LINEがAIを軸として生活インフラに一層溶け込もうとしている

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LINEとヤフー(Zホールディングス)が経営統合に関して基本合意した、というニュースは多くの人の耳に届いたことだろう。

この経営統合によって目指すのは、メディア、コマース、フィンテックなどのさまざまな事業でシナジー効果を発揮させ、成長させていくことだとされる。

そしてこのシナジーの行きつく先はAI(人工知能)事業だ。経営統合に関する記者会見でも「AIを基軸に積極的な中長期投資を行ない新たな価値を創り出す」と説明されていた。

LINEとヤフーの経営統合で世界をリードするAIテックカンパニーを目指す
画像出典:Zホールディングス株式会社(外部サイト)


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経営統合に関しての基本合意を発表する直前、11月15日に開催の「MOBILITY TRANSFORMATION 2019」でLINEのAI事業に関するカンファレンスが実施された。ここでは、LINEが目指すAIの展望が明かされた。

需要が高まるとされる音声認識が可能なカーナビ

LINEのAIといえば、AIアシスタント「Clova」だ。スマートスピーカーのひとつで、話しかけることでコミュニケーションアプリ「LINE」でのメッセージの送受信や、「LINE MUSIC」で音楽を再生などができる。いわゆる音声認識による機能だ。

このClovaは、今年9月からサービスを開始した「LINEカーナビ」にも搭載され、自動車の走行中も“声”でカーナビを操作できる。

LINEカーナビは、話しかけるだけで操作できるのが最大の特徴だ
画像出典:「LINE カーナビ」公式サイト(外部サイト)

「古くから、声によるナビ操作は普及することを目指されていたが、音声認識の精度向上などによってやっと実現できるタイミングが来た」とLINE 中村 浩樹氏は語る。

LINE株式会社 Clova企画室 室長 中村 浩樹 氏
編集部撮影

LINEカーナビのサービス開始から約2ヵ月。アプリで行なわれている全操作のうち、半数以上が“音声”での利用だ。利用者からも、自動車と音声操作の相性がいいと言われているという。また、後部座席からもナビ操作できるのも音声ならではのメリット。ドライバーがナビから流す音楽が好みではないときに後部座席から変更する……といったこともできなくはないだろう。

音声によるカーナビ操作は、今後さらに需要が高まる見込みだ。今年12月1日から道路交通法が改正され、運転中にスマートフォンを持って通話をしたり、メールなどを確認したりする「ながら運転」が厳罰化される。

改正前の11月30日までは、運転中にスマホの画面を注視していると、違反点数は1点で5万円以下の罰金などとなる。また、交通の危険とされた場合、違反点数は2点で3ヵ月以下の懲役もしくは5万円以下の罰金を科せられる。

これに対し改正後の12月1日からは、画面の注視による違反点数を3点に引き上げ。罰則は6ヵ月以下の懲役または10万円以下の罰金などに重罰化する。交通の危険とされる場合にいたっては、違反点数は6点にもなり、罰則は1年以下の懲役または30万円以下の罰金だ。免許停止(免停)の前歴がない場合でも、違反点数が6点になると30日間の免停になる。端的に言えば、道路交通法の改正後は以前よりも違反点数が3倍重くなる。

この改正により、ハンズフリーで操作できるカーナビは、ながら運転厳罰化の追い風を受けそうだ。Clovaを搭載したLINEカーナビは、ナビとしてだけでなく、LINEメッセージのやり取りもできるなど、さまざまな活用も可能なためアドバンテージは多いだろう。

生活に「LINEというプラットフォーム」を溶け込ます

だが、LINEがAIで目指すのは「カーナビの使い勝手の向上」だけではない。あくまでもLINEカーナビは“LINEというプラットフォーム上のひとつ”にすぎない。

LINEが目指しているのは“トータルでの体験”だ。LINEのプラットフォームで使えるサービスに横のつながりを強固にしていく。

カギとなるのは、LINEカーナビに加えて、「LINE Search」「LINE AiCall(LINE BRAIN Project『DUET』)」「LINE Pay」だ。

LINEのプラットフォーム上で体験できる一連の流れ
編集部撮影

「LINE Search」は検索エンジン事業。過去に一度撤退したものの、今年6月から検索エンジン事業に再参入。LINE上で検索エンジンを使えるというものだ。

次にLINE BRAIN Project「DUET」(サービス名「LINE AiCall」)。これはLINEが開発中の“飲食店の予約管理サービス”のこと。利用者が電話するとAIが人間のように電話応対するもので、いずれは予約管理の完全自動化を目指している。

そして「LINE Pay」。LINE上で決済などが可能なキャッシュレスアプリのひとつ。すでに利用者も多いだろう。

これらのLINEサービスはそれぞれの親和性が高いと言う。LINE Searchで気になる飲食店を検索。LINE AiCallで予約し、LINEカーナビで道案内。そして飲食店の支払いはLINE Pay。こうした一連の体験をつくることをLINEは目指しているそうだ。

つまりは、生活インフラにLINEが溶け込もうとしているのである。

ヤフーとの統合の先にあるもの

LINEが目指している生活への溶け込みという観点では、先日のヤフー(Zホールディングス)との経営統合は大きな一歩を踏み出すことになりそうだ。

ヤフーが持つサービスはLINE同様に豊富だ。また、大きなシナジーを持つサービスも数多い。それこそ、カーナビ事業ではヤフーも「Yahoo!カーナビ」を展開中。また、キャッシュレス事業においても、ヤフーは「PayPay」という最大規模の事業を抱える。

豊富なサービスと、それぞれの利用者規模が多いことは、AI事業においても大きなメリットだ。多くの人がサービスを使うことで、多くの人に利益をもたらせるかもしれない。たとえば、Yahoo!カーナビとLINEカーナビのそれぞれで集めたデータをもとに作る渋滞予測は、かなり高精度な内容になりそうだ。

LINEとヤフーそれぞれがもつサービス群
画像出典:Zホールディングス株式会社(外部サイト)

現時点ではPayPayとLINE Payをはじめ“競合サービス”も多いが、両社の統合によって我々が得られるモノも多いはず。具体的なそれぞれが持つサービスの行く末は、実際に経営統合をする2020年10月ごろにならないと不明だ。

いずれにしても、両社の今後の発表や展開は「AIテックカンパニー」を目指すという観点からも注目していきたい。