AI本書評:『深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト) 公式テキスト』( 一般社団法人日本ディープラーニング協会 監修)

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ディープラーニングの歴史から導入事例まで幅広くカバーする、欲張りな本

「AIを知るために、初めての1冊にどの本を選ぶか?」という問いに答えるのはとかく難しい。書店には多くの入門書が並び、ECサイトで「AI 入門書」と検索しても、数百件もヒットしてしまう。

しかし、人工知能の歴史的変遷、ディープラーニングの手法、認識率を高めるテクニック、特許権や著作権といった権利問題など、1冊でAI・ディープラーニングの基本知識をカバーしている本がある。それが今回紹介する『深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト) 公式テキスト』。日本ディープラーニング協会(JDLA)が監修した、G検定(ディープラーニングを事業活用する知識を測る試験)合格のための本だ。

350ページ弱と、少し厚めの新書と同じくらいのボリューム感だが、図が豊富で読み進めやすい。著者には『人工知能は人間を超えるか』の松尾豊教授をはじめ、名だたるメンバーが名を連ねる。

>>書誌情報


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ターゲット読者は?

  • ディープラーニングG(ジェネラリスト)検定受験者
  • AI、AI関連用語を体系的に学びたい人
  • AI導入担当者

AI技術の解説がやや多い

この本は9つの章からなり、いずれも解説ページのあとに選択式の章末問題という構成だ。

第4章まではAI技術の歴史的変遷、第5、6章ではディープラーニングの概要と手法、応用技術の説明が続く。第7章は画像認識、自然言語処理といった研究分野ごとに、ターニングポイントとなった技術を紹介している。

残りの2章はビジネスでのAI活用を意識した内容になっている。第8章は製造や医療、農業などさまざまな業界でのAI活用事例紹介、第9章はAIを使った製品をビジネス展開するうえでのスタンスや、考えるべき事項(クライシスマネジメントなど)が述べられている。

AI導入プロジェクトの目的と使った技術を簡潔に知れる

「ビジネス活用」という観点でこの本を読むとき、特におすすめしたいのは第8章の「取り組み事例」欄だ。各産業でのAI導入の目的や集めたデータ、活用した技術の紹介、導入後の成果がシンプルにまとまっている。

鈴与株式会社/佐川急便株式会社/Automagi株式会社/株式会社エヌ・ティ・ティ・データ 取り組み事例(2017年5月)

  • 世の中に流通する多様な荷物の荷姿、寸法、取り扱い、汚破損などを画像から自動的に判別(ディープラーニングの技術を活用して開発)。
  • 実際の「物流倉庫内の荷物の画像」を学習。
  • 荷物の形状を最大1,000種類まで自動的に判別可能。
  • ロボットによる積み込み・積み下ろし作業や検品・梱包作業の自動化など、物流産業における様々なシーンでの活用の可能性あり。

出典:『深層学習教科書 ディープラーニング G検定(ジェネラリスト) 公式テキスト』8-7. その他領域における応用事例

加えて、8-8の「関連マトリクス」では、第8章で紹介されたAI導入事例が、画像認識・自然言語処理・音声認識・ロボティクス強化学習のどれに該当するかを表で示している。第7章と合わせて読むと知識が整理できて、データエンジニアなどの専門家やAI開発ベンダーと話を進めていくうえでも役立つはずだ。

逆に、第6章「ディープラーニングの手法」の前半部分は、勾配降下法、バッチ正規化などに触れており、実用という観点でここまで知っておくべきなのか?とも思う。知識がないよりはあるほうが良いのかも知れないけれど……。検定対策でない場合は一度スキップし、7章以降に目を通してから戻って読んでも問題ない。

G検定対策としてはもう一声ほしい?

G検定の受験対策として読むなら、この本はあくまで教科書として活用し、もう1冊関連問題集をプラスするのをおすすめする。本番での出題数は250題と多いこともあり、章末問題をコンプリートするだけでは足りないと思う。以下記事でG検定合格者が活用した参考書を紹介しているので、受験を考えている人はご参考に。

「G検定対策の本」で片付けてしまうのはもったいない

総じて、2020年現在AIに関わる上で、必要な知識がコンパクトにまとまっている一冊だ。本文には深くAIを知るためのキーワードが散りばめられ、技術の輪郭をつかみやすくなっている。

文章のレベル感も、ビジネスパーソンが理解するのにちょうどいい、読みやすい、という感触も受けた。技術書より簡潔に説明されていて、かつ入門本にありがちな、抽象的な概念で理解させるタイプの本でもない。書き手の主張が強すぎず、教科書として読みやすいのは専門家複数人の共著、だからなのか?このあたりのさじ加減は、以前読んだ『世界一カンタンで実戦的な文系のための人工知能の教科書』に近いように感じた。

私はこの数ヶ月で多くのAI入門書に触れたが、それでもこの本を手に取り、巻末の索引で用語を調べ、ついページをめくってしまう。まさに教科書のような一冊だ、と改めて思う。G検定対策本、の一言で片付けてしまうのは、本当にもったいない。

書誌情報

著者浅川伸一、江間有沙、工藤郁子、巣籠悠輔、瀬谷啓介、松井孝之、松尾豊 著/一般社団法人日本ディープラーニング協会 監修
発売日2018年10月22日
出版社翔泳社
ISBN9784798157559
価格2,800円 (税抜)

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