AIが監視する排水処理設備 昼夜の明暗や気象条件による水面の変化にも対応

このエントリーをはてなブックマークに追加

画像出典:Pixabay

京セラ株式会社、京セラコミュニケーションシステム株式会社、株式会社Ristは7月1日、京セラ滋賀野洲工場(滋賀県野洲市)の排水処理設備において、カメラを用いた排水センシングシステムとRist独自のAI(人工知能)画像分析技術を用いて、排水処理状態をリアルタイムに自動で良否を判定するAI自動排水監視システムを導入し、運用を開始した。

工場などの生産施設に設置される排水処理設備は、24時間365日運転することを前提に設計されている。排水処理の状況確認は、一定時間ごとに作業者によって目視確認が行なわれていたものの、人手不足や業務効率改善の観点から自動で監視する管理システムの開発が求められていた。しかし、屋外の排水処理設備では、点検する際の時間帯や気象条件などによって水面の見え方が異なるため、システムによる良否判定が難しく、作業者の経験が必要だった。

今回発表されたAI自動排水監視システムを使うことで、排水の処理状況をリアルタイムで監視できるようになる。

>> プレスリリース

昼夜の明暗や晴雨や風による水面の見え方が変化しても正確で安定した良否判定を実現

AI自動排水監視システムでは、対象となる排水処理設備の凝集沈殿槽にカメラを設置し、一定間隔ごとに排水の処理状態を撮影し、クラウドサーバーに画像データが転送される。そして、クラウドサーバーではAIモデルによって排水処理状態を良否判定し、異常と判断された場合は作業者のPCやタブレット端末などにアラートが発報される仕組み。リアルタイムでの点検にくわえ、処理不良が発生した際には、システムで事前に状態を確認できるため、現場では迅速な復旧作業に取り組める。
※凝集沈殿槽-薬剤を投入し、排水中に含まれる金属などの含有物質をフロック(塊)の状態にし、沈殿させる工程。フロックが良好で濁り等がなければ、正常な処理状態。

また、京セラが長年培ってきた排水処理設備の点検ノウハウや、排水処理の画像データ、現場実証で得られた多様な環境データを活用したAIモデルの構築によって、昼夜の明暗、晴雨や風による水面の見え方が変化しても正確で安定した良否判定を実現したという。

水面での泡の発生等により水中の凝集状態が観測できない領域については、画像前処理機能(下図)を追加することによって判定対象外とし、良否判定精度の向上をはかっているとのこと。

今後、京セラでは、2021年12月までに京セラ滋賀野洲工場にあるすべての排水処理設備にAI自動排水監視システムの展開を完了し、全国にある京セラの生産拠点への展開を図り、企業経営における業務効率改善と環境配慮の両立を目指すという。

>> プレスリリース