日本電気株式会社(NEC)は5月6日、時系列データのリアルタイム分析において、高い精度を維持しながら、高速に判断するAI技術を開発したと発表。本技術は顔認証やサイバー攻撃の検知・分析に適用した場合、既存の手法と同等の精度を維持しながら、処理スピードを最大20倍高速化することが期待される。
顔認証やサイバー攻撃の検知・分析をするAI分析エンジンは、あらかじめ設定した量のデータをすべて取得してから分析し、結果を出すのが一般的だ。たとえば、顔認証を活用した入退場ゲートでは、複数フレームの画像を連続して撮影し、データを蓄積してから、総合的に判断することで個人を認証している。
今回、NECが開発した技術は、必要な情報が集まり次第すぐに解答する「早押しクイズ」のような、複雑な意思決定をする際に見られる脳活動の知見を応用して開発した。すべてのデータの蓄積を待たず、データを取得しながら同時に分析する。
所望の信頼度が得られたタイミングでデータ収集を打ち切り判断するため、認証や検知・分析を高速化できる。また、あらかじめ設定した量のデータすべてを取得する場合は、より高精度な判断が可能だ。
このようなデータを1つずつ抽出していきながら同時に判断し、結論が出たと認められるタイミングでデータの収集を打ち切り、判断を確定させる「逐次確率比検定(Sequential Probability Ratio Test:SPRT)」は1940年代に提案されており、製造分野の品質管理で使われてきた。しかし、必要となるデータなどの前提条件が厳しく、幅広い領域に適用することは難しかったという〔※〕。
〔※〕逐次確率比検定の適用には「判定の尺度(尤度比、ゆうどひ)が厳密に得られること」「標本データの乱雑さが同じ、かつ相互に独立していること」などの条件がある。
近年、意思決定時における大脳頭頂葉の神経細胞が本手法に近い計算をしていることが明らかになった。NECは今回、同社が持つ機械学習の知見と最新の脳神経科学を融合することで、厳しい前提条件を乗り越えるアルゴリズムを考案し、速度と精度を両立する技術を開発したとしている。
NECは本技術を顔認証AIエンジン「NeoFace」への搭載を目指しているという。不正通信などサイバー攻撃の検知・分析の速度・精度の向上をはじめ、時系列データを活用する領域全般への適用も検討するとした。
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