学ぼう、チャットボットの基本。導入時の課題や継続利用のポイントまとめ

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世の中のチャットボットへの期待は高く、これまで電話、メール、webフォームなどで行っていた問い合わせシーンのインターフェースはチャットに代替されようとする流れがあります。

すでにwebサイト、LINEの公式アカウントなど、いたるところでチャットボットが使われており、私たちの生活をより豊かにしてくれる可能性を秘めています。

しかし、導入により生産性向上を達成している企業を多数見る一方で、苦戦している企業も……

チャットボットは簡単に導入できて、AIが自動で言葉を学習してくれる―そんなイメージの中導入した(もしくは導入を試みた)ものの、

  • 思ったほど簡単ではなかった
  • 思ったほど正しく回答してくれない
  • 思ったほど使われない

この「思ったほど」に直面する企業も少なくないようです。

チャットボットは、正しく設計・開発をし、運用をすれば皆さんの業務の手助けをしてくれる存在になります。今回は、チャットボットを導入する際に直面しがちな課題と、スムーズな運用に繋げるための検討手順について、モビルス株式会社代表取締役社長 石井智宏さんに寄稿いただきました。

石井 智宏

1998年 早稲田大学卒業。
2009年 ペンシルバニア大学ウォートンMBA取得。
ソニー株式会社にて11年間ラテンアメリカ市場におけるセールスマーケティングに従事。国内投資ファンドにて執行役員に。ソニー元社長兼会長の出井 伸之氏が設立したクオンタムリーブ株式会社のエグゼクティブパートナーとして、多数の日本企業の海外進出を実行支援。2014年 モビルス株式会社に参画、代表取締役社長に就任。(現役)

2種類のチャットボット

チャットボットには応答のさせ方にパターンがあるということを始めにご説明しておきます。

今回登場するのは「ルールベース」型「機械学習」型です。ルールベース型のチャットボットは、人が設定したルール、またはシナリオ通りに応答します。それ以外の回答はしません。

もう一方、機械学習型のチャットボットは、「統計的に正解する確率の高い回答」をアルゴリズムの力で算出して回答します。

後述しますが、ルールベース型か機械学習型、どちらを選択するかの判断も重要なポイントになります。

チャットボットが抱える3つの課題

導入時のポイントに触れる前に、チャットボットの現場で実際に出てくる課題をご紹介します。

教師データ不足

チャットボットが抱える課題の1つ目は、機械学習型のチャットボットにまず用意する「教師データ(質問と、それに対して何を回答するべきかのデータ)」の不足です。企業によっては独自のFAQデータが揃っているケースもあります。

しかし、ベースとなるFAQデータはあっても、チャットボットに学習させるための仕様に整っている企業ばかりとも限りません。まずはそうした準備をすることから始める必要があります。

チャットボットの生命線は「正答率」です。チャットボットが自分の問いかけに的確な回答を返してくると人は喜び、継続利用に繋がります。反対に回答の精度が低いとがっかりしてしまい、利用しなくなってしまう恐れがあります。そのため教師データの用意は、回答精度に関わる大事な準備なのです。

また、エンドユーザーは自然とチャットボットに対して挨拶の言葉をかけることが多いです。それに対して「わかりません」と答えてしまっては、それこそがっかりされてしまいます。「こんにちは」や「こんばんは」のような最低限想定できる雑談も用意しておいた方がよいでしょう。ユーザーはチャットボットに対して「対話」という体験も期待しています。実はこうした雑談も大事です。

ユーザーに使ってもらえない

2つ目は、「導線の問題」です。せっかく作ったチャットボットをユーザーに見つけてもらえない、使ってもらえない。リリースしたはいいものの、想定よりもエンドユーザーに使ってもらえず、利用率が低いためにサービスを停止…。こうしたことも実際に起こっています。

企業側はとにかくチャットボットの中身、クオリティ面にのみ着目しがちですが、エンドユーザーとのタッチポイントの設計や見せ方、導線といったインターフェースの工夫も必要になってきます。

