NVIDIAの技術は身近に満ち溢れている 目指すのは生活の下支え

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NVIDIA(エヌビディア)が主催する同社最大級のカンファレンスイベント「NVIDIA GTC(以下、GTC)」が、2021年11月8日(月)から11日(木)まで開催された。

本カンファレンスは、AIやディープラーニングに関する最新情報や、各国の成功事例など、数々のセッションや技術トレーニングが用意されている。セッションの数は500を超え、NVIDIAのエキスパートたちをはじめとする、グローバルで活躍している研究者や、日本発のDXで業界を牽引するビジネスリーダーなどによる講演が実施された。

NVIDIAの創業者/ CEOのジェンスン フアン氏の基調講演はオンデマンド配信中。NVIDIAの方も口をそろえて「必見」とのことなので、まだ見ていないという方はぜひともチェックしてほしい。

GPUなどのハードウェア群は提供する全体の半分以下の割合

これまで、エヌビディア合同会社 シニア ソリューション アーキテクト 佐々木 邦暢氏にGTCに関して話を聞いているが、取材中に「各ご家庭でNVIDIAのロゴがあふれることはないかもしれないが、NVIDIAの技術はさまざまな生活シーンの下支えになっているんです」と聞いた。

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NVIDIAは多くの人にとっての印象は「GPUメーカー」であったり、過去には「謎の半導体メーカー」などと言われたこともあったりしたが、実は生活を支える重要な役目を担っているそうだ。

―― 佐々木氏
「多くの方がNVIDIAを聞いた時、イメージするのは『ハードウェアテクノロジー』としてのGPUを提供する会社、という印象を持たれていると思います。

単なるGPUだけをとっても、グラフィックス用の機能を持つ製品もあれば、ひたすら計算するだけのGPUなど、さまざまなGPUを提供しています。また、GPUを搭載するサーバーも提供しています。

ただ、NVIDIAの製品群のなかでハードウェアが占める割合は半分程度です(※下図参照)。

ハードウェア寄りのソフトウェアで言えば、『CUDA』や『DOCA』があります。AIやディープラーニング用途で広く使われる『TensorFlow』や『PyTorch』のようなライブラリが、CUDA を活用しています。実際にAIを作るときは、TensorFlowやPyTorchを使えば、動画の解析や対話型AI、自動運転の技術など、さまざまなものを、CUDA を直接使うよりも楽に作れます。ただ、TensorFlowやPyTorchは非常に高い柔軟性を持ちますが、もっと“楽”をさせてくれるソリューションがあればいいよね、という考えに至りました」

GPUは上記の表では最も下部に位置しており、全体の“下支え”のポジションをGPUは担っている

機能を特化させたアプリケーションの提供に注力

NVIDIAの“楽”をさせてくれるソリューションがアプリケーションフレームワークだという。

―― 佐々木氏
「ここ数年NVIDIAが力を入れているのは、もっと上位に位置するアプリケーションフレームワークの部分です。たとえば、『Riva』というアプリケーションフレームワークは、対話型AIを作る機能に特化させています。対話型AIを作りたい企業の開発者の方は、Rivaを使うだけで対話型AIを作れるようになっています」

いま、AIは最先端の研究内容という位置づけではなく、産業界で使われる技術のひとつに落とし込まれつつある。より実用的なソフトウェアになりつつあるため、NVIDIAでは各AI領域に特化させたアプリケーションフレームワークの提供に力を入れている。

対話型AI用のRivaのほかに、レコメンダー用の『Merlin』 など、さまざまな用途に合わせたフレームワークを提供/準備中だという。そしてこういったアプリケーションフレームワークへの取り組みは、GTCのセッション内容にも反映されているそうだ。

―― 佐々木氏
「数年前であれば、今回開催するようなGTCのセッション内容はハードウェアの話だったり、特定のアルゴリズムに対しての話が多かったのですが、いまでは『Riva』を使ってアプリケーションを作るにはどうするか、などの実際の現場に沿った話が多くなっています」

アプリケーションの話では、NVIDIAではオーストラリアの企業に対して取り組んだ事例があるという。

―― 佐々木氏
「オーストラリアの『カーセールス』という企業様は、ユーザーが自分の自動車を売りに出せるサイトを運営しています。ユーザーが売りに出す自動車の写真をアップロードするのですが、従来は人の手で『この車のメーカーは××だ』のように分類してカタログを作っていました。現在では、NVIDIAのディープラーニング技術を使うことで、分類作業を自動化しカタログを作っています。

また、カタログに掲載するためにはユーザーに対して『車体を前から撮影』するなど、車体に対してさまざまな角度から撮影された写真が必要です。決められた角度からの写真が必要になるのですが、『その被写体になる自動化の向きはどちらなのか』を判別するディープラーニングモデルも作って自動化している取り組みもあります」

