2020年、LINEはGAFAと被らないAIのニーズを取り切る

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LINEは1月21日、メディア向けセミナーを開催し、同社のAIのBtoBの外販事業「LINE BRAIN」の目指すビジョン、今後の戦略について発表した。

また、同セミナーにおいて、LINE BRAINのSaaSプロダクトとして初のサービスインとなる「LINE BRAIN CHATBOT」、「LINE BRAIN OCR」の提供を1月22日から開始すると明かされた。



LINEの「スマートポータル」戦略

LINEの成長戦略の柱として「スマートポータル戦略」がある。これは、すでに大きく事業成長に貢献しているLINEアプリ上の広告・コンテンツ事業を柱に、今利益を生んでいるわけではないが重要な位置づけとなる「フィンテック」「コマース」「AI」といった分野で研究開発を行い、既存の事業にフィードバックしていく戦略だ。直近の収益性だけではなく、研究開発でもGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazonの総称)に対抗していく。

同社が研究開発で培ってきたAI技術を、外部企業等に向けて提供するサービスとしての位置づけが、AIソリューション事業「LINE BRAIN」だ。昨年行われた同社開催の「LINE CONFERENCE 2019」で発表された。

「AIカンパニーになる」とヤフーとの統合会見で宣言したLINE。AI事業を統括する砂金信一郎氏は、「AIの精度ですごいとアピールするつもりはない」と意気込んだ。

――砂金
「あくまで重要なのは技術そのものではなく、技術を使って生活上の課題を解決できているか。LINEは技術オリエンテッドではなく、課題解決型のアプローチを徹底していきます」

具体的にLINE BRAINのラインナップは、チャットボット、OCR(⽂字認識)、⾳声認識・合成といった技術だ。

たとえば、レストランの受付を音声対話のみで完結させる「LINE AiCall」の実証実験を昨年から「俺のGrill&Bakery 大手町」で開始したり、「LINE DEVELOPER DAY 2019」での顔認証受付を実施したりなど、上述の技術の実⽤化に向けた実験・開発を進めている。ちなみに、顔認証受付は今回のメディア向けセミナーでも一部導入されていた。

LINEが持つAI技術の特徴は、「コミュニケーション」の領域が大きい。砂金氏は、例としてキャラクターを召喚して会話を楽しめる装置「Gatebox」で召喚できるキャラクターである「逢妻ヒカリ」を挙げる。逢妻ヒカリの音声には、LINE BRAINで開発・保有する音声合成技術が採用されている。

――砂金
「ヒカリちゃんに搭載されている音声合成では、感情を共にしたい、結婚したいくらいの没入感を持たせるにはどうしたらいいのかという点に徹底的にこだわっています。Natural Experience with AI=優しいAIと呼んでいますが、人に寄り添うAIを提供していきたいと考えています」

▲LINEの持つ技術ポートフォリオは幅広い

昨年末のLedge.aiの取材では、「GAFAからこぼれ落ちたニーズを拾っていく」と砂金氏は語っていた。提供する技術は新しいものではないにしろ、GAFAが日本語に対応してくるのは時間がかかる。グローバルベンダーが狙おうとしても時間がかかる日本語という、ある種ローカルな言語での事例を増やし、マーケットを取り切る戦略だと言える。

研究開発で培った技術を活かした「LINE BRAIN CHATBOT」と「LINE BRAIN OCR」

セミナーでSaaSとしての提供が発表されたLINE BRAIN CHATBOTは、最新の機械学習アルゴリズムと⾃然⾔語処理技術に基づく強⼒な対話エンジンを活用したチャットボット。同社いわく、業界最⾼⽔準の正答率を誇るそうだ。

無料で使える「Trialプラン」、⽉5万円の基本利⽤料で利⽤できる「Commercial プラン」が用意されている。

LINE BRAIN OCRは、国際会議ICDARで世界 No.1の認識精度を獲得している。斜めになった⽂字、歪んだ⽂字でも⾼い認識精度を誇る⽂字認識技術を無料で利用できる「Free プラン」をはじめ、読取枚数に応じたプランが用意されている。

LINE BRAIN CHATBOT、LINE BRAIN OCRともに、LINE BRAINの公式ウェブページを通じて申し込みが可能だ。

チャットボットとOCRだけでなく、Speech to Textや音声認識、画像認識などの分野も現在研究開発中で、2020年秋までには何らかの技術的アップデートが見込まれるという。LINE BRAINのAIをデリバリーするパートナーも現在募集中だ。

2020年LINEが目指すのは「社会実装」と「LINEサービスとの融合」

LINEが2020年に目指すのは、「社会実装」だ。すでにPoC(Proof of Concept…概念実証)に取り組んでいて、ひととおり失敗まで経験している企業が多くなってきた今、AIをどう社会に浸透させていくかは大きな課題となる。

――砂金
「みんなPoCには飽き飽きしていると思うんです。LINE BRAINとしてこれから出すプレスリリースは、ほぼすべてが事例になると思います。AIを『世の中の当たり前のもの』として実装していきます」

加えて、「既存のLINEのサービス」とAIの深い融合もLINEは狙う。冒頭で紹介したLINEのスマートポータル戦略のキモの部分となる。クライアントや外部のパートナー企業と連携して“鍛え上げた”AIを、LINEのファミリーサービスに埋め込んでいくという。