AI×行動学?研究者の負担を軽減し、生物の行動を分析する技術をコロンビア大学が発表

このエントリーをはてなブックマークに追加

みなさんは、行動学ってご存知ですか?

対象の生物を注意深く観察し、行動の規則性を見出す学問です。しかし、これまでは研究者が目視で長い時間をかけて、生物を観察しなければなりませんでした。

しかし、人間が長い時間集中力を保って観察し続けるのは、パッと想像するだけでも大変そう。デメリットを挙げると……

  • 人間が長い時間をかけて観察しなければならない
  • 精神的に辛い
  • 主観、偏見がある
  • 見落としがおきる

このようにさまざまなマイナス面があります。そうしたことを防ぐために一つの動きにのみ注目してしまい、間違った解釈をしてしまうことも。

コロンビア大学は、そうした今までの行動分析のデメリットに対する対策として、カメラを設置し、AIを使って生物の観察をおこなったそう。

今回、その観察の対象に選ばれたのは、ヒドラという生物。聞きなれない名前ですが、クラゲ、サンゴ、イソギンチャクと同じ刺胞動物に属しています。

今回は、その研究を通して、行動学と機械学習の相性について見ていきましょう。

人間の観察は再現性が低い

コロンビア大学は人間による観察の再現性の部分に注目し、ある実験をおこないました。

以下は、2人の研究者がヒドラの行動を6つの基本的な行動に分類したときの違いです。

aは横軸が時間。縦軸がその時間におけるヒドラの行動を表しており、赤、青はそれぞれ違う観察者が観察したものです。

bでは縦軸に観察者1が確認したヒドラの行動を、横軸には観察者2が確認したヒドラの行動を表しており、色の濃さでマッチング具合を表示しています。

全体のマッチングは52%となっており、やはり小さくないズレが生じてしまいます。

このような観察者同士でのズレをなくすために、機械学習が使われました。

機械学習でヒドラの行動を観察

今回の実験でヒドラが使われたのは、神経回路が単純で、体が透明なため、映像による神経系の分析が可能であったためです。

ヒドラのくねくね、回る、伸びる、曲がるといった動きを観察し、それらの行動がどう神経回路と関係しているか、機会学習をもちいて調べました。

主にAIで自動的に分析し行動にラベルをつけるといったもので、具体的には以下のとおり。

  • 映像を撮る
  • 動き、形の特徴を捉える。
  • その動きのカテゴリがなければ、カテゴリを作る
  • カテゴリに分類する

このとき、2つの方法によってパターンを見つけ出し、分類は行われています。

1つ目は、があらかじめ分類した例をもとにパターンを見つけ出す方法。2つ目は、AIが自ら新たなパターンを見つけ出す方法です。

この2つの学習方法によって人の見落としも防ぐことができます。

これらの観察によって分かった結果は以下のとおりとなっています。

  • 6つの基本的行動で成り立っている。
  • 環境には依存しない(明るさなど)

実際にAIによる観察で結果まで導き出せています。

ここで人間がおこなうのは、観察をもとに分類されたものを分析するだけ。やはり、大幅な労力の削減になっています。

機械学習と観察の相性の良さ

今回の研究ではヒドラを対象に行われましたが、技術の発展により、ヒドラに限らず機械学習による観察を行うことは可能になってきそうですね。

AIを活用することで、人間がこれまでかけていた時間、労力を減らし、かつ観察の精度を高める。とても相性が良さそうですし、今後ほかの分野でも、AIを使った研究が行われていくことが十分考えられます。

Ledge.aiでは主にビジネス面でのAI活用をご紹介していますが、アカデミックな分野でも今後活用が進んいくといいですね。

参考論文
Shuting Han, Ekaterina Taralova, Christophe Dupre, Rafael Yuste (2018) “Comprehensive machine learning analysis of Hydra behavior reveals a stable basal behavioral repertoire” eLIFE, Columbia University, United States