大腸がんの遺伝子変異を予測するAI 精度は人間の目と同等かそれ以上か、新潟大学

このエントリーをはてなブックマークに追加


Unsplashより

新潟大学は5月25日、大腸がんの病理標本スライドをディープラーニング(深層学習)することで、大腸がんの遺伝子変異を予測する人工知能(AI)を開発したと発表。本研究成果は4月28日にSpringer社の科学雑誌『Journal of Gastroenterology』に掲載された〔※1〕。

〔※1〕
論文タイトル:『Histopathological characteristics and artificial intelligence for predicting tumor mutational burden-high colorectal cancer.』/

著者:Shimada Y, Okuda S, Watanabe Y, Tajima Y, Nagahashi M, Ichikawa H, Nakano M, Sakata J, Takii Y, Kawasaki T, Homma KI, Kamori T, Oki E, Ling Y, Takeuchi S, Wakai T.doi: 10.1007/s00535-021-01789-w

今回、同AIを開発したのは大学院医⻭学総合研究科消化器・一般外科学分野の若井俊文教授、島田能史講師、同大学医学部メディカルAIセンターの奥田修二郎教授らの研究グループである。

近年、医療現場では、固形がんの薬物療法は、個々の遺伝子変異のパターン(遺伝子変異プロファイル)に基づいて実施し始めているという。

がんに生じた遺伝子変異のおおよその量を表す「Tumor mutational burden-higth(TMB-H)」〔※2〕は、大腸がんを含む各種の固形がんで認められる遺伝子変異プロファイルの1つであり、TMB-Hのがん細胞の中には極端に多くの遺伝子変異が蓄積している。

〔※2〕Tumor mutational burden-high(TMB-H)は遺伝子変異の量が非常に多いがんを表し、Tumor mutational burden-low(TMB-L)は遺伝子変異の量が中等度から少量のがんを表す。

TMB-Hでは、がん細胞独自の遺伝子変異にともない新たに出現するがん抗原(がんの目印)を意味する「腫瘍特異抗原(ネオアンチゲン)」の発現が高く、T細胞の認識を受けやすくなることから、免疫チェックポイント阻害剤の効果が高いと考えられている。

一方で、TMB-Hを同定するには、次世代シークエンサーを用いた遺伝子変異解析が必要なため、解析コストが高いことが問題という。大腸がんのTMB-Hを予測するAIの開発は、がんの遺伝子解析にまつわるコスト問題を解決し、大腸がんの個別化治療を推進する上で重要としている。

本研究は、大腸がん手術を受けた患者から研究参加の同意を得て実施した。研究の流れは以下のとおり。

最初に「人間の目」で大腸がんの病理標本スライドを観察し、TMB-Hの病理学的特徴を明らかにした。大腸がんの病理標本スライドを用いて深層学習し、TMB-Hを予測するAIを開発。大腸がんTMB-Hの予測精度に関して、人間の目とAIを比較した。

大腸がんの病理標本スライドを人間の目で観察すると、TMB-Hでは特徴的な病理組織像(腫瘍内リンパ球浸潤)が認められたという。

人間の目とAIの大腸がんTMB-Hの予測精度(Area under the curve)は0.910と0.934で、同AIは大腸がんTMB-Hの予測精度において人間の目と同等かそれ以上であると考えられるとしている。

今後、本研究グループはAIの精度を高め、さらに他の「癌腫(がんしゅ)」〔※3〕のTMB-Hを予測する汎用型のAIの開発を目指すという。また、今回開発したAIが実際の免疫チェックポイント阻害剤の治療効果を予測できるかどうかも評価したいとのことだ。

〔※3〕皮膚の表皮や消化管の粘膜など上皮性細胞由来の悪性腫瘍(しゅよう)を指す。

>>ニュースリリース