AI本書評:『AIにできること、できないこと ビジネス社会を生きていくための4つの力』(藤本浩司/柴原一友著)

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概要:「文系人材」にもわかるようにAIにできること・できないことを紐解く

AIが「できること、できないこと」を明らかにしたうえで、AIの基本技術やビジネス活用方法、AIと共存する未来の姿を探っていく一冊。本書サブタイトルにある「4つの力」は、知性がある、とみなす4つの要素を示しており、この要素をもとにAIにできること、人間に求められている能力を考察している。

著者の藤本浩司氏は、AI導入支援を手掛けるテンソル・コンサルティングで代表を務める。これまでジェーシービーや銀行など金融業界を中心とし、商社、化学、アパレル業界などさまざまな大手企業でのAI活用を推進してきた。

>>書誌情報

ターゲット層は?

  • AI初心者(ビジネスパーソンや学生をはじめ、AI専門家でないすべての人)
    • AIがどんなものかという勘所を知りたい人には最適
  • 紹介されている導入事例数はあまり多くないものの、課題設定フェーズの流れが詳しく書かれている

「AIが知性を持つ」とはどういうことか?

この本の構成は以下のとおり。

1章 そもそもAIとはなにか
2章 AIの実態
3章 AIの中身
4章 AIのビジネスでの活用
5章 未来

AIの歴史から始まり、画像認識や予測などさまざまな分野のAI概要を紹介、教師あり学習などAIの作られ方……という、AI入門書での「よくある」流れから始まる。しかし、2章後半では「AIが知性を持つ上で重要な要素」に着目する。知性を「自分で考えて環境に対応し、よりよい成果を達成する能力」と定義して、課題を自分で見つけて解決するために必要な力を以下の4つの要素に分解している。

動機:解決すべき課題を定める力(解くべき課題を見つける)
目標設定:何が正解かも定める力(どうなったら解けたとするかを決める)
思考集中:考えるべきことを捉える力(解く上で検討すべき他所を絞る)
発見:正解へとつながる要素を見つける力(課題を解く要素を見つける)

これがサブタイトルの「4つの力」なのだが、いま世の中にあるAIはこれらの要素を満たしているのか?という側面からAIを解説する手法は、他のAI本ではあまり見かけない。いくつか入門書を読んできた人にも、新鮮に映るだろう。この4つの力(本書では4要素と呼ばれる)は、3章以降でも登場し、AIがどんなものかを理解する助けになる。

文系にもわかりやすい「ディープラーニングの中身」の解説

続く3章の「AIの中身」は、技術者でない人にもわかりやすく、各分野のAIでできること・できないことを解説している。たとえばこの章のはじめにある「ディープラーニングの中身」は、動物の画像を見てパンダかどうか見分ける、という例をもとに、ディープラーニングの処理プロセスを説く。

  • 人間はパンダと他の動物を「目の周りが黒い」「体が白色と黒色で占められている」などの特徴から見分ける
  • ディープラーニングも人間と同じで、パンダっぽい特徴を多く持つ画像をパンダと判断する
  • しかしコンピュータは計算しかできない(数値しか扱えない)。ディープラーニングでの「学習」とは、画像の各要素が「パンダっぽさ」にどれほど影響しているか調整すること
  • すべての画像について、パンダっぽさが正しく計算できるようになるまで根気よく調整を続ける

厳密な点は抜きにして、ここまで分かりやすいディープラーニングの説明はそうそうお目にかかれない。多種多様な業界でAIに関するセミナーを50回以上開催してきた、という著者の経験に裏打ちされたものだろう。

同様に、言語系AI、ゲーム系AI、予測系AIのそれぞれの特徴や判断プロセス、人間との違いがわかりやすく説明されているので、気になられた方はぜひ一読を。AIを開発して運用し続けるには、あなたが思う以上に人間の手が必要だということがわかるはずだ。

AI導入事例から学ぶべきは、成果より課題設定の過程

個人的に興味深かったのは、4章「AIのビジネスでの活用」。紹介されている事例数こそ多くないが、課題設定の方法や、目標を定めることの難しさについてページ数をさいている。

現在のAIは、動機(解決すべき課題を定める力)と目標設定(何が正解かを定める力)を持っていない。つまり、AIは課題や正解を明確に決めないと実現できないので、人間がこれらを具体側に設定する必要がある。

実際に、AI導入がうまくいかなかった原因の多くは、実装より前にある課題設定フェーズでの失敗にある。解決したい問題は多いもののうまく絞りきれず、適切な課題を設定できないまま、いたずらに仮説検証を繰り返してしまう「PoC死」もこれに該当するだろう。他社のAI導入事例を見るときは成果に目が向きがちだが、自社の課題を見出して、設定する過程こそ、もっと語られるべきなのだろうと改めて考えさせられた。

1章から読み始めたときは「よくあるAI入門本かな?」と思ったが、良い意味で予想を覆された。入門書を2冊、3冊と読んできた人こそ手にとってほしい。

書誌情報

著者藤本浩司/柴原一友
発売日2019年02月19日
出版社日本評論社
ISBN9784535788770
価格2,200円(本体価格 2,000円+税)

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