立教大学が、国内初となるAIに特化した大学院「人工知能科学研究科」(修士課程)を2020年4月に開設すると発表しました。
人工知能科学研究科では、機械学習やディープラーニングを中心としたAI領域について学習・研究できるカリキュラムの設置や、文理融合型プロジェクトを推進し、企業との産学連携による社会実装にも積極的に取り組む環境を設けます。
- 設置時期:2020年4月
- 募集定員:63名
- 所属キャンパス:池袋キャンパス
- 学位:修士(人工知能科学)
- 教員数:9名
- 開講形式:昼夜開講 <平日6時限(18:30~)+土曜日>を中心
- 選考方法:4月下旬以降に公表予定
社会科学とAIをかけ合わせる
研究科ではAIにかかわるELSI(”Ethical, Legal, and Social Implications”=倫理的、法的、社会的諸問題)を重点分野と捉え、AIの倫理を専門とする教員を配置。AI ELSIを学ぶ科目を1年次の必修にします。
研究科の特徴としては以下の4つです。
- 機械学習・ディープラーニングの本格的な学習
- 「社会科学×AI」による革新的な研究と人材育成
- 産学連携による「社会実装」プログラムの充実
- 昼夜開講形式で、社会人も学びやすい環境
研究科を卒業後のモデルとしては、AIサイエンティスト、AIエンジニア、AIプランナーやAIプロデューサーなどを想定。手を動かしAI開発を担える人材から、AIをビジネスへ活かせる人材へ幅広い人材を想定しています。
このあたりはJDLA(日本ディープラーニング協会)の取り組みとも重なります。AIで何がどこまでできるかを理解し、技術とビジネスを繋げられる人材が求められています。
カリキュラムでは、機械学習やディープラーニングなど、AI・データサイエンス分野を体系的に学べる科目を設置。企業のAI開発・事業開拓を授業内容に取り込み、社会での実践力を養成する科目をプロジェクトチーム体制で行うとしています。
- 基幹科目
データサイエンス概論/機械学習/人工知能概論/深層学習/先端科学技術の倫理/統計モデリングⅠ/複雑ネットワーク科学 - 基礎科目
情報科学概論/数理科学概論/社会情報科学概論/意思決定の科学/計算機科学概論/人工知能の哲学 - 応用科目
AIビジネス特論/自然言語処理特論/人工知能社会実装/認識技術特論/脳神経科学特論/統計モデリングⅡ/量子情報特論 - 演習・実習科目
Pythonプログラミング/機械学習演習Ⅰ/機械学習演習Ⅱ/深層学習演習Ⅰ/深層学習演習Ⅱ/社会モデリング演習/輪講Ⅰ/輪講Ⅱ/データサイエンス実習
人材でアメリカ・中国の後塵を拝する日本
金沢工業大学がAIの基礎科目を全学部全学科の必修科目にするというニュースに続き、教育機関におけるAI教育が加速しています。
世界では米中が圧倒的に人材に投資しており、AIの研究開発において大きくリードしていますが、日本ではそもそも政府のAI関連予算も少なく、2018年度の予算は米中の2割以下。AI人材も不足しています。
日本の教育機関によるAI人材育成の取り組みを見ても、数ヶ月の短期的な講座や、研究室単位での部分的な取り組みに留まっているのが現状。
鍵になるのが、カリキュラムが実践的かどうかという部分。演習で実際にディープラーニングを動かし、アウトプットをビジネスに活かすとしたらどうするか? それらのはどのくらいの工数で、いくらで可能なのかを考えること。理論だけでなく「社会実装」プログラムも充実させるということから、ビジネス面の演習も充実していそうです。
この大学院がAI人材の育成に大きく貢献することに期待です。