日本のAI医療が動き出す。米国、中国に追いつけるか?

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昨年から今年初めに、AI技術を活用した医療機器の製造販売を、厚生労働省や第三者認証機関が認めたことがわかった(共同通信)。これにより、国内における医療分野へのAI活用は加速するとみられる。

日本のAI開発は米国、中国を追う状況に

現在、AI開発において、日本企業は完全に出遅れてしまったと言われている。AI開発に向けた中国政府の予算は年間約4,500億円と、日本の予算(約770億円)と比較すると約6倍。さらにAI分野へのグローバル投資額435億ドルのうち317億ドル、つまり全投資額の4分の3は中国が占めていると、2018年の中国人工知能産業年会にて、工業情報化部傘下・中国信息通信研究院の副所長・張雪麗氏は報告した。その差は歴然だ。

実際、中国を始め、海外において医療分野でのAI活用は顕著だ。人間の医師が15分〜20分かかる画像分析を、AIを用いて30秒以下で実行しレポート発行まで行うInfervisionはその代表だろう。Sequoia Capital Chinaのような主要投資家から総額約7000万ドルを調達しているInfervisionは、画像によるがん検知サービスを280の病院に提供している。

アメリカでは、米食品医薬品局(FDA)が、AI技術を搭載した診断装置を販売する許可をアイディーエックス(IDx)に与えた。特別な網膜カメラで撮影した画像を、AIアルゴリズムを使用して分析し、糖尿病網膜症について陽性か陰性かの結果を出すソフトウェアだ。

source:https://www.technologyreview.jp/nl/fda-approves-first-ai-powered-diagnostic-that-doesnt-need-a-doctors-help/

AI開発における動きは、米国や中国が注目されるが、他の各国でも活発化している。2018年3月、フランスは、中国や米国に追いつくべく、自国のAI開発のための新しい国家戦略を策定したことを公表した。AI研究開発の支援、スタートアップの奨励、データ収集のために、5年間で15億ユーロ(約1900億円)を費やす予定だ。

着実に進む国内研究開発は次のステップへ

AI技術を活用した医療機器の製造販売を、厚生労働省や第三者認証機関が認めたことからも、日本企業が中国や米国を追う準備は整ってきた。

2019年1月、東京大学先端科学技術研究センターの高橋宏知准教授を始めとする研究グループが、画像認識技術を活用し、脳波からてんかん発作を自動検出できるAI開発に成功したことを発表し、注目を浴びている。医療分野におけるAI技術を活用した動きは、国内でも活発だ。

日本では、人口1000人あたりの医師は2.4人。医師一人あたり400人以上もの患者を抱えている計算になる。医師の「目」が、AIに代替されることで解決されるメリットは

  • 医療施設における混雑の改善
  • 遠隔医療の促進
  • 属人的な診断ミスの解決

など、図り知れない。

また、SOMPOホールディングス株式会社、SOMPOヘルスサポート株式会社と株式会社東芝、東芝デジタルソリューションズ株式会社は、糖尿病などの生活習慣病リスクを予測するAIを共同開発している。SOMPOホールディングスグループのヘルスケアサービスについてのノウハウと、東芝グループのAI、ビッグデータ解析技術とを融合させるという。

今後数年でこれらの研究が順調に進んでいけば、AI技術を活用した医療を、一般の医療機関で受けられる日もそう遠くはないだろう

LINEも医療プラットフォーム構築へ動き出す

全世界で2億1,700万人以上の月間アクティブユーザーを抱えるLINEも、医療プラットフォーム構築へ動き出している。

LINEは2019年1月8日、オンライン医療事業を目的とした共同出資の新会社「LINEヘルスケア」を設立したと発表した。2019年中に、遠隔健康医療相談サービスの開始を予定しているほか、法整備の進展をみながら「m3.com」の薬剤師会員基盤を活用した処方薬の宅配サービスなども検討していく予定だという。

注目したいのは、2億1,700万人以上のユーザーを抱えるLINEが動く、という点だ。知名度が低いチャネルと、慣れ親しんだ「LINE」というチャネルからサービスが提供されるのとでは、大きく違う。また、LINEは国立情報学研究所との共同研究を開始すると、2017年11月に発表した。現在はAI技術を活用していなくとも、いずれ最先端テクノロジーありきになっていくのは目に見える。

AIを始めとした最先端テクノロジーは、LINEに限らず、FacebookやTwitter、TikTokの裏で使われている。ユーザーを多く獲得している企業やサービスの経済圏から、AIは着実に浸透を始めていくだろう。

source:https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000337600.pdf