NVIDIAの技術は“気が付かない”ところにも浸透している

そして佐々木氏は「実はエンドユーザーの持つ課題を裏で解決しているのはNVIDIA」だと話す。

―― 佐々木氏
「NVIDIAは縁の下の力持ち的なポジションだと思っています。NVIDIAはGPUを主として進めてきた会社ですが、いま目指しているのは『コンピューティングプラットフォームカンパニー』です。

各ご家庭でNVIDIAのロゴがあふれることはないかもしれないですが、NVIDIAの技術はさまざまな生活シーンの下支えになっているんです。スマートスピーカーに話しかければディープラーニング技術が使われていますし、スマートフォンで見る動画はAIがおすすめしたものかもしれません。



生活のあらゆる局面を陰で支えるプラットフォームを提供する立場になりたいと考えています」

多くの映画でNVIDIAの技術を活用して特殊効果が処理されていたり、身の回りの製品の多くがNVIDIAのGPUを搭載したワークステーションを使って設計されていたりと言い、目に見えるものだけでなく触れているものも同社の技術によって作られているかもしれない――。

自動車にNVIDIAが浸透する未来は近い

すでにGTCは終了しているものの、NVIDIAの創業者/CEO ジェンスン フアン氏の基調講演はオンデマンドで配信中だ。ここで、読者の皆様に注目してほしい発表内容のごく一部を紹介する。さまざまな発表があったなかで、今回ピックアップするのは今後多くの生活にインパクトを与える「自動運転」に関する技術だ。

基調講演では、自動車内でのアシスタント「NVIDIA DRIVE Concierge」と、運転を支援するAIプラットフォーム「DRIVE Chauffeur」を発表した。

NVIDIA DRIVE Conciergeは、名前のとおり、搭乗者に対するConcierge(コンシェルジュ)の役割を果たすもので、NVIDIAの音声/自然言語AIを利用している。いわば、音声アシスタントのようなものを想像してもらえれば良いのだが、特筆すべきはこのNVIDIA DRIVE Conciergeを使うことで“自動車と自然な会話が可能になる”点だ。

NVIDIA DRIVE Conciergeには「Omniverse Avatar」という技術が備わっている。Omniverse Avatarは、音声AIや自然言語理解、レコメンドエンジン、シミュレーションなど、NVIDIAの技術が統合されたプラットフォーム。このプラットフォームでは3Dアバターを作成でき、NVIDIA DRIVE Conciergeにおいてはその3Dアバターがコンシェルジュになるのだ。

通話の支援やレストランへの予約、果てには車内の財布の置き忘れがあった際に通知するなどの機能を備えるほか、ドライバーが時間通りに目的地に到着するための最適な走行モードの選択をし、到着までの距離が一定以下(発表では100マイル以下)になったらリマインドするなどのサポートをしてくれる。

そして、おそらく読者が注目するのは自動運転技術関連の発表だろう。

NVIDIAが発表したDRIVE Chauffeurは、NVIDIA DRIVE AV SDKを基盤とするAI支援運転プラットフォーム。高速道路も市街地もどちらも安全に運転できる仕組みを作れると発表で明かされた。

本稿で紹介した基調講演の内容は、ほんの一部に過ぎない。技術的な展望も含めれば、NVIDIAはデジタルツインを実現する「Omniverse」関連の発表がキモになっている。先に紹介したOmniverse Avatarもそのひとつだ。

Omniverseのなかでも、自動走行車のデジタルツインをサポートする「NVIDIA DRIVE Sim」などは、発表中のチャット欄では世界中から大きな反響があったように感じられた。

Omniverseについて網羅的に紹介すると、本稿ではあまりにも長くなる可能性があるため、別記事にて公開予定だ(それだけNVIDIAが描く世界が広いという意味でもある)。ジェンスン フアン氏の基調講演はYouTubeでオンデマンド公開中なので、ぜひともチェックしてみてほしい。なお、日本語字幕付きで視聴できるので、英語が苦手……という方もご安心を。

基調講演はオンデマンドで配信中

NVIDIA GTCの開催はすでに終了したものの、本稿でも何度も触れたとおり、NVIDIAの創業者/ CEOのジェンスン フアン氏の基調講演はオンデマンド配信中

先述した自動車向けの技術だけでなく、「Omniverse」関連の発表も盛沢山だった。先端技術ではなく、ビジネスシーンに普及した技術のひとつになったAIやディープラーニング。DXやAI活用を推進したいと考える多くの方にとって、GTCの講演はタメになるはず。ぜひともチェックしてほしい。


開催概要
日 時  :2021年11月8日(月)~11月11日(木)
名 称  :NVIDIA GTC
開催方法 :オンライン
主 催  :NVIDIA
参加費  :無料(会期中も登録受付中)

NVIDIA佐々木氏に聞いたインタビュー記事を合わせて読む
NVIDIA最大のイベント「GTC」11/8から無料開催 AIやDXの“最新”を知る絶対に見るべき講演は?
https://ledge.ai/nvidia-gtc-2021au/

「AI人材不足は日本だけの話ではない」NVIDIAが直接手掛けるAI研修プログラム
https://ledge.ai/nvidia-dli-interview/