メンテナンス不足

3つ目は「メンテナンス不足」です。1つ目に「教師データ不足」とは言いましたが、初めから100%完璧なデータが揃っているチャットボットなどありえません。誰がどのような質問をしてくるかなど、全て予測することは不可能ですから。「教師データ不足」というのは予測可能な事象です。

だからこそ、定期的にメンテナンスをしながらデータを補うことが重要です。こうした地道に回答精度を上げていく行為をメンテナンス、またはチューニングや再学習と呼びます。チャットボットの正答率を上げるにはこのチューニングが不可欠なのです。

機械学習型チャットボットに限らず、ルールベース型のチャットボットでも同じことが言えます。顧客の要望を満たせなかったシナリオは、随時監視し、更新・改良していく必要があります。

効果を最大化するには、チャットボットのチューニングにどれほどリソースを割けるかがカギになります。

チャットボットの導入時に検討するべき4つのこと

さて、そんな課題に当たらないためにも導入の際の検討手順が重要です。

目的の策定

チャットボットもいわば一つのビジネス上の施策です。コスト削減のために導入する企業もあれば、顧客満足度向上のために導入する企業もある。ブランディングのため、または売上向上のための接客ツールとして導入する企業もあります。

「うちのチャットボットは何のため?」がはっきりしていれば、設計上さまざまな選択をする際の「根拠」になります。まずはチャットボット導入のゴール設定をしましょう。

「機械学習」型か「ルールベース」型か

次に、チャットボットの応答のさせ方を検討する必要があります。

AIによる機械学習、とりわけディープラーニングという単語が「バズって」いますが、チャットボットの領域においては機械学習型とルールベース型、どちらの方が優れているといった優位性はないと考えています。

こちらも、チャットボット導入の「目的」に合わせて選びましょう。ルールベース型にすれば、そもそも教師データ不足という問題は起こりませんね。

ルールベース型は、FAQの回答など、一問一答形式や、決まっているフローがあるチャットボットに適していると言われています。一方、機械学習型は「こんにちは」「おはよう」など、より会話的なチャットボットにする際に選ばれます。また、一問一答形式でもより広い言い回しを認識した上で正しい回答を導き出すことができます。

インターフェースの選定

インターフェースの選定とはつまり「どこにチャットボットを出現させるか」です。
webサイトの右下にぴょこんと現れるのが「web小窓」。LINEアカウントもインターフェースのひとつです。技術的には(ほぼ)あらゆる場所に登場させることができますが、ここでも「目的」に合わせて選ぶ必要があります。

知名度がないままLINEアカウントを作っても、友だち追加につながらないかもしれません。せっかくのFAQボットも、WEBサイトの分かりづらい場所に設置しがためにお客様に見つけてもらえない。そんなことも実際に起こっています。

当然選ぶインターフェースは一つである必要はありません。様々なインターフェースの選択肢の中から、何を利用すれば一番エンドユーザーの目に触れられるかを検討しましょう。

管理体制の整備

最後はチャットボットを運営するための体制です。

前述したように、チャットボットは定期的なメンテナンスがそのままクオリティに直結します。答えられなかった質問を吸い上げ、回答を追加する。解決に至らなかったシナリオは改良をする。地道ですが重要な作業です。それでもチャットボットを作り終わって満足してしまう企業は少なくありません。

しかし、ユーザーを「あ!」と驚かせ、満足させるチャットボットを作るには必要不可欠な工程です。

使われ続けるチャットボットを

コミュニケーションツールがメールからLINEに移行してきたように、皆さんの問い合わせ窓口は従来の方法からチャットボットへ移りつつあります。しかしこれが完全に実現するころに、人々のチャットボットへの期待値が下がってしまっては意味がありません。

  • 目的の認識
  • 機械学習かルールベースの選択
  • インターフェースの選択
  • 管理体制の整備

これらのポイントを参考に、社内でも継続的にメンテナンスができ、ユーザーにも使い続けられるチャットボットで皆さんの目的を果たしましょう。そして本当に使えるチャットボットを世に送り出し、ユーザーに驚きとわくわくをもたらしましょう。