松尾豊さん、DX成功には「まずやってみる」が最重要

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昨今話題のDX(デジタルトランスフォーメーション)。すでに成功を収めつつある企業とそうでない企業が生まれており、企業間での「DX格差」が広がっているとされる。どのようにすればDXを成功させられるのか?

エヌビディア合同会社は6月16日と6月17日、オンラインイベント「NVIDIA AI DAYS」を開催した。同イベントのなかでは、「DX格差」について取り扱う「【G-2】Panel discussion:広がるDX格差 ~先駆者に学ぶ新たなアプローチ~」が実施された。

同イベントには、DXに成功している企業の代表として、武蔵精密工業株式会社 代表取締役社長 大塚浩史さん、株式会社フジタ 代表取締役社長 奥村洋治さんが登壇。

東京大学大学院 教授 松尾豊さん、経営共創基盤 共同経営者 マネージングディレクター 川上登福さん、エヌビディア合同会社 エンタープライズ事業本部 事業本部長 井﨑武士さんとともに、パネルディスカッションを実施した。

「課題を解決するための手段としてDXを活用」が基本スタンス

武蔵精密工業株式会社 代表取締役社長 大塚浩史さん

自動車部品メーカーの武蔵精密工業は1万人を超える社員がおり、常にオペレーションのなかで案件の決済やプロジェクトの進め方などさまざまな課題を抱えている。同社のDXに対する基本的なスタンスは「そのような課題を解決するための手段としてDXを活用する」というものだ。

現在では、ただ単に「これまで個別になっていた仕事をつなぐことで、無駄な重複作業や資料づくりを減らしていく」だけではなく、「データベースをつなげることで、ほかの部署は知らなかったことが会社全体に『見える化』する」ところまで進んでいるという。

同社は生産現場の課題を解決するツールとして「AIを使った自動検査装置」「AIを使った自動搬送装置」も導入している。同社の大塚浩史さんは「『繰り返し作業や重負荷な作業から、社員を解放したい』という課題感で、これまでのテクノロジーではなかなか難しかったことをAIなどのテクノロジーを使って解決するのが、われわれの目指している姿です」と語った。

株式会社フジタ 代表取締役社長 奥村洋治さん

また、建設会社であるフジタの奥村洋治さんは「大きな会社の流れとしては、グローバリゼーションがデジタライゼーションに変わっていくことをつかんで、必死でついていかなければいけないと考えていました。現在は新型コロナでデジタライゼーションがこれだけ活発になってくることを考えると、(そのような方針は)間違ってはいなかったのではないかと考えています」と振り返る。

同社は松尾豊さんが率いる東大松尾研究室発のAIスタートアップ、株式会社DeepXとともに実際に現場で無人の油圧ショベル(ショベルカー)の実証実験も進めている。

奥村洋治さんは今後について、「建設業は非常に労働集約的な産業です。まだまだ効率を図れる分野が宝庫のようにたくさん広がっています。世の中の役に立つように、このようなところにどんどんロボット化・AI化を進めていきたい。積極的にやっていこうと考えています」と語った。

「AIは面白そうだから、やってみましょう」

経営共創基盤 共同経営者 マネージングディレクター 川上登福さん

川上登福さんは両社の代表に対して、DX推進やAI導入に決心がつかず、ためらうことはあったのかと質問した。2人はともにためらうことはなかったと答えている。

武蔵精密工業の大塚浩史さんは「別に何か大層な計画があったわけではなく、現場において『検査で困っている』『こんな重いものを運びたくない』という人たちがたくさんいました。これまで自動化できていなかったし、AIは面白そうだから、やってみましょう。そういう感じでした。われわれのオペレーションの延長線上で、新しいテクノロジーを使っているということです」と振り返る。

DXやAIについては理解や経験値が足りず、二の足を踏んでしまう可能性がある。しかし、たとえば、製造現場においては、新しいプレス機や新しい旋盤(せんばん)が登場すると、技術者や経営者は競争力を保つためにどんどん導入する傾向があるという。大塚浩史さんは、デジタル分野では「デジタルネイティブ」と呼ばれる若者たちと対話することが重要であると主張した。

フジタの奥村洋治さんは「ほかの産業はどんどん新しいものを採用しているのに、どうしてわれわれの産業だけはいつまでも入社時と同じスコップとトンカチでやっているのか。そういう疑問がありました。これは絶対変わっていかなければいけないし、必ずどこかの時点で大きく変わっていくだろうという想いがありました」と話した。

松尾豊さん、DX成功には「まずやってみる」が最重要

東京大学大学院 教授 松尾豊さん

松尾豊さんは「(武蔵精密工業とフジタは)先進的な事例が進み、実用化につながっており、非常に素晴らしいと思います」と述べ、両社の代表である大塚浩史さんと奥村洋治さんに共通するポイントが3つあると指摘した。

「1つ目は、グローバルな視野を持っていることです。日本国内だけではなく、いろんな海外の事例も見ており、マクロにどういう変化が今起こっているかをしっかりと把握したうえで動いています」

「2つ目は、技術の肝をつかんでいることです。経営者の場合だと、技術のことに明るくない方が多いと思いますが、ポイントが大事だと思います。『ディープラーニングでこういうことができる』『ネットワークでつないでいくと、こういうことができる』など、ポイントを的確につかんでいます。『AIだったら何でもできる』ではなく、非常に現実的な用途を見つけています」

「3つ目は、1番大事だと思いますが、『まずやってみる』と1歩踏み出す素早さです。やらないとわからないので、やってみてそのなかで学んだことを次に生かして、どんどん先に進んでいくところは、本当に素晴らしいと思います」

松尾豊さんが指摘する3つのポイントをクリアしているかどうかが、DXを成功させつつある企業とそうでない企業での「DX格差」を生み出していると考えられる。DXに取り組む企業はまずは3つのポイントに目を向けてみては。

エヌビディア、DX成功に導くプログラム

最後に、エヌビディア合同会社 エンタープライズ事業本部 事業本部長 井﨑武士さんは「DXアクセラレーションプログラム」を紹介した。

同プログラムでは、エヌビディアに加え、ビジネスアドバイザー、AIエキスパート、インテグレータ、ITエキスパートが参加。「ビジネスマッチング」「技術支援/トレーニング」「先行事例紹介」などを手がけることで、日本企業のDXを加速させるとしている。

>>エヌビディア合同会社