1万5千時間を削減するマンション価格査定AI 東急リバブルとRistが開発

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さまざまなアナログ業務が残る不動産業界で、データサイエンスの力を使って経験者の「勘と経験」から人々を解き放つ――――。

東急リバブル株式会社と株式会社Ristは「マンション価格査定AI」を開発し、東急リバブルの店舗で2022年初頭から首都圏の売買仲介店舗の業務に組み込む予定だと発表した。査定担当者と同等水準の価格査定ができるだけでなく、AI自身が査定担当者に確認を促す機能(自信度算出AI)も備えている。

マンションの価格査定には、いくつもの複雑な変数が絡み合う。査定担当者は対象マンションや周辺エリア、近隣の取引事例に関する情報を収集・分析し、市場動向や過去の取引事例と比較したうえで重み付けをしてはじめて価格をはじき出す。東急リバブルは首都圏エリアで年間3万件以上のマンション価格を査定しており、かかる業務時間も年間1万5千時間にのぼっていた。

今回発表された「マンション価格査定AI」は、RistのKagglerが1000件を超える学習データからモデルを作成。東急リバブルの一般的な査定ルールの適用と、はっきりとしたルール化が難しい査定担当者の経験則(暗黙知)による判断の両方を兼ね備えたシステムだ。検証用データを使った実験では、誤差を2%未満(MER 値(※)1.98 %)に抑え、東急リバブルの査定担当者と同等の水準で査定価格を算出した。

※MER値(Median Error Rate:誤差率の中央値)MER値が小さいほど推定精度が高い

【検証結果】
誤差率) 中央値(MER 値):1.98%
平均値:2.47%
最大値:7.96% 最小値:0.02%

検証例) 東京都目黒区 72.00 m² 3LDK
東急リバブル査定担当者:89,320,000 円
マンション価格査定AI:87,594,372 円 誤差 1,725,628 円(1.97%)

このAIの活用で、前述の1万5千時間の業務削減を見込む。

過去のデータが少ないレアケースの査定にも対応する。近隣の取引事例が少ない、もしくは比較事例と類似性が低い場合は、AI側が「査定結果に注意すべき」と判断して査定担当者に通知する。難易度が高い査定は人の判断を入れることで、査定の品質を担保する。

リリースによると、首都圏店舗を皮切りに全国での売買仲介店舗への導入も予定している。今後は2社での土地・一戸建の価格査定AI開発(マンションよりも査定難易度が高いと言われる)の開発や、システムのサービス化(外部提供)も検討していくという。

>>プレスリリース