マンガ特化の多言語翻訳システムが登場 AIで制作時間を半分削減

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©️Kuchitaka Mitsuki

海外における日本マンガの売上はおよそ1400億円規模(Mantra株式会社による)だが、そのうち制作者に還元されるライセンス売上は110億円、わずか8%だと言われている。その理由は莫大な翻訳・流通コストだ。翻訳・流通を行う間に海外では海賊版が出回る恐れもあり、これがマンガの海外展開を妨げる一因となっている。

そんな中、Mantra株式会社は7月28日、マンガに特化した多言語翻訳システム「Mantra Engine」の正式版をリリースしたことを発表。対応言語は英語・中国語(簡体字)から開始し、順次追加を予定している。

>> プレスリリース

従来のワークフローに比べ半分の時間で翻訳版制作が可能に

Mantra Engineはマンガの高速な多言語展開を可能にする、出版社およびマンガの制作・配信事業者を対象にした法人向けクラウドサービス。マンガの翻訳版制作に関わるほぼすべての作業をブラウザ上で可能にすることにより、簡便な操作性と、関係者全員で進捗を共有できる利便性を実現している。

具体的には、マンガの画像を直接ドラッグアンドドロップし、システムに入稿するだけで、マンガ文字認識エンジンが自動的に吹き出し内のセリフを認識し、機械翻訳を行う。システム内のエディタで翻訳されたテキストの修正、文字の位置調整や太字・斜体の適用といった編集作業も可能だ。

これまでマンガの多言語・自動翻訳は、特殊なフォントや話し言葉が使われている点や、複雑な文脈を汲み取る必要がある点など、技術的な難易度が高かった。Mantra Engineでは、これらの点を文字の変形に頑健な日本語文字認識技術と、マンガ画像からの大規模な対訳コーパスによって解決している。

また、独自開発のマンガ専用の機械翻訳技術と、プロの翻訳者による修正・校閲をシステム上で組み合わせることで、従来の翻訳版制作のワークフローと比較して約半分の時間で翻訳版の制作が可能になったという。

価格は使用量に応じた従量課金プランのほか、より初期コストを抑えることが可能な協業プランも用意されている。具体的な価格、試用などの問い合わせは info@mantra.co.jpまで。

機械翻訳における対訳コーパスと、それを集める仕組みの重要性

一般的に、機械翻訳の精度を上げるには、対訳コーパスの量と質をいかに確保するかにかかっている。対訳コーパスとは、2言語間での大量の訳文テキストをデータとして構造化したものだ。これをAIに学習させ、精度を高める。

昨今、驚異の翻訳精度で話題となっている機械翻訳「DeepL」でも、訓練データを集めるエンジンと、それによって集められた訓練データが競争優位性になっていると言われている。

Mantra Engineにおいても、マンガ画像からの大規模な対訳コーパスと、それを自動的にマンガ画像から獲得する仕組みを保持しており、これが競争優位性となっているのだろう。

DeepL、Mantraともにベンチャー企業だが、データを収集し貯める工夫をして、GAFAなどのテックジャイアントを超える精度のサービスを提供している。今後も、少なくとも機械翻訳においては、データを抑えたプレイヤーが勝つのは間違いない。