無料で使えるインテル社のAI導入ツール 業種を問わない万能さで注目のOpenVINOツールキットに迫る

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製造業から医療まで、海外ではさまざまな業種・業界におけるAIの実装を手軽にするツールキットがある。なかでも注目を集めているのがインテル社が提供し無償で使える「OpenVINO ツールキット」だ。

本稿ではこのOpenVINO ツールキットについて、日本国内でワークショップやセミナーなどを開催しているエクセルソフト株式会社が解説する。

学習済みのディープラーニングモデルが60種類以上利用可能

一般的にディープラーニングは、学習と推論に処理が分かれています。そのうちOpenVINO ツールキットは、推論機能の実装に特化した製品です。ディープラーニングを活用したアプリケーションを専門知識がない状態でも開発できるように設計されています。

OpenVINO ツールキットでは、ディープラーニングを活用したアプリケーション実装に必要な画像処理や、推論機能の実装を簡単に開発するために必要なコンポーネントが提供されます。

たとえば、カメラの映像に映っている車の車種を認識させたい場合、カメラからの映像を処理して、ディープラーニングの学習モデルに投入すると、学習モデルから画像内の車が映っている領域と車種の名前が返ってきます。

OpenVINO ツールキットには、カメラなどの入力装置から得られる映像を処理する画像処理ライブラリーや、任意の学習モデルによる推論処理を実行する手続きを最適化するディープラーニング・デプロイメント・ツールキットを提供しています。そのため、推論機能を活用したアプリケーションの開発に必要な一連の手続きをサポートします。

また、OpenVINO ツールキットが提供する機能は、インテル社が提供するCPU、GPU、FPG、VPUの様々なハードウェアで高速に実行できるように最適化されています。これらのハードウェアを搭載したマシン上では、画像推論や、音声認識といったディープラーニングのモデルを使用した推論処理を高速に実行できます。

ディープラーニングを利用したアプリケーションの開発では、アプリケーションの使用に対応したモデルを構築します。しかし、学習用データの収集から、データの整形、データをもとに学習のステップなどの時間のかかる専門性の高い作業が要求されます。

その点、OpenVINO ツールキットでは、利用可能なアプリケーションで主に利用されるディープラーニングのモデルを学習済モデルとして60種類以上のモデルを利用可能な状態で公開しており、学習のステップを簡略化して開発を進められます。

小売りや製造業から医療分野まで 多種多様な業界で使われている

OpenVINO ツールキットでは学習済みモデルを多数公開し、ディープラーニングの活用をより身近にする製品であるため、すでに海外ではさまざまな業種・業界でOpenVINO ツールキットが使われています。

実店舗向けに提供される高速で高精度な客動線の推論

画像出典:PixaBay

アドバンテックは、実店舗向けに客動線や行動を分析、可視化して、顧客のニーズや行動の理解を支援することで、効果的な販売、サービス、顧客管理における課題を解決するUShop+ アプリケーションを提供しています。同アプリケーションはOpenVINO ツールキットを活用しており、店舗ごとの要件に応じて店内の人体特定や顔認識をリアルタイムかつ正確に検出できます。

実店舗が抱える課題は、オンラインショップと同じような顧客行動による商品提供、また販売後の顧客管理状況などを把握することです。顧客ごとに手に取った商品や、購入した商品の種類、どの商品への関心があるのか、どのように店内を動いたか、どの店員とコミュニケーションをとったのか、などの膨大な情報を収集して、簡単に管理することができるシステムは、高レベルな販売サービスの提供に役立ちます。

これらの必要な情報を収集するにあたり、小規模の店舗からメガストアを含め、さまざま環境化で効率よく認識処理を導入する必要があります。システムの開発にあたり、OpenVINO ツールキットを使用することで、人間の頭部や身体を正確かつ高速に検出できるようになりました。

アドバンテックが提供する実店舗向けの分析システムは、顧客の行動を理解して、販売サービスを改善するために必要な情報を店舗ごとに最適化された状態で提供します。OpenVINO ツールキットは、高速でさまざまなハードウェア上での動作に最適化されたディープラーニングを活用したアプリケーション開発を支援します。

製造ラインにおける高精度で柔軟な不良品検出システムの構築

画像出典:Pixabay

NexCOBOTではAIを活用した新しい柔軟なモジュール式のロボットソリューションを提供しています。人工知能による識別能力の向上と、ロボットによる効率化を統合して、製造業における新しいレベルの精度と効率を支援します。さまざまな製造プロセスの効率化のために、ほかのロボット制御システムとの統合が容易であり、環境や条件に左右されない柔軟で高精度な検査システムを設計しているのが特徴です。

