人間の分身「AI司会者」が中国で誕生 ── 忘れるな。設計、開発したのは人間だ

このエントリーをはてなブックマークに追加

AI分野の成長が著しく、同分野で圧倒的な存在感を示しているのが中国だ。実際、昨年行われた「2018年中国人工知能産業年会」では、2018年上半期におけるAI分野へのグローバル投資額435億ドルのうち317億ドル、つまり全投資額の4分の3を中国が占めていると発表された。

追い打ちをかけるように、中国の春節聯歓晩会(毎年7億人以上が視聴する中国版紅白歌合戦)に、パーソナル人工知能(PAI)技術を利用して生み出された世界初の「AI司会者」が登場した。

AI司会者がどう生まれ、何をもたらすのか

AI司会者を開発したのは、アメリカ・カリフォルニア州パサデナを拠点とし、分散型の個人用AI、パーソナルAIアバター(PAI) を開発するAI専門会社「ObEN」だ。2014年に設立された同社は、ソフトバンク・ベンチャーズ・コリアやテンセント、HTC VIVE Xの投資先企業でもある。

PAIは、

「長期間の旅行中に自分自身の仮想コピーを『残していく』ことによって、家族と繋がっていたい」

という考えから生み出された。

人物の2D画像と音声を組み合わせ、短時間で作り出された3Dアバターは、ユーザーの声で歌い、流行りのダンスを踊る。さらには、モバイルデバイスを介してファンと交流し、まるで現実でコミュニケーションを取るように感じさせることも可能にするという。

では、3Dアバターが何をもたらすのか? おそらく現実世界で3Dアバターを多用する未来はまだ先だ。最大限に価値を発揮するのは、仮想空間での活用だろう。ユーザーをVR環境やAR環境に送り込み、真に迫った新しい体験を与えてくれるはずだ。

仮想空間といえば、イベントやミーティングを仮想空間で開催できるバーチャルイベントプラットフォーム「cluster」も注目を集めている。このサービスでは自分に似たアバターは使用しないが、仮想空間におけるコミュニケーションの機会は、他にも確実に増えており、今後さらに加速していくだろう。

企業の裏側や特殊な領域ではなく、身近な「AI浸透」が進む

中国では、AI司会者だけでなく、国営メディア「新華社通信」にAIアナウンサーも登場している。

動画を見て見てもわかるように、「これは人間なんじゃないか?」と勘違いする方も少なくないだろう。

AIアナウンサーは、日本でも導入実績がいくつかある。2018年4月にはNHKのニュース番組「ニュースチェック11」に登場した「ニュースのヨミ子」が、AIによる合成音声でニュース原稿を読み上げた。ニュースのヨミ子は、NHK放送技術研究所が開発した平昌オリンピックの「ロボット実況」に使われた技術がベースになっている。

また、日本経済新聞社がYouTubeに公開している動画の一部では、AIアナウンサー「荒木ゆい」が採用されている。言葉を噛まない、完全に制御できるという点では、アナウンサーはAIで十分ではないかという意見もある。アナウンサーがアバターになれば、ユーザーが好みのビジュアルや声、キャラクターを選択できる。これによりユーザーの満足度向上が期待できる。また、一度開発してしまえば、運用・保守が低コストな点も魅力的だ。

このように、国内外の至るところで、社会へのAI技術の浸透に気付かされる機会が増えた。それが、企業の裏側や特殊な領域で起こっているのではなく、我々の身近な場所で進んでいるのというのが、今後数年で生活へさらにAIが浸透する期待を感じさせてくれる。

「AIが仕事を奪う」は煽り文句に過ぎない

生活へのAIの浸透と聞いて、「AIが仕事を奪うのではないか」という懸念が頭をよぎった方も多いだろう。実際、ニュースや記事では、AIが人間の仕事を奪うという決まり文句をよく目にする。

しかし、果たしてそれは本当だろうか。冷静に考えてみると、世間で騒がれているAIは、すべて人間が設計、開発している。AI司会者に関しても、シナリオや企画はすべて人間が考えている。

AIが人間の仕事を代替することは否定しない。むしろ業務を人間よりも効率的かつすばやく処理してくれるのは間違いない。一方で、新たに生まれる仕事も必ずあるだろう。そしてそれは、今の世界で人間が苦しめられている仕事より、はるかにクリエイティビティ溢れるものに違いない。

source:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000033555.html