凍結した会議を共創の場へ。AIによる分析とコンサルタントの知見が生み出すシナジーとは

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ビジネスの現場におけるテクノロジーを用いた新たな業務改善事例は、日を追うごとに増え続けている。なかでも、RPAやOCRなどの急速な普及により、定型的な業務の生産性が向上した例は少なくない。

一方、会議や交渉といった対人コミュニケーションによる意思決定の場は、ほかの業務とは違い事例が乏しいのが現状だ。

そんななか、富士通アドバンストエンジニアリング(以下FAE)は会議の様子と発話キーワード量を分析し、情報伝達が主体の会議を新たな価値が創出される『共創型』の会議に昇華させる仕組み「AI会議改革ソリューション」の開発に取り組んでいる。

FAEは、この「AI会議改革ソリューション」の開発を組織改革を得意とする総合コンサルティングファームの株式会社フューチャーマネジメントアンドイノベーションコンサルティング(以下FMIC)と共同でおこなっている。

なぜ、FAEはコンサルティングファームと手を組み、AI会議改革ソリューションの開発に踏み切ったのか。経緯をFAE イノベーション推進センター センター長の渡辺 佳男氏に話を聞いた。

コンサルの知見をAIに落とし込み会議を分析

AI会議改革ソリューションの特色は、AIによる分析と、コンサルタントによる直接指導を組み合わせたところにあるという。

日本でも有数の総合家電メーカーであり、総合ITベンダーでもある富士通。FAEは、富士通におけるAIやIoT、ブロックチェーンといった先端技術の研究開発を手がけ、培った技術力を武器に多くの困難な課題に対してソリューションを提供してきた。

FMICと進めた「AI会議改革ソリューション」の共同開発も、FAEに持ち込まれた難題の1つだったという。

――渡辺
「もともとは、組織変革におけるAI活用についてFMICから相談を受けたのが始まりです。

ただ、受託開発プロジェクトとして要求通りのモノを作るだけではおもしろくない。テクノロジーによる組織変革に関する知見は、我々のソリューション開発の糧にもなるはずだと考え、FMICとの共同開発を開始しました」

多くの企業に共通する業務のなかで、会議は特に課題が多いことから会議改革を目指したという。

FMICの培ってきた会議改革における知見とフレームワークを、FAEの技術力でAIに落とし込む形で開発がおこなわれた。

――渡辺
「実際にプロジェクトを始めると、コンサルティング業界の持つフレームワークや知見はAIとの親和性が高いことがわかりました」

FMICは、会議あるいはミーティングを6つに分類している。

会議の6分類

  • 共創
    参加者同士が活発に意見を交わし、新たな発想を生み出している状態
  • 共鳴
    参加者が深く思考し意見を交わすことで、課題解決、アイデアの具体化を行なっている状態
  • 共感
    一部の人が主導し、意思決定やアイデア交換を行なっている状態
  • 共有
    代表が発表する形で情報共有と多少の意見交換を行なっている状態
  • 伝達
    代表が情報伝達を行ないつつも、参加者の集中度は低い状態
  • 凍結
    一方的に指示が飛び、悪い緊張感が漂っている状態

AI会議改革ソリューションでは、会議の状態を上記の6つに自動で分類することで、会議の状態に応じたコンサルティングサービスを提供できるよう設計された。

取得データの策定にはコンサルタントの知見が活きたという。

――渡辺
「会議の画像から姿勢を検知し、その時々の発話キーワード量と合わせて解析することで会議の質を分析する仕組みを作り上げました。

分析結果の質を向上させるため、コンサルタントにヒアリングをおこない重み付けをすることで、AI分析結果とコンサルタントの分析の差を小さくしていきました」

教師データはどのように集められたのか

AI会議改革ソリューションの開発には、会議内の様子を撮影した画像と録音した音声が教師データとして使われている。

画像に関してはまだしも、会議の音声には機密情報も含まれるため、収集が難しいように思える。

FAEは、音声自体を録音するのではなく、発話キーワード量を記録することで、この障壁を乗り越えたという。

――渡辺
「AIで会議を分析する際に重要なのは、話の内容ではなく、出席者がどれだけ自発的にコミュニケーションに参加しているかです」

渡辺氏によると、AI会議改革ソリューションは発話キーワード量に焦点を当て、内容ではなくその場の盛り上がりを分析することで、会議の状態を評価しているという。この手法を選択したことで、データ取得の障壁を下げることに成功している。

だが、音声情報自体は取得しないように設定したとはいえ、協力を依頼していた企業の反応にはやはりばらつきがあり、取得データはそれほど多くはならなかった。

そのため、自社で主催するハッカソンやチームでおこなうイベントの様子を追加し、完成にこぎつけた。

現在では、会議の様子を撮影した画像から会議の質を簡易分析することが可能だという。

組織改革コンサルとAI開発を進める意義

AIにより出力された結果を効率的な改善につなげるためには人の手助けが必須だと渡辺氏はいう。

実際、豊富な知見を持つコンサルタントによる分析結果の解釈とクライアントに対する直接的な指導により、実証実験では、共鳴、共創に分類される会議の割合が25%から51%へと、劇的に向上した。

――渡辺
「AI会議改革ソリューションは会議改革を起こすきっかけや手助けにはなりますが、人を変えるのは結局プロフェッショナルの仕事です。

つまり、AI会議改革ソリューションはコンサルタントの新たな武器であり、より良いサービスを提供する付加価値だということです」

現在、FAEとFMICはAI会議改革ソリューションを体験したい参加企業を募っている。