Webでのマーケティング活動にAI(人工知能)を使うケースが増えている。利用者に対してパーソナライズされた情報をレコメンドするような取り組みは、広く普及していると言っても過言ではないだろう。
株式会社プロトコーポレーション(以下、プロト)が運営し、中古車情報で市場をリードする「グーネット中古車」では、AIソリューションを活用したことで、中古車の見積りや来店予約等のコンバージョン率を2倍に向上させられたそうだ。中古車といえども、車体価格は数百万円の自動車も少なくない。つまりは、見積りや来店予約のCVRが大きく改善されるということは、企業にとってそれだけインパクトを与えた成果なのだ。
CV数の向上とエンゲージメント施策の改善でAIを活用
プロトは、掲載車両数40万台以上のグーネットを中心に、新車、中古車、整備などをはじめとした自動車関連情報ならびに生活関連情報を掲載するサイトを運営している。月間のページビュー数はおよそ1億PV以上で、ユニークユーザー数は月間900万ユーザーとのこと。
そんなプロトが活用しているAIの領域は、プロモーション広告による来店予約数の増加と、レコメンデーションによるパーソナライズしたエンゲージメント施策のふたつだ。どちらもAppier(エイピア)のソリューションを導入したことで、それぞれの目標や課題を解決できた。
前者の来店予約数の増加では、顧客の将来の行動を予測し、次にリターゲティングに最適な顧客を検出したというもの。こちらは、Appierの「AIXON(アイソン)」を導入した。これは「1日に2回製品を閲覧した」「2日に3回サイトに訪問があった」といったセグメントを構築し、このセグメントに対象となる利用者に対してプロモーション広告を打った、という内容だ。結果的に、コンバージョン数は2倍になったという。
そして後者のエンゲージメント施策においては、従来はルールベースによるプッシュ通知をエンゲージメント施策として採用していた。そこで、Appierの「AIQUA(アイコア)」を活用したレコメンド通知によって、ユーザーが次のステップを完遂するための製品をAIがレコメンドするように変わったそうだ。この結果、CTRは2倍に向上した。
自社開発は開発する期間がネックで進まなかった
「もともと自社内でAIの開発にチャレンジしていました。ただ、開発期間がネックで、なかなか進みづらかったのです」
こう語るのは、グーネットなどを運営するプロト の馬場 大輔氏だ。
もともと同社がAIなどの活用によって掲げていた目標および解決したい課題は以下だ。
・オンライン予約件数の増加
・ウェブサイトの見積りや来店予約などのコンバージョン率の増加
・ペイドメディアおよびオウンドメディア療法でのリターゲティング施策のROIの改善
そこで、プロト では、自社内でAIの開発に取り組んだ。しかし、開発時間が長引くなど、開発段階でのハードルから実装まで難航していたという。
そんなとき、出会ったのがAIテクノロジー企業のAppierだ。当時のAppierとの関わりについて、馬場氏は次のように話す。
「当初から『グーネット中古車などのサービスを改善するには何をするべきなのか』など、さまざまな部分でコンサルティングしていただきました」(馬場氏)
また、Appierのカスタマー サクセスマネジメント シニアマネジャーである小林 慎氏は、プロトとの取り組みについて「すでに目指されている目標や課題が明確だったので、非常に進めやすかった」と感想を述べる。
そして大西氏は「AIQUAを使ったレコメンデーションによるプッシュ通知も、従来に比べてコンバージョン数やCTRを大幅に向上させられました。
それぞれのコンバージョンは、お見積りをいただく件数や来店予約の件数などに指標を設けています。扱う物件は自動車なので、コンバージョンが向上したことによる事業へのインパクトはとても大きいんです」と言い、効果的なAI活用であることを話してくれた。
「AIツールの活用がAppierのツールがきっかけで広まりつつある」
Appierの小林氏は、AIXONについて「ユーザー様がスコアリングしたりセグメントしたりするAIモデルを標準のテンプレートとして備えているところが特徴です」と話す。
AIXONは、アプリやウェブサイト、CRMといった、さまざまなプラットフォームで取得したデータを統合させるツールだ。そして、自動機械学習モデルのシナリオベース予測を搭載しているため、コンバージョンから離脱予測、さらには“特定のページを訪れる可能性”など、顧客の行動をリアルタイムで予測できる機能を備える。
小林氏は「我々は広告のビジネスも取り組んでいるため、ディスプレイネットワークなど複数のソースから得られたお客様の情報を、キーワードという形でサマリーしたものを独自で持っています」と続ける。
自社ツールだけでなく、複数のソースデータを組み合わせてキーワード化し、モデルに掛け合わせているのはAppierならではのポイントだ。
さらに、Appierのツールは効果はもちろんのこと、使い勝手も良いようで、プロトの大西氏は「社内でもツール活用が広まりつつあります。社内で認知を獲得したことで、『自分たちの部署でも使ってみたい』という声も挙がっています」という。プロトではグーネットをはじめ、さまざまなサービスを展開しているため、全社的に横断してAIなどの活用に前向きだそうだ。
プロト社内でのAI活用についてAppierの小林氏は「プロト様には、ここ最近、弊社ツールを頻繁にご使用いただいています」と話し、プロトの大西氏も「気が付くと使っているほど浸透しています」と続けた。
「AIを使う」と意気込んで使うのではなく、業務の中に自然と浸透するようなツールは非常に優れている証だと言える。
導入前は“懐疑的”だったツールの導入 払しょくできた理由は?
プロトがAppierのソリューションを導入開始したのは2019年のこと。いまではプロト社内からも絶賛されるほど、Appierのソリューション確固たるポジションを築いた。しかし、実はレコメンドモデルを活用したプッシュ通知をはじめ、プロト社内ではツール導入について当初、いわば懐疑的な見方もあったそうだ。
プロトの大田 真平氏は次のように当時を振り返った。
「導入当初、弊社の課題や目的を達成できる“しっくりとくる”ツールが見当たらなかったんですよね。
それこそ当時は、一般的なDMP(データマネジメントプラットフォーム)の導入などを検討していました。ただ、DMP導入から構築していくことは時間がかかると判断していたんです。
そんなとき、たまたまイベントでお会いしたときに『これが今、自分たちの課題を解決できるツールである』とピンときました。そこからはとんとん拍子で話が進み、2,3ヵ月で導入まで決まったんです」(大田氏)
大田氏はさらに「小林さんをはじめ。Appierさんに手厚いサポートをいただいているのは本当に大きい」と語る。
「プロトとして、ユーザー様との接点を増やしていくなど、さまざまな方法でユーザー様に満足いただくためにも、レコメンデーションなどの技術を使うことは重要だと考えています。
また、小林さんをはじめAppier様には助けていただいている部分も多く、手厚いサポートを受けられることもあって、今後も期待しております」(同氏)
さらに、同社の馬場氏からも「世界観をいっしょに作っていけるパートナーと出会えた」と話す。
「これから先、ユーザー様それぞれに『必要な情報』を提供させていただく、ということはより重要視されていくと思います。
One to Oneマーケティングなどもそうですが、Appier様のような世界観をいっしょに作れるパートナーを出会えたことはうれしく思います」(馬場氏)
そして同社の大西氏からは「個人的にも非常に便利なツールを使わせていただいていると実感しているので、今後は別の事業や視点でも使っていきたいです」と今後の展望を交えて感想を聞いた。
プロトのように、導入前はAIなどの先端技術の導入について「不安視」するような企業も少なくない。だが、実際に使ってみて実感できたこと、豊富なサポートを提供してくれるパートナー選びなどはさまざまな企業にとって通じるような、興味深い話だった。