尿路上皮癌を疑う病変を検出する病理AIの開発に成功|メドメイン

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メドメイン株式会社 は2023年3月27日、Deep Learning(深層学習)を用いることで、尿の液状化細胞診(ThinPrep)デジタル標本において、尿路上皮癌を疑う病変の存在をスクリーニングする人工知能の開発に成功したことを発表した。

研究の背景

同研究で対象とした尿の液状化細胞診は、尿路上皮癌が疑われた場合に行われるスクリーニング検査に位置づけられる。日本臨床細胞学会の2021年度統計によれば、尿細胞診検体数は全細胞診検体数の約28.5%を占め、細胞診検査において尿細胞診は婦人科細胞診についで検体数が多く、泌尿器科診療において重要な役割を果たしている。

尿細胞診標本の作製に関して、従来より行われている二回遠心法は標本の作製費用は安価である一方、標本作製の過程において多くの細胞が剥離してしまうという欠点があり、標本の判定の際に感度の低下を招き不利だった。そこで子宮頸部細胞診に広く応用されている液状化細胞診を用いることで、尿細胞診においても効率的な細胞収集が可能となり、現在では尿路上皮癌の検出率・診断精度の向上に有用な方法として広く認知されているという。

以上の臨床的背景を踏まえ、同研究では液状化細胞診(ThinPrep)デジタル標本において、尿路上皮癌を疑う病変の存在をスクリーニングできる人工知能を深層学習を用いて開発することにしたとのこと。

研究の内容

国内の施設から提供を受けたThinPrep法により作製された尿液状化細胞診標本をデジタル化し、細胞検査士および病理医によるアノテーションデータを含む教師データを作成した。

学習は、同社で2022年に開発した子宮頸部腫瘍性病変のスクリーニングモデル(文献:Cancers, 14: 1159, 2022)からのpartial fine tuning法による転移学習(文献:Proceedings of Machine Learning Research, 143: 338-353, 2021)に加え、複数の既存アーキテクチャを使用し、尿路上皮癌を疑う病変の存在をバーチャルスライド(Whole-slide image:WSI)レベルでスクリーニング可能な人工知能を開発した。開発した人工知能は、教師データとは異なる検証データを用いて精度の検証を行ったという。

同研究の成果

同研究成果のポイントは、バーチャルスライドレベルで標本内に存在する尿路上皮癌を疑う領域の推論を可能としたことで、スクリーニング用途などでデジタル化された大量の標本をシームレスに深層学習型人工知能で解析できるようになった点とのこと。

開発した複数のモデルを比較検討したところ、ヒートマップ法による評価の結果、子宮頸部腫瘍性病変のスクリーニングモデル(文献:Cancers, 14: 1159, 2022)を転移学習させた人工知能において最も腫瘍細胞を疑う領域の分別能が高くなった。具体的には、バーチャルスライドレベルでのROC-AUCが0.984~0.990、感度が0.940~0.960、特異度が0.929~0.946という極めて高い精度が得られた。またヒートマップにより表示された人工知能が識別した尿路上皮癌を疑う細胞については、複数の細胞検査士及び病理医による検証の結果、妥当であることが確認されたという。

以上のことから、尿液状化細胞診(ThinPrep)デジタル標本において、尿路上皮癌を疑う病変の存在を高精度にスクリーニングできる人工知能の開発に成功した。今後は、今回開発した深層学習型人工知能モデルの検証試験を複数施設ならびに大規模症例にて進めていくとのこと。

※この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業の結果得られたもの。

■メドメイン株式会社
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広報担当: pr-m@medmain.com

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