AI本書評:『やさしく学ぶ機械学習を理解するための数学のきほん』(立石 賢吾著)

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概要

この本は、機械学習に興味を持ち始めて理論を勉強したいと思っている初級エンジニアを対象とした本だ。

機械学習を簡単に実装できる環境はどんどん整ってきている。ライブラリが世界中の人々によって開発され、データセットも無料で手に入れることができるし、これらを用意して数行のコードを書くだけで、理論を知らずとも機械学習を体験できるようになっている。

一方で、エンジニアとして、中身をわからないものを使うのは一定の怖さもあるだろう。ただ機械学習の理論を勉強しようと思って、挫折した人も多くいるはずだ。この本では登場人物のアヤノとミオの会話を通して、機械学習の理論から数学、実装までを解説している。ある程度の数学の知識は必要だが、より深く機械学習が理解できる一冊だと思える。

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読者ターゲットは?

  • 機械学習にこれから取り組んでみたいエンジニア
    • Pythonの基礎を習得していることが望ましい
  • 機械学習に興味があるけれど数式がなかなか理解できない方
  • プログラムを書いて動かすところまでやってみたい方

数式を理解したあとに、プログラムで実践へ

機械学習は、エンジニアの中でもホットな分野のひとつであることは間違いないだろう。ただ、ライブラリなどを使って機械学習の実装はできるものの、数ある機械学習の手法の中でそれぞれどういう特徴があり、どのように違うのか? どういったときにどの手法を使うべきなのか? をしっかり理解できている人は少ないと思う。やはり、機械学習への理解を深めるためには、基本部分の数学的な理解は必要だ。

この本はアヤノとミオという2名の会話形式で進む。アヤノは機械学習勉強中のプログラマー、ミオはアヤノの友人で機械学習の研究を元々やっていたという設定だ。
アヤノがわからない部分をミオに聞き、ミオが説明をしていくという流れで進んでいくため、一般的な数学の本よりも頭に入ってきやすい人も多いと思う。グラフなどが多いことも理解の助けになっている。

本の構成は以下の通り。

Chapter1:機械学習の重要性やアルゴリズムについて
Chapter2:回帰について
Chapter3:分類について
Chapter4:モデルの評価について
Chapter5:プログラム実装
Appendix:数学の補足説明と、Python環境について

Chapter1が機械学習の前段となる知識、Chapter2から4までが回帰・分類・評価に使われる数学の説明で、Chapter5は勉強した知識を元にPythonで実装するという形なので、計2回それぞれの数式と向き合うことになる。実装部分でつまづく場合は、理解ができてない証拠にもなると思うので、その場合は元のパートに戻って再度学習を進めるといいだろう。

数学に苦手意識がない人はテンポよく学べる

このような数学の本に関しては、読者からすると「やさしい」のレベル感が気になると思う。

ちなみに私(=書評を書いている飯野)は、高校生のときに数ⅢCは履修していて理系だった。大学・大学院では最低限の数学を必要に応じて学んだぐらいなので、機械学習で使われる微分積分や行列に強い苦手意識はないが、そこまでしっかりと学んでいたわけではないし、正直あまり記憶にない。これからの文章は、「そういうレベルの人が読んだ感想」という前提で読んでいただきたい。

エンジニアの中でどのくらい数学にアレルギーを持つ人がいるのか定かではないが、本の表紙やアヤノ・ミオというキャラクターの容姿から感じる印象よりは難しいと感じる人は多そうだ。微分・偏微分・合成関数・指数関数の計算などはある程度わかる前提で話は進んでいくので、「微分ってなんだったっけ?」というレベルの人には辛い。

アヤノとミオの会話がテンポよく進んでいくがゆえに、微分の計算のことや指数関数の細かい計算方法については本編では触れられていない。Appendixで途中式などの補足説明はされているが、数学に苦手意識がある読者はAppendixを見てもわからないことが多いだろう。その場合は、この本にたどり着く前に違う数学の本を学んだ方が良い。それか、この本でつまづいた部分を他の本で補うのがいいかもしれない。

逆に、数式がすんなり理解できる人にとっては、機械学習の基本の数学をテンポよく学べるので、非常に有用な一冊と言える。シンプルに書かれているが故に、一度理解できればあとから見返すだけでもいい復習になる本だとは感じた。

こういった会話形式でストーリーが進んでいく本では、会話に登場する2人のうち1人は初学者で、もう1人は教師となり初学者に対して教えていく流れが多い。この本でもそのフォーマットにのっとっているのだが、読者目線に立ち読者と一緒に悩まないといけないはずの初学者アヤノが、恐ろしいほどに理解度が高くさまざまなハードルを軽く超えていってしまう。「わからない」とは言いつつも数式の理解が早く、Pythonでのプログラミングも初めてと言いつつすんなりとライブラリも使いこなすので、突っ込みたくなった読者は多いと思う。おそるべき24歳だ。

ひとつの式よりも全体の流れを意識することが理解への近道

この本をパラパラめくっただけでは、自分の糧にはなりにくい。もし難しいと思ったら、数式を自分でも紙に書いてイチから順番に整理していくことが重要だ。

ひとつひとつの数式だけ追うのではなくて、なぜこの式を計算しているのか? 何がわかれば嬉しいのか? といった目的を忘れずに全体の流れを意識することで、理解が進むと思う。今まではなんとなく理解した気になっていた機械学習がより直感的にイメージできるようになるだろう。

書誌情報

著者LINE Fukuoka株式会社 立石 賢吾
発売日2017年09月20日
出版社マイナビ出版
ISBN9784839963521
価格2,838円

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