メルカリから学ぶ、事業にAIを導入する術

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2019年3月28日、株式会社メルカリはAI技術説明会を実施した。メルカリのAI技術はもちろん、登壇者の濱田優貴氏がAI開発の盛んな中国で製品を見て確信した開発の肝や、Googleの “AIをどう使うか?”というレクチャー・ディスカッションに参加して得た知見など、AIの事業活用を目指す企業には必聴の内容が語られた。

本記事ではメルカリAI技術説明会の内容をもとに、事業へAIを活用するために企業がすべきことを探っていく。

イベントのレポート記事はこちら

登壇者
濱田 優貴
メルカリ取締役兼最高製品責任者(CPO)


木村 俊也
AI Engineeringチームディレクター


山口 拓真
AI Engineeringチームマネージャー

AI活用にはやっぱりデータが大切

イベント冒頭、濱田氏は、世界のAIトレンド、そしてAI活用に必要なことを語った。

――濱田
「中国が成長したのは、圧倒的データ量での徹底的なモデルの作り込みを愚直にやってきたからです。“データが全て”とわかってはいるものの、なかなか動けない。しかし、中国はやることをやってきました」

瞬時かつ同時の顔認識や、人と区別のつかないコールセンターのAIオペレーターなど、中国産AIの性能を目の当たりにした濱田氏。正確なデータを大量に用意して地道に手を動かせば、本当につくりたい製品を実現できると確信を持ったそう。

濱田氏が参加したGoogleの“AIをどう使うか?” というレクチャー・ディスカッションでもデータの重要性が語られていたという。

――濱田
「AIを使ううえで考えなければいけないことは、

  • どのように安くカスタマーを獲得するか
  • どのようにLTVを最大化するか

の2つだと語られました。

この2つを達成するためには、達成に必要なデータが何かを考える必要があります。やはり、データが重要なのです」

低コストでカスタマーを獲得し、LTVを最大化するといっても、事業内容や顧客層により打つべきアクション、そのために使うべきデータは異なる。

目的に見合った正確なデータを大量に用意してモデルを徹底的に作り込むことが、AIを事業に活用するうえで大切なようだ。

AI人材の獲得とAIの民主化が必須

メルカリは、数十億規模の出品情報や購買情報といった膨大なデータを持っている。しかし、いくらデータがあってもモデルを実装する技術がなければ元も子もない

メルカリは、もちろんその準備も怠っていない。卓越したAI人材が揃っており、優秀な人材確保のため海外でも積極的に採用活動を実施している。

――木村
「現在は、データ収集、モデル作成、画像認識、テキスト分類の専門家が約20名、予測サーバ作成、モデル運用の専門家が約10名が在籍しています。さらに、2019年4月に10名、10月には20名が入社予定です」

また、カスタマーを獲得しLTVを最大化する方法を考える立場にあるのは、非エンジニアの人間であることも多い。

当然そういった立場にある人も、手段の1つとしてAI活用を考慮する必要がある。AIに何ができるのかという知識を持ち、戦略を立てていかなければならない。

――濱田
「メルカリでは、AIエンジニアだけでなく、バックエンドエンジニアや、非エンジニアもAIの知識を身につけるという、AIの民主化に取り組んでいます」

さらに、社員全員がAIを業務で活用できる未来を目指し、AIエンジニア以外でも簡単にモデルを作成、実装できる機械学習プラットホーム「Lykeion」の構築も進めている。

メルカリは、売ることに特化したAI戦略で他社との差別化を図る

データも人材も兼ね備えたメルカリ。顧客獲得にどのような戦略を立てAIを使っているのだろうか。

――濱田
「インターネットが普及して、アマゾンや楽天市場などが登場し、それまで街に出たり電話注文をする必要のあった『買う』という行為は簡単になりました。今度はメルカリが、AIを活用して売ることを簡単にしたい。

売るというハードルを極限まで下げ、『空気』のようにしていきたいです。そのために、出品から売るまでをAIで最適化する “Selling AI” という構想も検討しています」

出品から売るまでを最適化する “Selling AI”実現のため、商品が売れやすくなるように自動で価格を調節するといった機能の実装も検討しているという。

メルカリは顧客獲得のため「売るというハードルを極限まで下げる」という戦略をとり、実現のためのツールとしてAIを活用している。こうした確固たる戦略を持ったAIの活用法や、AI人材確保・育成の取り組みは、多くのAI導入を目指す企業の道標となるだろう。

現在でも簡単になっている売ることが、この先どこまで簡単になっていくのか、今後のメルカリの動向に注目だ。