日本は“AI後進国”なんかじゃない。世界に誇る深層学習技術 ── Preferred Networksが「全自動お片付けロボット」を発表

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10月15日、Preferred Networksが「全自動お片付けロボット」を発表。技術博覧会CEATEC JAPAN 2018にてその実物を披露しました。

このロボットは、「これを、あそこに運んで」といった人間の指示を理解し、部屋のなかに散らかった洋服やおもちゃなどといった物体を認識、対象をアームで掴み指示された場所へ運ぶことができます。

それだけでも驚きなのですが、じつは中身には世界と肩を並べるほどの、日本の高度な技術が詰め込まれています。

その技術力の高さはまさに、“AI後進国”というレッテルを吹き飛ばすほど。

「全自動お片付けロボット」には、日本産の深層学習技術が詰まっている

10月16日CEATEC初日、Ledga.ai編集部では、実際に披露された様子を取材しました。

ロボットが、部屋にある物体をどのように認識しているかをディスプレイしている

 
デモンストレーションでは、

  • 「アレを洗濯カゴのなかに入れて」
  • 「ごめん、やっぱり棚の上に置いて」

といった人間の指示を理解し、動作していました。

まさに、人とロボットが自然なコミュニケーションを取っていた瞬間といえます。

こちらのロボットの内部には、Preferred Networksの自然言語処理・画像認識といった深層学習技術が活用されています。

ご存知の方がほとんどだと思いますが、Preferred Networksは日本の企業。また、ロボットの学習には同社が開発した深層学習フレームワーク「Chainer」を使用。さらにロボットの筐体にはトヨタ。つまりこのロボットは、日本の技術の結晶ということです。

そして、その深層学習の手法も“世界レベル”といえるほどの高度なものなのです。

かわいらしいロボットの中身には、長い研究の成果。世界レベルのロボティクス・自然言語・画像認識技術

じつはLedge.aiでは、こちらのロボットの前身となる研究を過去に取材していました。

当時はまだ自立型ロボットではなく、バキューム式のアームでピッキングをおこなっていました。

取材後、この研究は国際的なカンファレンス「ICRA(ICRA(International Conference on Robotics and Automation)」で、Human-Robot Interaction(HRI)部門においてBest Paper Awardを受賞。世界的にも素晴らしい研究だということが認められたのです。

また、今回発表された「お片付けロボット」では、画像認識の部分が特に強化。今年9月、Preferred Networksは、Googleが開催した物体検出コンテストで準優勝をしました。さらに優勝チームとのスコアの差もわずか“0.023%” 今回のロボットでは、その手法をもとに実装をしたということです。

Preferred Networksが見続けているのは、常に“未来”のビジョンだ

展示ブースでは、以前にも取材させていただいた海野さんがプレゼンテーションを担当。そのなかではこう語っていました。

――海野
「重要なのは、これからどういう未来が待っているか。

深層学習技術によって、現実世界のあらゆることを機械が理解できるようになるということは、現実をこれまで以上に、既存のITシステムと繋げられるということ。

専門家にしか扱えないロボットが、対話可能になることによって、誰にも扱えるようになる。

これからいろんな革新が起きていくでしょう」

海野 裕也
Preferred Networks 知的情報処理事業部 事業部長

過去の取材でも、機械と現実世界との結びつきの研究は、Preferred Networksにとっての“意思表明”であり、これから継続的に向き合っていくテーマだと語っていました。

このロボットもまた、Preferred Networksにとっては“中間地点に過ぎない”のかもしれません。

Preferred Networksが、今後どんな未来を作り出してくれるのか。素直にワクワクが止まりません。

“AI後進国”だと誰が言った? 場は開けている。ポジティブなアクションを

Preferred Networksの今回の発表には、同じ日本人として非常に感動し、勇気をもらいました。

日本にはこんなにもすごい技術が存在します、すごい方々が存在します。そして、Chainerコミュニティをはじめ、AIを手を動かし学ぶ場・議論する場は開けています。

日本は決して、“AI後進国”ではありません。悲観的になるのは終わりにし、私たちもポジティブなアクションを起こしていくべきです。