従来のシステムでは、固定の環境とルールに基づいて機能します。これは環境の変化への対応が難しく、たとえば照明による明度の変化や、ほこりなどの外部的要因により精度と品質に悪影響を与える可能性があります。これらの課題に対して、AIをベースとした手法を導入することで、環境や条件への耐性が向上しました。さらに検査パターンや色、形状、配置状態などの識別にも柔軟に対応可能なシステムの構築も可能です。

また、複雑化を避けるために完全なソリューションを提供するのではなく、既存システムへ統合可能なユーザーの環境に応じた高いカスタマイズ性を持ったシステムを提供しています。そのため、導入と運用が容易なOpenVINO ツールキットによる推論機能が導入されました。OpenVINO ツールキットでは、任意の学習モデルを最適化できるため、新たな識別パターンへの対応時間の短縮や労力の削減を実現できます。またインテル社が提供する多くのハードウェア向けに事前に最適化されているため、高速な推論機能を簡単に利用でき、さらにはハードウェアの変更やメンテナンスにも対応できます。

システムが提供する機能はほかのソフトウェアからも扱える形式で提供されるため、ユーザーが特定のアプリケーションへ統合したい場合や、独自のGUI を設計したい場合に対応可能なカスタマイズ性を持ちます。これらのシステムにより、利用者の時間短縮や作業効率の向上、収集されたデータをもとにした分析が可能となり、製造プロセスの改善を促進しています。

気胸の検出などに利用されるX線のAI推論を最適化

画像出典:PixaBay

GE Healthcareでは、X線検査における重篤な症状の早期発見を支援する最新のX線システムを提供しています。気胸の検出にはディープラーニングをベースとしたX線画像の分析を導入しており識別能力の高いシステムに設計されています。X線画像の推論にはOpenVINO ツールキットが使用されており、症状の検出を高速に診断することができます。

ディープラーニングをベースとした正確な検査により、膨大な統計から重大な症状を患っているケースかどうか迅速に診断できます。診断結果による処置の優先順位の決定と患者の検査にかかる時間を短縮させることが可能です。

X線システムのパフォーマンスは一時間あたりに検査数として表されます。検査時間のうち、患者と装置のポジショニングは時間の予測が難しく、画像取得後の作業をできるだけ短縮して迅速に行う必要があります。検査にディープラーニングを利用した機能を導入すると、検査時間が増加する可能性がありますが、X線画像を取得した時点で特定の症状を検出できることは明確なメリットがありました。

システムでは気胸の推論と利用者への表示まで、数秒以内を目標とされ、この目標を達成するために、OpenVINO ツールキットによる推論機能が導入されました。

導入により最適化されていない状態と比較して、3.3倍の高速化が得られました。全体的な時間のうち、X線画像から1秒未満で気胸を検出できるように最適化されています。数秒以内に高精度の検査ができるようになり、潜在的に危険な患者を迅速に検出でき、直ちに治療を受けられるように優先順位の決定が可能となりました。

無償で使えることが最大の特徴 ディープラーニング活用を加速

OpenVINO ツールキットは、ディープラーニングを活用するアプリケーション開発を支援するために、画像処理ライブラリーや任意の学習モデルによる推論処理の実行を最適化するディープラーニング・デプロイメント・ツールキットを提供しています。

高性能な推論機能の提供と、高いカスタマイズ性により、ハードウェアの消費電力、特定の環境への対応や顧客の条件に対して柔軟に対応できる組み合わせを選択可能です。また、あらかじめ学習された学習済モデルを利用することで、誰でも簡単にディープラーニングを活用したアプリケーション開発を進められます。

なによりも、OpenVINO ツールキットは無償で利用可能なのが最大の特徴です。下記のインテル社のサイトから入手できます。

エクセルソフト株式会社では、定期的に技術セミナーを開催しており、OpenVINO ツールキットを使用したアプリケーション開発の流れや利用するコンポーネントの説明を行っています。ワークショップでは実際にOpenVINOを利用したアプリケーション開発を体験できるように環境を用意しております。開催予定のセミナー情報はこちらからご確認ください。

参加費無料のウェビナー(オンラインセミナー)のお知らせ
『海外で注目を集めるインテル社のAI導入ツールとは』


Ledge.aiでは、毎月数回、AIについてさまざまな視点からディスカッションをする「Ledge.ai Webinar」を開催しています。

9月15日(火)17時~18時の時間に開催するウェビナーでは、本稿で紹介しているインテル社の「OpenVINO ツールキット」について、テクニカル・コンサルタントの久保寺 陽子氏と、ライオンブリッジジャパン株式会社 AI事業部長Cedric Wagrez (セドリック・ヴァグレ)氏をゲストに迎え、いま世界でAIがどのように実装されているのか、トレンドを聞いていきます。

参加費は無料ですので、ツールを使って、ディープラーニングの実装に興味のある方はお気軽にご参加くださいませ。

詳しくは、下記の参加申し込みページをご覧ください!