学が応える形になっています。
東大松尾研が「Deep Learning基礎講座演習コンテンツ」を無償公開
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松尾研監修のディープラーニング無償オンラインプログラム「DL4US」が募集を開始
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今後AIが世の中の「当たり前」になるにつれて、文理問わずAIが基礎教養になる時代が来ます。早めに行動しておいて損はありません。