合同会社ネコリコと株式会社JDSCは2023年2月27日、前年より行ってきた三重県東員町住民対象フレイル予防実証が有効であることが確認できたため、2023年より社会実装を進めていく旨を発表した。共同研究には同2社のほか、三重県東員町・明治安田生命保険相互会社四日市支社・株式会社明治安田総合研究所が参画し、電力データとAIによるフレイルリスク検知と保険会社の社会貢献活動を組み合わせ、官民連携で取り組んだとのこと。
背景と概要
フレイル予防の普及啓発と住民主体による健康づくりを推進してきた東員町にとって、取り組みが一部住民に限られること、これらに関心が薄い住民や閉じこもりがちの住民のフレイルリスク把握と普及啓発が課題であったという。これに対し、自治体リソースのみでは、対象者への働きかけが困難であることから、電力データとAIによるフレイルリスク検知情報を用い、自治体と明治安田生命が連携して訪問活動をする実証実験を行ってきたとのこと。
同実験には65歳以上の高齢者86世帯、109名が参加。フレイルリスクの高い住民と後期高齢者は東員町(地域包括支援センターおよび民生委員)、それ以外の前期高齢者は明治安田生命が、2022年5月から2023年2月の間で計3回訪問活動を行い、訪問活動では、電力データからAIが分析した自身のフレイルリスク変化に関する情報、フレイル予防に関する一般的な情報、東員町の行政サービス案内(通いの場や介護予防活動の情報など)を届けたという。
実証実験の結果
フレイルリスク変化および行動変容効果の検証
フレイルの認知度:実証開始時は年齢が若い層で約4割→全年齢層で約9割まで向上
行動変容:約7割が運動や食事バランスの改善など、フレイル予防に意識して取り組まれるようになり、訪問活動や情報発信を重ねるほど健康状態が改善する傾向も確認されたという。
フレイルリスク検知AIの精度向上の検証
事前・中間・事後の参加者アンケートにより、フレイルあるいは健康な状態かを測定するとともに、2021年12月から約1年間、参加者の自宅の電力データを取得。このデータを構築済のAIに追加学習させることで実証実験開始時に76%であった一人暮らし高齢者のフレイルリスク分析精度が95%まで向上したとのこと。
「フレイル」と地域課題を解決するサービスの社会実装について
「フレイル」は、健康な状態と要介護状態の中間に位置し、適切な治療や予防を行うことで要介護状態に進まずに済む可能性があることから、早期発見・早期対応が重要と同社は述べる。しかしながら、多くの自治体ではフレイル予防の普及啓発が課題であり、特に社会参画が少なく閉じこもりがちな一人暮らし高齢者への対応が懸念されているという。
同実証では、自治体が主体となって高齢者に働きかけるアウトリーチ型の取り組みの有効性が確認できたとのこと。2023年よりネコリコ社とJDSC社は、電力データから一人暮らし高齢者のフレイルリスクを毎月分析して自治体に提供するサービスを社会実装していく。同サービスにより自治体は、高齢者のリスクに応じた適時適切なアウトリーチを地域関係者と連携して行うことが可能となり、フレイル予防活動の実効性を高めることが期待できるとのことだ。