田辺三菱製薬、15分以上かかっていた薬物探索をAIで約16秒に「56倍以上の効率化の成果が得られた」

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田辺三菱製薬株式会社と株式会社HACARUSは5月25日、新たな薬物スクリーニング用AI(人工知能)技術を構築したと発表。一薬物あたり15~40分かかっていた薬物探索の時間を約16秒まで短縮可能になった。

田辺三菱製薬は以前から、大阪大学大学院基礎工学研究科・機能創成専攻 三宅淳教授らの研究グループと共同で、ディープラーニング(深層学習)による薬物スクリーニング用AI技術開発について研究してきた。すでに本AI技術により、高い知識・技術を持った研究者による事前のデータ検討なしに、大規模な画像を用いた薬物評価が可能になった。

ところが、ディープラーニングは薬物ごとに異なる判別モデルを1つずつ作成するため、薬物の影響の評価・判別に時間がかかるという課題を抱えていた。また、薬物作用の判定に寄与した特徴が不明であるという「AIのブラックボックス化」の問題も存在していた。

田辺三菱製薬とHACARUSは2020年度から、このような課題を受け、HACARUSが持つAI技術の活用について検討を開始した。

これにより、異常検知/変化検知モデルにより正常コントロール群の画像特徴量だけを学習することで、薬物間で共通の異常検知モデルを活用でき、学習時間を削減可能になった。具体的には、一薬物あたり15~40分かかっていた解析時間を約16秒まで短縮できた。

また、正常コントロール群と薬物添加の対照群の画像間でスパース構造学習を実施し、スパース構造学習で薬物の影響で画像特徴量間の相関関係がどう変化したのか、すなわち薬物の作用メカニズムに関する示唆を得られるようになった。

田辺三菱製薬とHACARUSは今回のプロジェクト成果は、薬物スクリーニングにおいて、学習に必要なデータが正常コントロールだけである点と、判定に寄与した特徴量の示唆が得られる点で独自性があるとしている。

将来的には、遺伝子多型に着目した薬物スクリーニングや患者iPS細胞などを用いた薬物スクリーニングに本AI技術を応用することで、プレシジョン・メディシン(精密医療)の実現に貢献することが期待される。

田辺三菱製薬の担当者は「今回のプロジェクトは、解析プロセスの56倍以上の効率化という期待通りの成果が得られ、また新しい技術に触れることができ、大変有意義なものでした。今回構築したモデルの実際の創薬プロジェクトへの応用を視野に、今後も共同研究を進めていきたいです」と述べている。

>>ニュースリリース「データ駆動型創薬の加速化をめざし薬物スクリーニング用AI技術を構築」

>>ニュースリリース「HACARUS × 田辺三菱製薬 スパースモデリングを用いて、薬物スクリーニングにおける 解析の高速化と判定に寄与する特徴抽出に成功」