NEC、AIで車載カメラの映像の帯域を最大10分の1に削減

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日本電気株式会社(以下、NEC)は2021年1月8日、車載カメラの膨大なデータのうち、人工知能(AI)を活用することで、信号機などの注目領域に絞って画質を高くし、送信データ量を削減する技術「学習型メディア送信制御技術」を開発したと発表した。

本技術により、映像品質を維持したまま送信データ量を大幅に削減。車などにおいて、車外の走行環境の異常や運転手・乗客の危険な状況を映像を通してリアルタイムに検知してサポートするなど、遠隔見守りの高度化に貢献していく。

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車載カメラの映像を低遅延かつ高画質に送信するAI技術、無線通信帯域の削減にも成功

近年、モビリティ市場では、コネクテッド化、安全運転支援システムの高度化、自動運転の実用化が進む中で、車両に搭載した複数のカメラの映像を活用した安全運転や異常時の適切な措置のサポートなど、安心・安全な移動の実現が求められている。特に、車両の走行環境や運転手・乗客の状況把握においては、管制センターによる遠隔見守りのため、複数のカメラが撮影する高画質な映像を低遅延かつ乱れなく伝送することが重要となる。

一方で、こうしたデータ量が大きい映像は広い無線通信帯域を必要とするため、走行中の通信帯域の低下により映像の乱れや通信遅延の増加を引き起こし、高画質の映像をリアルタイムに伝送することが難しく、課題となっていた。

そうしたなかで、NECは映像品質を維持したまま大幅な通信データ量の削減を可能とする学習型メディア送信制御技術を開発した。本技術は、AIをカメラ映像の送信機に組み込み、センター側の物体検出や距離測定などの映像認識に必要となる注目領域と最適画質を学習し、映像の送信制御をすることで、伝送するデータ量を大幅に削減できる。

これにより、無線通信帯域を最大10分の1に削減して通信遅延を抑えるとともに、リアルタイムかつ安定的に高画質の映像データの伝送を実現し、管制センターによる車などの遠隔見守りの高度化への貢献が可能となる。

また、NECは自動運転バスの複数の車載カメラから映像データを安定した通信でリアルタイムに伝送し、遠隔監視センターにて乗務員と同じように運行状況を把握する「車外・車室内状況見守りソリューション」に本技術を採用し、2021年度中に商用化する予定だという。

本ソリューションでは、伝送された映像データから交通参加者の位置・距離と道路の形状を推定して交通シーンを鳥瞰(ちょうかん)できる「シーン認識技術」による車外の危険状況の検知や、人物の姿勢を抽出する「姿勢推定技術」による車室内の乗員・乗客の異常な状態の検知を実現するとのこと。

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見通しが悪い交差点にAIを活用した危険情報提供システムを導入、安全性向上に向け

運転支援や安全性向上のためにAIが活用される例は今後ますます増えそうだ。

西日本鉄道株式会社と西鉄バス北九州株式会社は2020年10月8日に、北九州エリアにおいて、中型自動運転バスの実証実験に取り組むことを発表した。本実証実験は2020年10月22日~11月29日の期間、自動運転バスの社会実装に向け、必要な技術や事業環境などを整備することを目的に実施された。

本実証実験では、産業技術総合研究所が開発した中型サイズの自動運転バスを用いるとともに、自動走行の安全性および円滑性向上のため、以下の取り組みを進めている。

まず、「交差点の安全性」における取り組みでは運行区画(10.5キロ)すべての信号(計10か所)に信号情報提供システムを導入。また、そのうちの6か所にはクラウドを介さず、信号機側と車両側で直接通信する新たな方式(12V-P2P)を採用することで、信号情報伝達時間の短縮を目指す。

さらに、見通しが悪い交差点に「危険情報提供システム」を導入する。カメラなど複数のセンサーを活用し、AIが画像処理と将来予測をすることで、交差点での接触事故を防止し、円滑な自動走行を支援していく。