アメリカはカリフォルニア州サンノゼで行われた「GTC 2018」。はるか遠くのアメリカで語られた内容を、ここ日本で解説するイベント「NVIDIA DEEP LEARNING SEMINAR 2018」が、4月24日に開催されました。
果たしてNVIDIAはGTC 2018で何を発表したのか?今回は、NVIDIA Japan代表 大崎氏の「GTC 2018の基調講演から」という講演に絞ってお届けします。
今起こっているのは技術の「カンブリア爆発」だ
大崎氏は、今起こっているのは技術の「カンブリア爆発」だ、と指摘。
「CNN、RNN、GAN、強化学習など、ディープラーニングをベースにした新しい技術や手法が続々生まれており、適用できる分野も爆発的に増えています。
そうなれば、膨大な計算処理が必要になってきますが、どれだけ進化させても、砂漠に水を垂らすくらい圧倒的に足りない。まさに、技術の『カンブリア爆発』が起こっていることによって、GPUの処理能力が求められていると言えるでしょう。」
大崎氏によれば、NVIDIAのGPUコンピューティングは、「ムーアの法則」を超える速度で性能が向上しているといいます。
ムーアの法則とは、インテル創業者のひとりであるゴードン・ムーアが提唱した、「半導体の集積率は18ヶ月で2倍になる」という法則。後述しますが、NVIDIAのGPUコンピューティングは、5年間で500倍の性能向上を実現したそう。文字通り桁違いのスピードです。
史上最大のGPU「DGX-2」の発表
今回GTCで発表された目玉は、なんといっても「DGX-2」の発表。大崎氏の解説にも力が入っていました。
「今回発表された『DGX-2』は、史上最大のGPU。16基のTeslaを、NVSwitchというシステムで連結し、合計2ペタフロップスの処理能力で駆動します。
2012年までは、GeForce GTX 580というGPUを2つ使ってAlexnetの学習に6日ほどかかっていましたが、DGX-2であれば18分で終わる。5年間で500倍の性能向上を実現しました。」
ペタフロップスとは、コンピューターの処理能力の単位。ペタ=1000兆なので、1秒間に2000兆回の計算ができるということになります。もはや桁がわからないくらい速い……。
価格300万ドル、消費電力180キロワットのデュアルCPUサーバーを300台使っているとすると、DGX-2に置き換えた場合、
- コスト8分の1
- 設置面積60分の1
- 消費電力18分の1
まで抑えられるんだとか。豊富な処理能力を求められるディープラーニングを使うには、これ以上ないくらいリッチな環境ですね。日本で唯一のNVIDIAエリートパートナーに認定されている「GDEP」が販売するとのこと。
動くモノはすべて自律動作マシンに。NVIDIAが描く自動運転の展望
大崎氏は、GTC 2018にてArmとNVIDIAがIoT領域でパートナーシップを結んだプレスを出したことにも言及し、NVIDIAの自動運転についての取り組みについても語りました。
「これから、人間が開発した動くものは、すべて自律動作するマシンになっていくでしょう。NVIDIAは、『NVIDIA DRIVE』と名付けた、データ収集、モデルの学習、シミュレーションから実際の運転までをエンドトゥーエンドでできるプラットフォームを構築しています。」
自動運転に取り組むには、データの収集などももちろんのこと、物体検知、走行可能エリア検知、距離の推定、ドライバーモニタリングといった数々のディープラーニングの技術が必要。一からスクラッチで開発するのは膨大なコストがかかります。それらをマージし、一気貫通で開発できるんだとか。
また、大崎氏は、自動車のテスト走行にかかるコストが膨大なことにも言及。ここでもNVIDIAのソリューションが力を発揮するとのこと。
「世界では、年間数兆キロ単位で自動車のテスト走行が実施されていますが、これにかかるコストや、事故の危険性は膨大です。NVIDIA DRIVE SIMおよびCONSTELLATIONでは、仮想空間での自動運転シミュレーターを使うことで、特殊な条件下でのシミュレーションや、年間48億キロの走行シミュレーションが可能です。」
Ledge.aiでも取材したアセントロボティクスも、GANで生成した仮想空間でのテスト走行に取り組んでいました。完全な仮想空間での自動運転シミュレーションが実現すれば、コスト削減やテスト走行での事故の削減など、多くのメリットが期待できますね。
ディープラーニングが活発な今、大きな処理能力を持つGPUへのニーズは当分は衰えることはないので、ハードからソフトまで一気貫通で開発できるのは大きな優位性だと、改めて実感したセミナーでした。
NVIDIAの今後に目が離せません。