日本マイクロソフト株式会社 業務執行役員 エンタープライズ製造事業本部 製造営業統括本部長 横井 伸好氏は3月15日、「製造業のデジタルトランスフォーメーションにおける最新の取り組み プレス説明会」のなかで、日本の製造業におけるDX(デジタルフォーメーション)の現状について「デジタル化という点に目を向けると、日本の製造業が世界のデジタル化をけん引している状況ではないと言わざるを得ない」と語った。
「世界経済フォーラムが発表する『ライトハウス工場』について聞いたことはあると思うが、デジタルの力を使った先進的なライトハウス工場は世界で90認定されており、実はそのうち日本の工場は2つだけだ。製造大国と言われた日本の競争力が改めて、新しいデジタルという環境下で問われている」
ここ2年ほどのコロナ禍を受けて、世の中の情勢が大きく変わった。横井氏は「ようやく日本の製造業のDXが本格化してきたというのが、日々お客さまと話していて感じている実感だ。多くの会社で中長期計画などにおいて『DX』や『サスティナビリティ』という言葉が1つの大きなテーマとして挙げられており、社内の推進体制も整いつつある」と語る。
一方で、「まだまだ本格的にすべて整って進んでいるという状況ではなく、『PoC(Proof of Concept/概念実証)』のような形で進み出したり、動き出したりしている状況だ」と現状を分析した。
日本マイクロソフトはこのような状況を踏まえ、ソニー株式会社や株式会社リコーなど大手企業を中心に製造業のDXを支援している。
数ある支援のなかでも、横井氏が「非常に引き合いがある」と語るのは工場や作業現場の従業員における働き方改革だ。ある顧客はタイの工場で新しいラインを立ち上げる際に、日本マイクロソフトのソリューションを活用することで、出張をせずに遠隔地にいながらラインの立ち上げに成功したという。
また、コロナ禍における社会変容を受けて、常に変化する可能性があることを前提としたサプライチェーン構築の必要性が認識された。横井氏によると、製造業ではサプライチェーン構築の立て直しに力を入れている企業が多いという。日本マイクロソフトはDX支援の文脈で、AI(人工知能)需要予想やシミュレーションなどで本取り組みも支援している。
日本マイクロソフト株式会社 執行役員 常務 エンタープライズ製造事業本部長 渡辺 宣彦氏は、昨今話題のDX人材に着目して、「活躍する人材のスキル獲得、個人がスキルを獲得するだけではなく大きなアウトプットを生み出せるような体制作り、ローコードを使った市民開発のような形でIT部門以外のビジネス部門も主体的になって『ものづくり』に取り組める環境作りという三本柱で、製造業のDX改革を支援したい」と語る。
実際、日本マイクロソフトの顧客の1つであるコマツグループのコマツ産機株式会社の従業員からは「機械学習のモデル構築では『Azure Machine Learning デザイナー』を使っています。われわれは高度なAIの専門知識やプログラミング技術があるわけではありませんが、正答率が高いモデルを作れるのは高く評価しています」などの声がある。