PFN、ディープラーニングの研究開発基盤をPyTorchに移行。Chainerはメンテナンスフェーズへ

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Preferred Networks(以下PFN)は、研究開発の基盤技術であるディープラーニングフレームワークを、自社開発のChainerから、PyTorchに順次移行すると発表した。今後Chainerの開発はバグフィックスおよびメンテナンスのみとなる。

Chainerファミリー(ChainerCV, Chainer Chemistry, ChainerUI, ChainerRL)についてもこの方針に従う。PFNが運用するディープラーニング入門:Chainerチュートリアル(外部サイト)についても今後コンテンツのリニューアルを検討予定だという。

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同時に、PyTorchを開発する米FacebookおよびPyTorchの開発者コミュニティと連携し、PyTorchの開発に参加する。Chainerは、12月5日に公開されたメジャーバージョンアップとなる最新版v7をもってメンテナンスフェーズへ移行。Chainerユーザー向けにPyTorchへの移行を支援するドキュメントおよびライブラリを提供するという。

PFN代表取締役社長である西川徹氏のコメントは以下の通り。

――西川
「Chainerは、ディープラーニングのフレームワーク黎明期にあってPFNの基盤技術としてトヨタやFANUCを始めとするパートナーとの研究開発を支え、また、NVIDIAやMicrosoftなどの世界的企業とPFNの協業のきっかけにもなりました。これまでパートナー、コミュニティ、ユーザーにご支援をいただきながら開発を進めてきたChainerからPyTorchへ移行することは、PFNにとって非常に大きな決断です。

しかし、現在最も活発に開発が進むフレームワークのひとつであるPyTorchの開発に、PFN自ら参加することで、Chainerを通じて蓄積した技術を活かすとともに、より競争力の源泉となる分野に開発リソースを集中投下することで、ディープラーニング技術の社会実装をさらに加速できると確信しています」

研究者・開発者から幅広く支持されたChainer

PFNが開発・提供しているChainerは、2015年6月にオープンソース化されて以来、PFNの研究開発を支える基盤技術として事業の成長に大きく貢献してきた。

PFNが考案したDefine-by-Run方式は、複雑なニューラルネットワークを直感的かつ柔軟に構築できることから研究者・開発者コミュニティの支持を集め、現在主流のディープラーニングフレームワークのスタンダードな方式として広く採用され、ディープラーニング技術の発展を加速させる一翼を担った。

しかし近年、フレームワークが成熟したことで、ディープラーニングフレームワークそのものが開発の競争力となっていた時代は終わりを迎えつつある。細かい差異による差別化競争を継続するよりも、ディープラーニングユーザーが選ぶディープラーニングフレームワークにおいてコミュニティを継続的に発展させ、ディープラーニング技術のさらなる進化に向けて健全なエコシステムを築いていくことが重要だ、とPFNはリリース上でコメントしている。

PFNのディープラーニングの研究開発基盤をPyTorchに移行

こうした状況を受け、PFNはディープラーニングの研究開発基盤をChainerの開発思想に最も近いPyTorchに移行。PyTorchをChainerの開発思想に最も近いとする理由として、具体的には、Define by Runの思想を早くから採用したこと、書き方が近いことがあげられる。

「PyTorchの設計や実装に、Chainerを含む先行OSSが影響を与えたことはPyTorchの論文でも言及されています。」(同社広報)

Facebookを含む熱心な開発者コミュニティを擁するPyTorchは、近年、ディープラーニングの学術論文に最も頻繁に用いられているオープンソースのディープラーニングフレームワークのひとつとなっている。

PyTorchに移行することで、既存のChainer資産を活用しつつ、最新の研究成果を効率的に取りこむなどして、自らの研究開発を加速することが可能となる。今後、PFNはFacebookのPyTorch開発チームやオープンソースコミュニティと密接に連携しながら、PyTorchの開発に貢献するとともに、自社で開発するディープラーニングプロセッサMN-CoreのPyTorchサポートなどを推進していく、としている。

FacebookのAIインフラバイスプレジデントであるBill Jia氏、Toyota Research Institute (TRI)CEOのGill Pratt氏は以下のようにコメントしている。

――Facebook Vice President of AI Infrastructure, Bill Jia
「PyTorch開発をリードするコントリビュータとして、機械学習の先駆者であるPFNが、今後の開発にPyTorchを採用すると決めたことを大変うれしく思います。優れた分散学習機能と推論性能を備えたPyTorchは、PFNの最先端の研究を支援し、機械学習モデルの迅速なプロトタイプ化と顧客環境への実装を可能にします。同時に、機械学習ツールの深い専門知識を有するPFNが提供するコードは、PyTorchコミュニティ全体に大いに貢献してくれるでしょう」
――Gill Pratt, CEO, Toyota Research Institute(TRI)
「TRIとTRI-ADはPFNのPyTorchへの移行を歓迎いたします。PFNはChainerを生み出し継続的に開発してきたことにより、これまで我々との共同研究開発および自動運転技術の先行開発に大きく貢献してきました。TRIとTRI-ADはPyTorchも使用してきたため、PFNの今回のPyTorch採用により、PFNの持つディープラーニング技術を我々が円滑かつ速やかに応用できるようになると信じています」

ONNXでの立ち位置は?

また、異なるディープラーニングフレームワーク間でAIモデルの相互運用性の実現を図る取り組みである「ONNX(外部サイト)」でのChainerの立ち位置についての回答は以下。

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「Chainer v7でONNX出力機能を標準サポートしたことで、ChainerのモデルがONNXで出力できるようになっている。(互換性)。ONNX出力機能についても、Chainer本体のポリシーに従ってメンテナンスを行うので、その範囲では引き続き互換性は担保されるはず。また、PFNは現在ONNX workshopなどONNXの標準化に関する議論に参加しており、今後も継続的にコミュニティでの活動を行う予定。(同社広報)」

Source:
Preferred Networks、ディープラーニングの研究開発基盤をPyTorchに移行
Chainer/CuPy v7のリリースと今後の開発体制について

※2019年12月5日18:20 広報からの回答を追記。