国立大学法人 岡山大学 岡山大学病院 薬剤部 座間味 義人教授らは8月7日、既存薬の新しい効果を見出す「ドラッグリポジショニング」という研究手法について発表した。
「ドラッグリポジショニング」とは
医療現場では診療記録や医薬品の効能や副作用などの膨大なデータが日々蓄積されている。岡山大学病院 薬剤部の座間味教授、濱野 裕章講師、牛尾 聡一郎特任助教らの研究グループは、こうした医療ビッグデータを用いたデータサイエンスにより、既存薬の新たな効果を発見している。既存薬の新しい効果を見出す手法は「ドラッグリポジショニング」と呼ばれ、既存薬は有効性や安全性などの情報が多く存在することから、新薬に比べて安く、そして早く臨床現場で用いることができるという。
現代医療には、未だに治療手段がない難治性疾患や、薬剤によって引き起こされる末梢神経障害といった副作用が多く存在する。そのような疾患に対して、ヒトや動物、細胞の生命科学情報を蓄積したデータベースを解析する「バイオインフォマティクス」、医薬品の化学構造を蓄積したデータベースなどを活用する「ケモインフォマティクス」を組み合わせた解析手法によって、既存薬の中から治療効果を見出したという。
研究内容、業績
本研究グループは、効果的な治療方法がまだ見つかっていない難治性疾患や薬剤性副作用に対する治療薬・予防薬を開発している。 医療ビッグデータと、既存薬の新規作用のメカニズムが解明できるバイオインフォマティクスやケモインフォマティクスを組み合わせる独自の手法を用いて、既存薬から治療薬・予防薬を見出しているという。
近年では、約2500万症例の薬剤性副作用報告が集積された米国食品医薬品局(FDA)有害事象報告システム(FAERS)のデータベースと、米国国立衛生研究所(NIH) が提供している約2万件の遺伝子発現を類推するデータベース を用いて、抗がん剤誘発末梢神経障害に対して高脂血症治療剤シンバスタチンが有効であることを見出したという。
今後の展望
本研究グループによって展開されたドラッグリポジショニングは、がん疾患にも応用可能だというである。標準治療が確立されていない難治性がんに対しても、本研究でのドラッグポジショニングを用いることで治療薬開発を目指すとのこと。
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