モネ幻の大作「睡蓮、柳の反映」のデジタル推定復元にAIを活用。6/11から国立西洋美術館で初公開

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2016年にパリ・ルーヴル美術館で発見され、国立西洋博物館に寄贈されたことで大きな話題となったクロード・モネの作品「睡蓮、柳の反映」。

もとは縦2メートル、横4.25メートルの大作で、専門家がモネの画家人生の集大成と評価する絵だったが、発見時には上半分が失われていた。

そんな本作が今回、人の推定とAIの推定の力により復元され、2019年6月11日から国立西洋美術館で開催する企画展「国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展」で初公開される。

復元前

復元後

人の推定に加え、AI技術による推定を利用

これまで作品の全体像が確認できるのは、欠損前に撮影された白黒写真のみだった。白黒写真では復元しようにも色がわからず、色彩の推定が必要となる。

人手による色彩推定のアプローチでは、

  • 同時期の類似作品を調査し、描き方や彩色を検証
  • 作品の残存部分を科学調査し、使用されている絵の具を特定
  • 同様の絵の具を用いて原寸大に画き、同時期のほかの作品と比較することで、モネが描く際の手順や特徴などを探索

などが実施された。今回の復元ではこうした人による推定に加え、AI技術による推定も用いられている。

筑波大学人工知能科学センターの飯塚里志助教が協力し、AIがモネのさまざまな作品の彩色パターンを学習し、「睡蓮、柳の反映」の一部の色彩情報と合わせて全体の色彩を推定する仕組みを実現した。

人による推定をAI技術による推定で検証することで、客観性を高めることが可能になったという。

「人を支援するAI」の研究開発推進を目指す人工知能科学センター

「睡蓮、柳の反映」の修復に協力した飯塚 里志氏は、落合 陽一氏も准教授として所属する筑波大学 人工知能科学センターに所属している。

筑波大学は、AIに関する分野横断的な研究と教育を推進する体制を構築するため、2017年4月に人工知能科学センターを開設した。とくに「人を支援するAI」の関わる分野を開拓し、

  • サイバニクス研究センター
  • 国際統合睡眠医科学研究機構
  • 計算科学研究センター

などのさまざまな機関と連携することで、基礎技術から実用・産業展開までのスパイラル形成をはかり、未来の超スマート社会の実現や新たな価値創造への貢献を目指している。

AI技術の応用先は幅広い。もっともAIが苦手としそうな芸術の分野でも、AIは学習した作品の特徴をとらえ、再現を可能にする。

再現される作品は学習データの影響を受けるため、完全なオリジナル作品を生み出すのは難しいと思われるが、今回のように作風の再現が必要な絵画の修復への利用は今後も増えていくだろう。

Source:国立西洋美術館と凸版印刷、モネ 幻の大作≪睡蓮、柳の反映≫の欠損箇所をデジタルで推定復元し初公開