MITが開発した「Personalized Deep Learning」が自閉症児の意図を読む

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相手の感情が理解できない…。1つのものに執拗に執着してしまう…。自分の感情を言葉で表現できない…。

このように社会性やコミュニケーション能力が低いという特性を持つという自閉症。ご存知でしょうか?

主な特徴として、

  • 社会性・対人関係の障害
  • コミュニケーション能力や言葉の発達の遅れ
  • 行動と興味の偏り

    があり、場合によっては正常に社会生活をおこなうことができないことが多々あります。

    自閉症児に対しては、個々の特性を理解し、それに合った環境での療育が不可欠。現在は他人の表情を読み取ることが困難な自閉症児に対して、セラピストが絵や写真を用いてどの表情がどの感情に対応しているか教えており、セラピストと自閉症児の意思疎通は欠かせなくなっています。

    一方で、セラピストが感じた自閉症児の気持ちと自閉症児の本人の気持ちの相関関係は5割程度という研究結果もあります。

    そこでそのズレをなくそうと、MITが開発したのが「Personalized Deep Learning」。セラピストに代わり子供の興味や気持ちを推測し、セラピストが自閉症児と接するときの手助けをおこないます。

    Personalized Deep Learningは個々を対象としたディープラーニングが可能

    AIについての認知が広まっている中、目新しい「個別化された」ディープラーニング。

    このPersonalized Deep Learningが通常のディープラーニングと違うのは、膨大なデータを必要とせず個々のデータを用いてディープラーニングができるという点です。

    今回このような方法がおこなわれたのは、それぞれまったく違う性質を持っている自閉症児に対して、同じようなデータが膨大に必要である通常のディープラーニングではうまくいかなかったからだとか。

    その問題を解決するために、手足の動き、表情、音声、生理データをもとに自閉症児ひとりひとりに対して学習がおこなわれています。

    実際にPersonalized Deep Learningを用いることで、自閉症児の感情の推測だけでなく、痛みの感知、アルツハイマー病の進行予測精度の向上にもつながっているそう。

    SoftBank Robotics「NAO」に搭載。自閉症児には好感触

    Personalized Deep Learning はSoftBank Roboticsが開発した「NAO」に搭載されており、表情をデモし、子供にそれを真似させたり、表情に対して適切な反応を教えたりします。

    NAO
    SoftBank Roboticsが開発した世界中で販売されているコンパニオンロボット。インタラクティブでカスタマイズが可能であり、受付やコンシェルジュとしても導入されている。

    こちらが実際にNAOが自閉症児にどの表情がどの感情に対応しているかを教えている動画です。

    「Introduction Stage」「Teaching Stage」「Practice Stage」の3つの段階があり、「Introduction Stage」から順に進んできます。

    • Introduction Stage
      自閉症児の気持ちを推測しながら、自由に遊ぶ

    • Teaching Stage
      セラピストが見せた顔写真に対して、ロボットがその感情を体で表現して教える

    • Practice Stage
      ロボットが見せる表情がどの感情を表しているかを自閉症児があてる練習をおこなう

    この動画を見てもわかるように、手足の動きを認識しそこから自閉症児の気持ちを推測しています。

    ここで用いられているのは、人の姿勢を可視化するOpenPose。推測の部分だけでなく、認識の部分でもディープラーニングが使われています。

    OpenPose
    ディープラーニングを用いて、人の体を検知し、検知した結果を可視化するライブラリ。

    参考記事:深層学習で人のポーズを解析する「OpenPose」試してみたら凄かった。店舗分析やヘルスケアなど、活用シーンは無限大

    実際に3〜13歳の自閉症児(日本人17名セルビア人18名)を対象として実験も実施し、飽きた反応や眠たい反応を見せる子供や、興奮で騒ぎ回る子供などさまざまな反応を見せる子供がいた中、30分間のセッション中でロボットに対して心を開いた子供もたくさんいたんだとか。

    ロボットが分かりやすく感情を表現し伝えるので、自閉症児にもストレスが少ないという点がロボットによる療育の利点なのかもしれません。

    「AIは感情理解に向いていない」の常識は崩されるのか

    相手の感情を認識し、適切なアクションを取るという面では、AIよりも人間のほうが優れていると思われていますが、もしかすると偏見がなかったり細かい動作も見落としがないという点で優れているかもしれません。

    今回は自閉症児の療育手法として用いられましたが、そのほかの病気や行動の分析など今後様々な分野で利用されることが考えられます。医療へのAI活用に今後も期待しましょう。

    Source:Personalized “deep learning” equips robots for autism therapy